サラットナさん 第二章

ご機嫌はいかがですか?ご機嫌はいかがですか?
サラットナさんが片手を上げてクルクルと手首を回している。

あ!それは、Mで始まるミュージカルのワンシーン、マリアがビルに作法を教えているシーンですね。

その通り!とサラットナさん嬉しそう。
つい先日、私、貝塚とサラットナさんの共通の趣味が観劇と発見。それ以来、時折こんな遊びが始まる。

で、今日は何の用事ですか?もう私、上がりですけど。

ほら、あそこの巫女さん、袴が苦しそうだから緩めるようにすすめてきて。

はぁ、分かりました。

「藤田さん、突然すみません。袴、苦しくないですか?」

「あっ、貝塚さん、ずっと気持ち悪くて、お茶時間で帰宅させてもらおうか、どうしようか考えていたんです。」

「い、いえ、なんだか袴の紐を締め過ぎかなぁと思いまして。」

はっ、と何かに気がついたように、巫女の藤田さんは巫女室に飛んでいった。そしてすぐに戻ると私に頭を下げた。

「貝塚さん、ありがとうございます。まだ袴に慣れてなくて締め過ぎていました。本当にありがとうございます。ところで貝塚さん、先輩たちが、貝塚さん独り言が多いって聞きましたけど、癖なんですか?」

そ、そんな噂が知らぬまにたっていたなんて、確かにサラットナさんは他の人には見えないようだし、霊感がある巫女さんはいつのまにか辞めてしまったし。

「そ、そうなのよ。変な癖でしょ。気がつくとオノマトペを発してしまうのよ。おほほほほ。さっ、お茶頂きましょ。」

さっと辺りを見渡し、サラットナさんにOKサインを送る。何だか面白いチームだな、私たち。

3時、ご祈祷がない限り、神主さん、巫女さん全員でコーヒーとお供えのお菓子を頂く。
これが本当に楽しみなのよ。

「美味しい❣️」
つい声が出てしまう。

宮司様が嬉しそうに、お饅頭の箱を差し出し、この一列食べていいよとニコニコしている。

帰りぎわ、巫女長から呼び出される

あのお菓子は、神様のために信者の皆様が奉納してくださったもの。先ず神社関係者の皆様の直会でお出しして、次に神様に仕える神主と巫女が頂く。あなたはただの掃除人なのだから、身分をわきまえてくださいと注意をうけた。

でも素直なところは良いところね。と少しほめられた。複雑な気分。

あと、独り言が多いのは、ご参拝の皆さまもきっと気持ち悪いから気をつけなさいと注意された。

ど、どうするサラットナさん。


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