脱活乾漆像
**脱活乾漆像(だっかつかんしつぞう)**は、日本の奈良時代に最盛期を迎えた仏像制作技法の一つです。この技法は、漆と麻布を用いて中空の彫像を作る方法であり、非常に繊細で表現力豊かな仏像を作り出すことが可能です。以下に、その制作過程を説明します。
芯木の作成: 木製の芯木を用いて、像の基本的な骨組みを作成します。
粘土の塑形: 芯木の上に粘土を盛り上げ、像の大まかな形を形成します。
麻布の貼付: 粘土の上に麦漆を用いて麻布を何層にも重ねて貼ります。麦漆は、漆に麦粉を混ぜた接着力の強いペーストです。
抹香漆または木屎漆の使用: 張り子の像の上に、抹香漆や木屎漆を用いて細部を精密に作り上げます。これらは、麦漆に植物の粉末やおがくずを加えたものです。
内部の粘土の除去: 像が形を成した後、背面など目立たない部分から粘土を取り除き、中空にします。
内部の補強: 型崩れを防ぐため、内部に木枠を設けて補強します。
仕上げ: 最終的に、漆を何度も塗り重ねて彩色し、金箔を押して完成させます。
脱活乾漆像の特徴としては、以下の点が挙げられます。
中空構造: 芯木と粘土を用いて形を作り、その後中を空洞にすることで、軽量でありながら強度のある構造を実現しています。
細部の表現: 抹香漆や木屎漆を用いることで、非常に細かい表現が可能になります。
耐久性: 漆を用いることで、湿気や虫害に強く、長期間保存が可能です。
他の日本の仏像制作技法には、**寄木造(よせぎづくり)や一木造(いちぼくづくり)**などがあります。寄木造は、複数の木片を組み合わせて仏像を作る技法で、一木造は一本の木から仏像を彫り出す技法です。
奈良時代の寺院で有名な脱活乾漆像としては、東大寺法華堂の多宝塔に安置されている弥勒菩薩立像や、興福寺の阿修羅像が特に有名です。これらの像は、その技術的な完成度と芸術的な表現力で高く評価されています。
しかし、高価な漆を大量に使用し、制作にも手間がかかるため、平安時代以降は次第に作られなくなりました。
日本には素晴らしい文化遺産が遺されていますね!
以上です。