サラットナさん 第四章

秋の大祭が近づき、普段は頼まれないベランダや大部屋の窓ガラス、お札受用所など様々な箇所を掃除し続けている。

大祭一週間前には信者さんによる清掃奉仕があるので、当日の掃除を楽にするための配慮もあるようだ。

そんなことより、大変なことになった。
清掃奉仕後にふるまうカレーの仕込みを頼まれたのだ。ど、どーしよう。

どんよりと私が暗くなっていると、サラットナさんが現れた。

サラットナ、サラットナ、サラサラットナァ♫
そんなお顔で清掃はダメでしょ貝塚さん。

で、でも!私、日頃、飯なんて作らないんです。
旦那が美味い飯つくってくれるから。

何のこっちゃという感じのサラットナさん。
すみません、つい心が高まり過ぎて。

ということは、貝塚さんはお料理ができない?

はい、そうなんです。旦那の飯が美味いから結婚したようなもんなんです。

ほー、うらやましい。でも包丁くらいは持つでしょう。

私が持つのは、お箸だけです。

サラットナさんが突然笑いだした。
ほうきを指差しながら、ほうきは持っているじゃない?という感じに。確かにその通りだわ。

で、いつなの初包丁dayは?

明日なんです。あまりにも突然で神主さんに無理ですと言えなくて、あっ、でも初ではないですよ。学校の授業で少しだけ。

サラットナさんがポカンと口を開けている。
いつもの呆れ顔だ。なんど色んなシーンで呆れられたことか。

あっ、巫女さんが来た、黙らないと。
サラットナさんに目配せをして、バケツの水を交換に向かう。

後ろからサラットナさんが大声で叫んでいる。

私に任せなさい。サラットナ、サラットナ、サラサラットナ♪

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