サラットナさん 第二十章
お正月の忙しさが少し過ぎると、すぐに節分祭がやってくる。今年の干支をむかえる方々が、厄落としに豆まきをするそうだ。豆の他にお菓子や紅白のお餅もまくらしい。
先ほどから大きな袋に、色んなお菓子を均等に入れている。部屋いっぱいのお菓子の山に酔っている私と巫女さんであった。
「今回の豆まき、ご夫婦でご参加される方がいて話題になっているんです。兎名乃さんというお名前で、うさぎ年だから何だか素敵ねって。」
「そうね、そういうのって素敵ね。」と答えながら、ずっと会えていないサラットナさんを思い出していた。どこに行っちゃったんだろ。
節分祭の一週間前、境内に豆まき用の舞台が設置された。高さは2mぐらいだろうか、鉄筋を組み合わせ足場をつくり、1番上に板がはられ、側面に紅白の布がまかれている。
サラットナさんがもし現れたら、この舞台でひとあばれしてくれるんだろうなぁ。紅白の幕があるから歌舞伎の演目かな。
そして、いよいよ明日が節分祭。
さあ、気合を入れて境内を掃きましょ。と背伸びをしながら外に出る。
ほうきを選んでいると、「貝塚さーん」というなつかしい声がした。はるかちゃんだ。
「あれから連絡なかったから少し心配したのよ,」
「実はすぐに妊娠して、少し安静にしてたんです。」
「まぁ、そうなの!おめでとうございます。それは良かったぁ。」
「貝塚さんのおかげです。気持ち悪さはすぐになくなりましたし、その上、子どもができて本当に嬉しいです。ありがとうございました。」
何だか感動する。身体は安心という場が与えられれば、自然にすべてがおさまるようになっているのかもしれない。
境内を掃き終えて中に入ると、巫女さんたちが甘酒をつくっていた。節分祭に来た方にふるまうそうだ。
早速、元巫女のはるかちゃんと会った話をした。早くお子さんを見たいですと、ぷるぷる喜ぶ巫女さん。私は受付で会えましたと満面の笑みの子も。良いなぁ、みんなずっと仲良しだものなぁ。
新しい巫女さんたちも良い子たち、このあと何人神社に残ってくれるのだろう?
まだ働きはじめてから一年に満たないけれども、もうずっと昔から万勝神社にいたような気がしてくる私だった。