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障害者のマッチングアプリ
「クソッ、ダメかよ…」
スマホの画面を睨みつけながら、俺は悪態をついた。
マッチングアプリを入れて1ヶ月。
いいねを送っても、メッセージを送っても、誰一人としてマッチングする気配がない。
プロフィールには、自分の障害について正直に書いた。
「下肢に障害があり、車椅子生活を送っています」と。
もちろん、健常者向けのアプリであることは承知している。
それでも、僅かな希望を抱いていた。
もしかしたら、障害に関係なく、俺の人柄や趣味に興味を持ってくれる人がいるかもしれないと。
だが、現実は残酷だった。何人かにいいねを送っても全くの無反応。
「やっぱり、障害者は恋愛対象にはならないんだ…」
絶望が、じわじわと俺の心を蝕んでいく。
今までだって、何度も同じような経験をしてきた。
街を歩いていても、好奇の目に晒されたり、露骨に嫌な顔をされたり。
合コンに行っても、明らかに浮いた存在で、会話に入れなかったり。
それでも、どこかで「いつかはきっと…」「分かってくれる人もいる」という淡い期待を抱いていた。
でも、もう疲れたよ。
俺は試しに、プロフィールから障害のことを削除し、写真も顔だけにしてみた。そうしたらちらほらマッチングし始めた。
「やっぱり障害者はだめなんじゃないか!障害を隠した途端にこれだもんな……」
もう疲れたよ。
何度も何度も、同じような絶望を味わうのは。
「もう、恋なんてしない。誰かを好きになるなんて、馬鹿みたいだ!ただ傷付くだけじゃないか。みんな障害者に優しい社会にしようなんて口先だけで言ってる。当事者になることは断固拒否してるじゃないか!!」
そう呟いて、俺はスマホを壁に投げつけた。
もう、何もかもどうでもいいさ。
割れたスマホの画面を見ていると、呼吸が荒くなった。
俺は絶望ともに眠りにつき、絶望と共に目を覚ます。
寝ても覚めても絶望している。
苦しい、悲しい、辛い。
おしまい。