心臓に毛生やしたい。
年始に書こうとしていた日記が下書きにあった。
その時は日記を書くぐらいしかやることがなかったので、書く気が湧かず下書きに収まったんだろうが、今日はやることがたくさんあったので、別にやらなくてもいいことをやりたくて仕方がない。
最近いっぱい日記を投稿してしまうのは追われているものが多いからなんだろう。宿題全部出さなかったけどどうにか誤魔化せたあの中二の夏から、先延ばし癖がどうも治らない。就活嫌だ。
これだけ書いたらちゃんとやるから、もうES書いたー?とかは聞かないで欲しい。まだ夏休みを引きずっている私は多分やる気がなくなると思う。今やろうと思ってたの!!
1月4日、バイトのシフトを間違えた。
私は某古本屋でアルバイトをしている。
といっても、始めたのは3ヶ月ほど前で、意外と業務が多い古本屋では、新人ができることが限られている。
3ヶ月経った今でも教えてもらうことばかりで、バイト先から帰る時はいつも、「あれ?私今日何した?必要だったか?」と頭を抱えてしまう。
今年、帰省をしなかった私は、そんないるかいらないかも分からないバイト先に、元日出勤、2日は休んで、次の日の3日出勤と、今までもこれからも一生働くことなんてないだろうなという日にシフトを提出した。(ここで4日も提出したと思っていた)
そして、大多数の学生が帰省を理由に東京から姿を消す中、親不孝の希望は極めて簡単に通り、爆笑ヒットパレードと箱根駅伝復路を人生初めてブッチすることになった。(つまり、ここで4日も出勤になったと思っていた)
お年玉を携えた子供達による猛攻で戦場と化した怒涛の三ヶ日を超え、地元に住む学生がパラパラと出勤を始める4日。
私はちょっとだけ寝坊して、いつもより一本遅い電車に乗ってバイト先に赴いた。バイトなかったけど。
と言っても、朝礼の10分ほど前に着く予定で、始まりには間に合う時間だ。バイトなかったけど。
それ故に、いつもは1番早く到着するのだが、その日は人がスタッフルームにすでに数名スタンバイしている状況だった。
今考えればここからもう、世界はいつもと違う動きを始めていたんだと思う。
スタッフルームに入り、年明け初めて会ったアルバイトの人に対して、あけましておめでとうございます。と、「あなた私とまだ挨拶してないですよ」とでも言いたそうな感じで切り出す私。
あ、そっか年明けでまだ会ってないもんね、今年もよろしく〜と、そんな生意気小娘にも優しく返事をしてくれるHさん。
滑り出しは順調だった。しかし、よしよし今日も頑張るぞーと、鞄をロッカーにしまおうとした時である。
シフト表を確認した茶髪パーマのKさんが、呟く。
「あれ?シフトに名前ないですよ」
一瞬時が止まった。
シフトが入ってなかったと言う事実だけが、一つしかない私の脳みそを駆けずり回っていた。
そして一緒にシフト表を確認した店長も、呟く。
「え、君今日、、シフト入ってな「帰ります」
我ながら俊敏に動けていたと思う。まだその時点で私が考えなければいけなかったのは、「シフトがない→帰る」という方程式のみで、簡単に予測できるここからの流れを作らないのが、私がすべき唯一のことだった。
首から解きかけていたマフラーを巻き直し、間髪入れずに踵を返した。はずだった。
スタッフルームにさよならを決めた私に対して店長が口を開く。
「でもせっかく来たんだから働いていく?」
恐れていた事態が起こる。
「いつもより早めに上がったらいいんじゃない?」
「年始のセールでお店も忙しいし、どう?どうする?」
もうすでに制服にばっちり着替えた他のアルバイトスタッフによる怒涛のフォローである。
こうして私の2022年最初の正念場が始まった。
「そんな、私が決めて良いんですか?笑」
お前しか決めらんねえだろという声が聞こえてきそうなので一応言っておくと、こんなもんは別に本当に決めて欲しくて聞いた訳じゃない。
年始一発目の自分の失態に対しての最適解を叩き出すためのただの時間稼ぎだ。
「この人たちは、今日私が働くことによって本当に助かるから私を引き留めているのか」
「もうほとんどペチャンコな私の面目をこれ以上ペラッペラに潰さないように、私に対して『忙しい時に来てくれたぼた餅感』を社交辞令で出してくれているだけで、内心、役立たずだから帰れよと思っているのか」
この答えは2秒で出た。後者である。
そして事態は第二フェーズに進む。
ここでの、単純に「帰る」と言う選択は、バイトに後ろ向きな人間だと思われる。という問題だ。
そこから生まれる、「自分が役立たずなのを自認してくれていて有難いが、働くことには後ろ向きなやつ」と「役立たずなことに気付いてないのは鬱陶しいが、やる気だけはあるバカ」の二つの人間性は、ここの人たちにとってどっちが好感触なのか、天秤にかける必要があった。
ここが難しいところだったが、みんなの視線が集まる5秒の沈黙の後、私が選んだ答えは
「あ、じゃあ、15時(いつもは17時)まで働いてもいいですか、、、」
後ろ向きな役立たずである。
辛い。
だってほんとは普通に帰りたかったんだもん。後ろ向きだもん。一生寝て暮らしたいもん。でもやる気ない奴とは思われたくなかったんだもん。
年末に葬り去ったはずの煩悩が年始早々早速入り乱れた結果、最悪の答えを叩き出した私に、バイト先の優しい人たちはそっか〜助かる〜を連呼してくれていた。いい人たちだ本当に。
結果、この問答の間、脳内会議でゴーが出ればいつでも自宅へのスタートダッシュが切れるように頑なに首に巻いていたマフラーを解き、私が制服に着替える中、じゃあ始めようかという店長の掛け声によって、身だしなみチェックと朝礼が始まった。
そして、時計を確認する店長の言葉が小耳に流れてくる。
「あ、朝礼の時間だいぶ過ぎちゃった」
あ、帰りたい。
役立たずが出勤するかしないかの掛け合いのせいでみなさんにご迷惑が。
こんな始まりをきっかけに、今考えれば、あの日は普通に帰れば良かったなと思っている。
だいぶ時間が過ぎちゃった朝礼が終わり、朝の掃除が始まる。もちろん掃除の当番表にも名前がない私は、みんなが掃除をしている中、前の日に当店にやってきた本を棚に並べる作業を行っていた。
当店では、みんなが掃除をしている時間で、店長とバイトリーダーが、今日の営業はそれぞれにどの配置についてもらうのかを決める。
そして残念なことに、スタッフルームがある、同じ2階で本を棚に並べていた私には、その相談がよーく聞こえていた。
バイトリーダー「今日、今井さん(私の名前)どうします?どこに入ってもらいます?」
店長「どうしようかー」
バ「あ、レジできるようになったんですよね?」
店「いやあ、忙しい時はまだ頼めないから、、、」
殺してくれ。
店長すごい良い人だけど声でかい。
同じフロアで息を殺している空振り役立たずへの愚痴はその声量じゃないです。ほんでいらんのなら帰れって言ってくれさいよ。いやお前が言うことじゃねえけどな。
結局、忙しい時にレジを任せられない私にでも任せられる作業は、本が抜けた棚に、本棚下のストッカーから出した本を並べる作業だった。
私は午前中、全盛期のガラケーも目を見張る勢いでずっと下半身と上半身をパタパタさせて本を補充しまくっていた。
そして時刻は12時。昼から出勤の人たちがやってくる。
本棚に向かってなるべく気配を消しているつもりなのに、通り過ぎる度にされる、
「あれなんでこいついるんだ」という顔。
死にたい。
被害妄想によって起こる幻覚に加えて、「こいつ元々くる予定じゃなかったから手抜いてんな帰れよ給料泥棒」と言う幻聴まで聞こえてきそうだったので、いつもより本腰を入れて作業した。
そして文字通り腰をやった。
結果今年の年始はその後二日ぐらいまともに腰を伸ばせず、街で時々見かけるありえない角度で腰が曲がったおばあちゃん達はこんな気持ちなのねと思いながら過ごした。
色々考えすぎなんだろうなと思うが、私にとってみれば通常運転。毎日こんな感じである。
変に度胸が座っていた中二のあの夏の面影はもうないのに、怠惰なところだけ10年弱経った今でもこびりついてとれないのがとても厄介です。
自分で自分にいい大人なのにって思うことが増えました。
いい大人になりたいなあ