「ドイツ縦断ひとり旅」(2)オーバーアマガウ チロル地方の小さな町
2019年9月11日(水)晴れ 21℃
まだ暗い5時半、男性が車でやってきた。「ここはコパガルニですか?」と訊くと、「違う。ここはホテル・フックスだ。」との返事。謝って、ホテル・コパガルニへ。
ダイニングルームに灯りが付いて、女性の姿が見えたので、玄関ベルを鳴らした。彼女はキッチンスタッフのようで、予約のことは何も知らなかったけれど、「荷物を置いて、お座りになって。コーヒーでもいかが?」と訊いてくれたので、カプチーノを頂いた。温かくて、とってもおいしかった。次に出勤してきた女性もキッチンスタッフのようだったが、一応、いきさつを説明した。柔らかい黒革のソファーで、時が経つのを待つ。昨夜のような不安はない。やっと人心地。
ところが、体格のいいおかみさん風の女性がやってきて言うには、「あなたの予約は入っていない」「今夜も?」 「昨夜も今夜も全然入ってない」
「じゃあ、今から予約します」「だめ、だめ、満室だから」「えーっ!ネットで予約しましたよ。1泊53ユーロ(6360円)でしょう?アナ・カルプさんとメールのやり取りをしたんです。アナ・カルプさんに聞いてください。」すると、一瞬困ったような表情が彼女に見て取れたが、気のせいだったかもしれない。
ホテル・ポストを勧められて行ってみたけど、満室。あちこち捜していたら、昨夜、勝手にお世話になったホテル・フックスが、「12時からだったらチェックインできる。」とのこと。
12時まではまだうんと時間があるし、お腹が空いたし、トイレも借りたかったので、コパガルニで朝食をとることにした。ブッフェスタイルで、シリアルもチーズもフルーツも飲み物も充実していて嬉しくなった。さあ、しっかり食べて、今日も乗り切ろうっと。朝食のみは9ユーロ(1080円)だったのだが、責任者の女性は、「いらない。あなたからは取れない。サービスさせてくれ。」と言う。お礼を言って外に出る。もしまたこの町に来ることがあったら、絶対に、ここに泊まろうと思った。
オーバーアマガウはチロル地方の小さな町で、家の壁のしっくいに絵が描かれていることで有名だ。荷物を預けることはできなかったので、スーツケースをガチャガチャ押しながら、エッタール通りを行く。おお、見えてきた、見えてきた。「赤ずきん」ちゃんの絵!「ヘンゼルとグレーテル」の絵!「ブレーメンの音楽隊」も! ストーリーが場面ごとに描かれていて、まるでメルヘンの世界! カトリック教会にも立ち寄り、3時間くらい歩きまわって、写真を撮りまくった。ああ、本当に来てよかったー!
ホテル・フックスの玄関前の古いベンチに腰掛けて、休憩。12時少し過ぎた頃、女性が車でやってきた。何と、ホテルは満室。ガーン!
駅に向かいながらも諦めきれず、片っ端から聞いて回ったが、どのホテルも満室。オーバーアマガウで泊まることなど、最初からできなかったのだ。
山に囲まれたオーバーアマガウの駅。単線の終点。昨日到着したときは夜遅くて気付かなかったけれど、プラットホームは一つしかない。券売機が設置してあるだけの無人駅。
13:15、やっとDB(ドイツ国鉄)の真っ赤な車体が見えてきた。