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「我が青春のドイッチュラント」 エピソード(4) いちばん好きな街

ドイツの地図の真ん中辺りに、アイゼナッハという街がある。今までに8回ドイツに旅行し、そのうち6回はそこを訪れている。
愛する J.S. バッハ(1685~1750)の生まれた街だからだ。

黄色い壁の「バッハハウス」の前にはバッハの像が立っている。私は必ず挨拶をする。「バッハさま、また参りましたよ。あなたに会うために。」

築600年を超えるバッハの生家はそのまま博物館となっている。台所や寝室も当時のまま。小さなゆりかごベッドで寝ている赤ちゃんバッハや、食堂の椅子にちょこんと座っている少年バッハを想像してみるが、学校の音楽教室に飾られている、あの厳めしい顔しか浮かんでこない。


上の階には直筆楽譜をはじめ、17~18世紀の楽器が数多く展示されている。

バッハの直筆楽譜

1階のコンサートルームには歴史的鍵盤楽器が並べられ、古い順に演奏してくれる。最も古いパイプオルガン(チェンバーオルガン)は横手にあるベルトを左、右、左、右と引っ張って空気を入れないと音が出ない。そのため演奏者は、「どなたか、ボランティアはいませんか?」と声をかけ、たいていデッカイ体の男性が選ばれる。もう1台は足でふいごを踏む様式になっている。サポーターさん、頑張れ。

右の男性(観光客)が ふいごを踏んでいる

バッハの家で、バッハの音楽をすぐ側で聴くことができる。
まさに、至福のとき。

演奏が終わると、上の階を見に行く人達や、隣接する新館(2007年建設)に行く人達が多い。
私は決まって裏庭へ行く。そして、緑の葉っぱに囲まれた小さなあずまやに腰かけ、季節の花々を眺めながら、リュックからリンゴを出して食べる。
これぞ、至福のとき。

いい気分のまま、山の上のヴァルトブルク城へ向かう。駅前からはマイクロバスが出ているし、ロバに揺られて登ることもできる。
私は森を抜けていく。小鳥たちの声を聞きながら、樹々の息吹を感じながら、ゆっくり登っていく。

頂上に着いて見渡すと、あたり一面、チューリンゲンの森。
あー、シアワセ。

ヴァルトブルク城は千年以上の歴史を誇る城で、1999年には世界文化遺産に登録されている。
12世紀末のヘルマン1世の時代には、騎士達の歌合戦が催されており、後にワーグナーの楽劇『タンホイザー』(1845年初演)のモデルとなったことで知られている。
「エリーザベトの間」の壁画は、思わず息を呑む美しさ。死後、聖女と祭られた王妃エリーザベトの生涯(13世紀)が描かれている。

ヴァルトブルク城

また、「賢王」と呼ばれたザクセン選帝侯フリードリヒ3世が、マルティン・ルター(1483~1546)を匿っていたことでも有名である。
城の中にはルターの部屋が当時のまま残されている。彼はその小さな部屋で、1521年5月から1522年3月まで暮らし、新約聖書をギリシア語からドイツ語に翻訳した。
城には1541年版のルター聖書が展示されている。
誘惑しようと現れた悪魔に向かって、ルターがインク瓶を投げつけたという話が伝わっている。ルターの部屋に行ったら、インクの染みを捜そう。

木組みの廊下を通って ルターの部屋へ

このように、見どころの多いヴァルトブルク城。ゲーテもたびたび訪れ、手紙を書いたり、スケッチをしたりしていたとか。
「ゲーテさんもこの城壁にもたれたのかなあ」とか、「この門をくぐったんだよね」とか、想像すると嬉しくなる。

また行きたいな、アイゼナッハ。バッハハウスの分厚いヴィジターズ・ブックに、7度目のサインをしたい。

ニコライ教会前のソーセージ屋台
ルターハウス
アイゼナッハ駅


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