バスタブのタブー〜野上本館〜
最高気温は7度の日だった。暖冬にも程があり、我が校恒例のスキー研修も、雪が積もらないからという理由で異例の取り消しが発表された中での、突然の寒威だった。
今風に綺麗で、かつ、荘厳な重々しさも持つ入り口から、受付に入る。
女子風呂準備できてるか確認してきて
フロントからスタッフへの伝言で、1番風呂かつ貸切なことを悟る。脱衣所を開けると、もちろん1人である。浴室に足を踏み入れると石の床がとても冷たい。1番風呂にはこんな欠点もある。急いでケロリンを手に取り、掛け湯を1.75倍速で行い(これは私が最近YouTubeを見るときにハマっている速度)、体を完全に湯に閉じ込めた。
はい湯〜
最近の心ぐせだ。口で発する訳ではないが温泉に使った時に心の中で唱えてしまう言葉。ちなみに、とてもチーズマニアな誰かさんが、チーズを食べた時にこれこれ!と思って、カメラを構える時に、はいチーズ〜と言った、なんて記録はない。
心なしか、ぬるく感じた。寒かったからという理由にしていたが、なんとなーく湯船から出ても冷えを感じた。今までそんな経験はなかったが。
脱衣所で、髪の毛を乾かしていたら、おばあちゃんが入浴に来た。私がこの執筆をしているためおばあちゃんが浴室から出てきた時、私はまだここにいた。おばあちゃんは私を見て、
ぬるくなかったですか?
と問いかけた。1人では、ぬるい、と思ってはいけない気がして、ぬるくなかったことにしようとしていたが、こうして問いかけられると、ぬるかった、ということが事実なのかはさておき、自分の感想を伝えたくて、やはり、ぬるかったです、とぬるさの肯定をしてしまった。だから悪いというわけでは全くなかったが、お笑い芸人に、面白くない、と言ってしまっているような気がして無性に申し訳なくなった。ちなみに、脱衣所にある体重計は家の体重計の2キロ増しで体重が出た。それが事実でなくても2キロ増しな感想を体重計に持たれたことにショックだった。
2020.01.31 野上本館 ¥500