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Photo by
shichi_
憎しみと悲しみと刺し身
男は、憎しみに生きていた。
幼い頃に両親を亡くし、親戚にたらい回しにされた。どこに行っても歓迎されず、蔑まれ、孤独だった。
男は、勉強も運動も不得意であった。同級生はもちんろん、先生にも馬鹿にされた。
男は、精一杯頑張った。みんなに気に入られたかった。
しかし、何をやっても失敗続きだった。
世の中は不公平だ。なぜ自分だけがこんな目に遭うのか。
悲しみはいつしか憎しみとなり、男の心を蝕んでいった。
そして社会を恨んだ。
俺は何も悪くないのに。
俺は被害者だ!俺は社会の被害者だ!
男は、ゆく当てもなくさまよった。
そんなある日、男は小さな漁村に流れ着いた。
村人たちは、よそ者である男を温かく迎え入れた。
男は、生まれて初めて優しさに触れた。
男は、生まれて初めて刺し身を食べた。
彼はもう一人ではなかった。
おしまい。