『小説家になろう』全作品分析レポート ~あらすじ分析 恋愛ジャンル~
今回は『恋愛』ジャンルについて扱う。やや長くなってしまったため、『SF』に関しては後日投稿する。
比較的傾向が出やすいジャンルであったため、ある程度『小説家になろう』にて活動している方であれば「確かに!」となるような内容が多いのではないだろうか。
出力結果についてはメッセージ(リプ等可)を頂ければ送信いたします。また●●●というワードで調べてくれ、というのも対応いたしますのでメッセージお願いします。(てかくださいリアクションに飢えてるちゃんなので……)
【目次】
・はじめに
・目的
・分析方法
・先行研究について
・ジャンルの割合比較
・あらすじ文字数・頻出単語比較
・『恋愛』ジャンル分析 ◀今回はココ
・『ファンタジー』・『文芸』・『SF』ジャンル分析
・『総合』分析・『あらすじ』文字数分布
・小説内会話率の比較
・投稿年度から見るトレンド比較
・結論
・参考サイト
今回の目次は以下のようになっている。
【前置き】
本格的なあらすじ分析に入る前に、恋愛ジャンルと『恋』のプロットでグラフの読み取り方の例を上げる。
なお、今回の分析では基本的に5%以下のワードをキーワードから除いている。そのため軸が5%となっているもので軸に接しているものは、5%以下の割合であるということをご理解いただきたい。
5%付近のキーワードなど、別で調べ上げたものについては軸が0となっているか軸と接していないため、そのまま読み取っていただける。
恋愛ジャンルの作品数分布は下図のようになる。
以下に続く『あらすじの頻出単語』についてのグラフは、作品数ではなく各グループにおける作品数の割合をプロットしたものになる。
したがって、『恋』というワードは下図のようになるが、作品数で考えると上図の影響を強く受ける。
意外と『恋』というワードを含む作品が少ないことに驚くが、ここで大事なのはグループ2→3の遷移とグループ4→5の遷移である。
作品数のグラフを見ると分かるように、この2つのグループ間には大きな作品数の差がある。
グループ2→3では少し減少したように見えるが、作品数から見るとその影響は大きく、グループ2と3の違いとして『恋』が重要な要素と言えそうである。
逆にグループ4→5ではほぼ一定のように見える。4→5で作品数は大幅に増えており、グループ4と5の間で『恋』は重要な要素でないと言えそうである。
つまり、全体的に考察すると、恋愛ジャンルにおいて『恋』というキーワードは重要度が低い。
グループ2→1での大きな減少を見るに、2→3の減少も偶然グループ2で多くなったためであると考えられ、分布に特に影響を及ぼさないと考えられる。
また、グループ5→6で割合がそこまで変わらない(つまり作品数が大幅に増加している)ことから、逆に必要のないワードとも言えそうである。
ジャンルから恋や愛などが絡むことは予想できるわけで、特段書く必要がないということではないだろうか。
以上が『恋』に関する分析であり、以降このようにグループごとの作品数の差によって重みを付けた分析を行っていく。
なお、今回の分析は%変化の影響を大きく見積もる傾向にあるため、あくまで一個人の一考察ということで参考にして頂けると幸いだ。
(データなら渡せるんで考察やりたい方はやりましょ!!)
【恋愛ジャンルの分析】
・前世、転生、ゲーム
グループ1、2ではファンタジー色強めなのではないかという予想をしたが、実際これは『異世界』に特有のワードで特徴が出ている。
『異世界』といっても舞台が現実世界ではない、というだけではない。下図に示すような『転生』や『前世』など、ジャンルで言う所のローファンタジーなタイプの『異世界』だ。
青で示した『前世』やオレンジで示した『転生』が、グループ1、2でかなりの割合を占めていることが分かる。
グループ2→3で割合が大きく落ち込んでいることから、逆に『前世』や『転生』の要素を持たない作品はグループ3で停滞しやすいのではないかと考えられる。あるいは、最近のブームであるために持たない作品がグループ3に集中していると考えられる。
また、『転生』と緑で示した『ゲーム』のグラフはグループ2以外で非常に類似しており、基本的にセットの要素であると考えられる。
したがって『ゲーム世界に転生』と『前世(の記憶を思い出す)』という要素が、グループ1とグループ2において特有だと言える。
しかし、特に『転生』は、作品数が多すぎる(75,757作品)せいで特徴がほとんど出ないグループ6において、5%以上を獲得していることからも飽和状態にあると言っていいだろう。
つまり、新しく参入したとしても埋もれる可能性が高い(重要度が低い)要素であるということだ。
仮に『転生』で書く場合、グループ2において類似する『ゲーム』のグラフと大きく外れることから『ゲーム』要素を持たない『転生』が良いのではないかと考えられる。
とはいえ『前世』と『ゲーム』要素の組み合わせも考えられるので、結局のところ『転生』の重要度は低いだろう。
『前世』については綺麗に減少しているため飽和状態にあるとは言い難く、『転生』と比べると重要度は高そうである。
しかしながら『前世』も『転生』も似通った要素であり、どちらにせよ重要度は高くは無いと考えられる。
・悪役令嬢
次に、『異世界(恋愛)』ジャンルに一大旋風を巻き起こしたとも言える『悪役令嬢』を探る。
既に飽和状態にあるのか、まだ『悪役令嬢』の要素だけで戦える程の重要度を持つのか、果たして結果は下図のようになった。
青が『令嬢』であり、オレンジの『悪役』は比較的割合が低めである。
『令嬢』というワードは汎用性が高く、異世界での令嬢だけでなく社長令嬢のように使うことも出来るため、割合が高く出ているのだろうと考えられる。
どちらにせよ村人同士、学生同士などの『ありふれた存在』同士の恋愛よりも、『令嬢』のような『珍しい存在』の恋愛がグループ1、2、3には多いと考えられる。
2つとも割合が綺麗に変化しており、どちらも重要度の高い要素と考えられる。しかしグループ3、4、5の変化を見ると、『令嬢』の傾きはまだまだ急であるため飽和してはいないと考えられるが、『悪役』についてはやや飽和しつつある要素だと言えるだろう。
・幼馴染、高校
恋愛ジャンルにおいて5%以上の『あらすじ』に共通する要素は『転生』や『前世』、『令嬢』に関連するものであり、『騎士』や『王子』などの要素も低水準ではあるが共通していた。
これらは大半が『異世界(恋愛)』に関するものであり、現実世界に関してなかなか共通するワードが出てこなかった。
そのため、比較的現実世界に関係していると思われ、いくつかのグループで5%以上となった要素について下図のようにプロットした。なお、グループ5までであることに注意してほしい。
青が『幼馴染』、オレンジが『高校』である。
まず、『高校』については重要度が低く、あまり人気のないワードであると考えられる。
グループ3までは一定であることからもネガティブな影響を与えるワードではないと考えられるが、同様にポジティブな影響を与えるワードでもないだろう。
逆に『幼馴染』はグループ3、4、5を見るに、グループ4で停滞しにくく比較的伸びやすい要素と言えるだろう。
グループ4→5の増加からやや飽和気味にも思われるが、そもそもの割合が低いことから一過性のブームであった場合を除けばまだまだ重要度は高くなっていくのではないだろうか。
現実世界の恋愛モノでは全体的に要素がばらけているため、比較的自由度が高いと思われる。『告白』や『平凡』、『普通』などのワードが軒並み5%以下であることからも、テンプレなものも形成されていないと考えられる。
まとめると、『異世界』系は全体的に特定の要素の重要度が高く出ているが飽和傾向にあり、『現実世界』系は要素が非常にばらけていて重要度のある要素はほとんど無く、強いて言えば『幼馴染』や『令嬢』が含まれていると良いと考えられた。
・恋愛ジャンルの人称分布
次に、恋愛ジャンルにおける一人称の分布を見ていく。
グループ5以上として青で示した『私』をあらすじに含む女主人公が多く、グループ3→2の増加を見ても女主人公であることは重要な要素と言えそうである。
『僕』や『俺』については全体的に低く出ているものの、グループ6→5や3、4、5の推移を見るに、男性一人称では緑で示す『俺』の方が人気のようである。
一人称の合計と、それ以外(つまり三人称)を太線でプロットした。
赤が『三人称』、紫が『一人称』であり、あらすじの上では『三人称』が人気であることが分かる。
しかし、グループ6→5や3→2の遷移を見るに、『一人称』であらすじを書く方が伸びやすいのではないかと考えられる。
以上で『恋愛』ジャンルの『あらすじ』分析を終えます。
何か気になるワードなどありましたら、お気軽にご連絡ください。