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「ドイツ縦断ひとり旅」(12) ベルリンへ 高速列車の旅

2019年9月17日(火)くもり一時雨

14:04、定刻通り発車。ベルリン中央駅まで3時間25分。超特急でそれだけかかるのだ。ICE(インターシティエクスプレス)は只今、時速122キロで走行中。

通路を隔てた席の、おだんごヘアの男性(たぶん大学生)はパンと水で食事中。カップに入ったバターとナイフまで持参している。食事しながらパソコンで勉強中。

途中の駅をスキップしながら、揺れもしない快適な旅。車掌さんが改札に。パスを見せるだけだから楽だ。ゲーテやバッハが馬車で旅した街道を高速鉄道で走っている。

時速143キロ、150キロ、153キロまでスピードを上げた。おお、ドイツには珍しいトンネル。229キロにスピードアップ。

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かつて、ICEは在来線のレールを走っていた。いつだったか、向かい席のおじいさんが私に、「こいつはな、本来300キロは出せる優秀なヤツなんだ。120キロぽっちで走っとるがな。」と語った。「どうして新しい線路を作らないのですか。」と訊いた私に、「森を壊せというのか!」と応えた彼の言葉が忘れられない。私はその言葉に感動し、便利さよりも自然を尊ぶドイツ人を尊敬のまなざしで見つめたのだった。

しかし、ついに森を(トンネルがあるということは丘も)犠牲にしたんだね。ICEはその能力を発揮できるようになったのだ。人々の求めに応じて。 でも、利便性だけを追求しないでほしい。人間が不便に耐えた方が、地球のためには良いのだから。

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雲が濃い灰色になってきたと思ったら、窓に走る雨のスジ。 やっと歩けるようになったくらいの男の子が、床に寝転がってダダをこねている。SOSボタンを押そうとして、ママに止められたから。グリーンにキラキラ光っているから、興味を引かれちゃうよね。でも、泣かなかった。えらいね。

ライプツィヒではたくさんの乗客が乗り込んできて、私の隣にもヤンエグっぽい男性が。「ここ、いいですか。」と訊かれたので、「ヤー、ビッテ!」と返事をした。私の前(車椅子のスペースなのだが)には学生風の男性二人が、床に座り込んでいる。ヤンエグ氏はモバイルフォンとノートパソコンをテーブルに置き、イヤホンを耳に差し込んだ。

さっきの赤ちゃんがトコトコやって来たが、10歳くらいのお姉ちゃんに引き戻される。彼は怒って泣き出した。長距離移動って、ちっちゃな子には耐え難いよね。大人になると、目的地に着くことよりも、その途中を楽しめるようになるんだけどね。

ふと見ると雨は止み、雲間から虹が! 私は嬉しくて、思わずヤンエグ氏に声をかけてしまった。「虹よ! 虹が出た!」と。彼が「えっ?」と言ったので(そりゃ、そう言うよね)、「ほら、あそこに虹が!」と指差すと、彼は了解し、ニッコリ微笑んだ。驚かせてごめんなさい。だって、虹って滅多に見られないもの。

青空が見えてきて、灰色だった景色が色彩を取り戻した。 ベルリン・ズュートクロイツ駅。ここでみんなドッと降りちゃった。私はヤンエグ氏には「良い一日を!」と言い、二人の学生には「チュース!」と言った。三人共、笑顔で挨拶を返してくれた。

あと7分でベルリン中央駅。さあ、ホテルの予約は大丈夫だろうか。オーバーアマガウの二の舞はまっぴらだあー。 ローテンブルクを12:06に出発し、5時間以上の列車の旅。あれ、今日もまたお昼を食べてなーい。

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17:29、ベルリン中央駅に到着! うーん、さすが首都の中央駅だけあって、デカイわあ。エレベーターで、親切なオジサンが教えてくれた。地上は2階上だって。地階にプラットホームがあり、1階はショップ。2階が出入り口とショップだって。

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外に出てタクシーに乗ろうとしたけど、「後ろの車にしてくれ」と、乗車拒否。後ろのドライバーが言うには、「インヴァリーテン通りは反対側だ。」そこで、駅を通り抜け、反対側の出口から出る。 よし、歩こう。地図で見ると、そう遠くもなさそうだから。でも、アルト・モアビット通りまで来たら、番地が分からなくなって・・・。通りかかった真面目そうな中年男性に尋ねると、「この番地は反対側に進むんだよ。自分もその方向だから一緒に行こう。あっ、荷物は持ってあげよう。」と、大変親切にしてもらった。

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ホテルを見つけ、2階(ドイツでは1階)のレセプションまで上ったのはいいが、不愛想な中年女性がいて、「予約は入っていない」と言う。ガーン! またか、このシチュエーション! 何で? どうして? ネットでちゃんと予約したじゃない!? 「じゃあ、今からチェックインしたい。」 「だめ、今夜は満室だから。」 肩を落とした私に、「ちょっと待って。ボスに電話してみるから。」 電話のやり取りの意味はちっとも分からなかったが、言語がロシア語だという事だけは分かった。

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