サラットナさん 第十三章
サラットナさんが、外トイレのそばにある自動販売機の前で、おいでおいでと手を振っている。
良かった笑顔がもどっている。
私が好きな果物ジュースをご馳走してくれた。
トイレ掃除は奥が深いわよ。現代人は日頃、色んな仮面をかぶって生きている。そんな中、トイレに入った時だけ素の自分に戻ることができる。とサラットナさんが語りだす。
本来の自分に戻ることができるトイレには、どんな状態のトイレだと思う?貝塚さんが心からホッと一息つけるとしたら、どんなトイレにしたい?
私が掃除好きなのはね、その場の喜ぶ顔を見たいたいからよ。木が使われている場所は、ツヤと温もりがよみがえって笑顔になる。ガラス製品は凛とした美しさと輝きを取り戻して笑顔になる。石は力強さとおおらかさを思い出して笑顔になる。
どんな場も、埃や汚れを取り除くと生き生きと喜びあふれるの。そして、その場は命を助けてくれる。
貝塚さん、きょとんとしているわね。
人がお風呂に入ることと同じよ。色んなものが落ちて気持ちいいでしょ。そうだ、身体の施術も同じ。お身体さまのケアをすることで本来の力を発揮できる。つまり、全てはとても当たり前で簡単なことということよ。
ともかく、きれいで整っている場は、あなた達を最大限に守ってくれるわ。貝塚さんがトイレに来るたびに心地よいと思える場に育っていくと良いわね。
サラットナさん、ありがとうございますぅ。
貝塚、まだよく理解していないけど、気持ちよいお手洗い目指します。ところで、サラットナさん!今更聞くのは何だけど、どうして私に色々教えてくれるんですか?
サラットナ、サラットナ、サラサラットナァー。
あーびっくりした、そうよ今更、貝塚さんからそんな質問を受けるなんて。
大丈夫!私はただ、思ったことを吐き出しているだけよ。全部忘れてくれていいわ。人はね、どんなに素晴らしい話を聞いたり読んだり観たりしても忘れてしまう残念な生き物なの。だから気にしないから。
私はただ、ずっーと思い続けていることを、この世界に歌っている。ただ、それだけよ。
えー、そんなぁ、神社に100年住み続ける妖精さん⁈に選ばれし貝塚かも?と思っていたのに。というと、何故かサラットナさんに呆れ顔されたのであった。