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イラン映画「友だちのうちはどこ?」賢い子供、愚かな大人

1987年製作のイラン映画。(日本公開は1993年) イラン映画界にこの人あり。アッバス・キアロスタミ監督(1940~2016)が、脚本も編集も一人でやっている。

主人公は8歳の小学生。友達のノートを間違えて持って帰ってしまったので返しに行く。ただそれだけのお話だけど、そのシンプルさの中に、イランの
村の人々の貧しい暮らしが、さらりと描かれている。説明臭さのないところが、私は好きだ。

友達の家はなかなか見つからない。教えてもらっては行ってみるが、違っている。夕闇が迫ってくる。早く帰らないと叱られる。でも、教室でいつも叱られて泣いている友達のことを思うと、絶対に届けなければ。
少年の優しさに心打たれつつも、焦燥感に駆られ辛くなる。


そして、アッと声を上げてしまうラストシーン。私はこのラストシーンが大好き! アッと言わせてサッと終わるのがいい!

それにしても、この映画に出てくる大人達はヒドイ。理不尽である。子供は殴ってしつけりゃいいんだと言う、主人公のおじいさんや、生徒を叱る理由を捜しているかのような嫌味な先生。 親たちも先生も子供の話を聞こうとしない。子供には人権がないのだ。イランに限ったことではないけれど…。大人が子供に服従を強いる社会って、絶対に良くない社会だと思う。大人は子供の模範になるために、襟を正すべきだと思う。たとえ失敗しても、努力している姿を見せるべきだ。大人だって不完全なのだから、共育し合える家族、理解し合える社会が私の願いだ。

驚くべきことに、この映画の出演者は全員、俳優ではなく素人だ。信じられない。主人公を演じたババク・アハマッドプールくんの愛らしさといったら! きりりとした賢さ、深いまなざしに、誰もが心をギュッと掴まれるだろう。転んだ友達の持ち物を拾ってあげ、ズボンの汚れを落としてあげるシーンに、彼の優しさが表れていて、忘れられない。 

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