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パイナップルおじさん

パイナップルおじさん

その日、僕はいつものように朝の散歩に出かけた。

空はどんよりと曇り、今にも雨が降りそうな天気だった。

「家でゴロゴロしていた方が良かったかな?」

なんてことを思いながら歩いていると、ぽつぽつと雨が降ってきた。

そんでもって頭の上で何かがボトッと落ちてきた。

「ん?何だ?」

と思って頭を触ってみると、何やら硬くてゴツゴツしたものがある。

「この触り心地は…まさか…パイナップル?」

まさか冗談だと思ったが、触ってみると本当にパイナップルだった。しかも、頭のてっぺんからニョキニョキと生えている。

「なんでパイナップルが頭に?しかもニョキニョキと?」

そんなことは考えても分かるはずもなく、とりあえず家に帰って調べてみることにした。

家に帰ってパイナップルをよく見てみると、何やら小さな文字が書いてある。

「幸運」

と書かれていた。

「幸運…とは???」

まさかこんなことで幸運になるのかと疑わしかったが、とりあえず頭のパイナップルを収穫。冷蔵庫に入れておくことにした。

その足で、僕は宝くじ売り場に向かっていた。

「どうせ当たらないだろうけど、話のネタくらいにはなるかな?」

そんな軽い気持ちで宝くじを買ってみた。そして数日後、宝くじの当選発表の日。僕はテレビの前で頭から収穫したパイナップルを食べながら当選番号を確認した。

すると、僕が買った宝くじの番号が当選番号と一致しているではないか!

「うそだろ…」

驚きのあまり膝から崩れ落ちた。何度も確認したが、やはり僕の宝くじが当たっていた。

しかも、1等と前後賞合わせて1億円という大金だった。

「パイナップルのおかげ…なのか?ニョキニョキ生えてきたから?」

まさかそんなことがあるのかと思ったが、他に理由が見つからない。僕はとりあえず、パイナップルに感謝することにした。

それからというもの、僕の周りでは不思議なことが次々と起こった。

  • ずっと欲しかった車の懸賞に当たった

  • 嫌いな同僚がハチに刺された

  • 家の近所にめっちゃ美味しい町中華のお店が出来た

どれもこれも、パイナップルが頭にニョキニョキ生えてきた日から起こったことだった。

「これは本当に幸運のパイナップルだな」

僕はそう確信した。

確信したる僕は、頭のパイナップルで嫌いな同僚に頭突きを食らわせることを決意。

次の日、僕は会社に着くと、嫌いな同僚のいる部署に忍び込んだ。非常にワクワクするなぁ。

同僚は一人でデスクに向かって黙々と作業をしている。その様子を見ているとなんだか心底腹が立ってきた。

僕は背後から忍び寄り、勢いよく頭突きを食らわせた。あまりにも勢い良く頭突きしたので、パイナップルは砕け散り、果汁やら破片やらが散乱。

「いきなりなにするんですか!」

同僚は怒鳴った。

「ええーい、うるさい!お前が嫌いだからだ!」

僕は言い返した。

「そんな理由で頭突きするなんて、どうかしてますよ!」

「うるさい!お前になんか言われたくない!」

僕はそう言うと、会社を飛び出した。

家に帰ってニュースを見ていると、僕が頭突きした同僚が会社内で暴れて立てこもり事件を起こし、逮捕されたというニュースが流れた。

「ヤッター!やっぱり、幸運のパイナップルだな」

僕はパイナップルを撫でながらつぶやいた。

次の日、僕は会社に行くと、同僚が退職したことを知った。同僚の席を覗きに行くと、綺麗に片付けられた机がぽつんとあった。

「ざまあみろ」

僕は心の中でほくそ笑んだ。

人生は最高だ。

今度は社長に頭突きをしようかな?

おしまい。