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「ドイツ縦断ひとり旅」(27) ハーメルンからニュルンベルクへ
2019年9月25日 雨のち曇り
打つ手がなく、俯いた私。その時、一人の男性がサッと席を立ち、私のスーツケースをヨイショっとばかりに、棚に載せてくれた。「心配しないで。また降ろしてあげますよ。」
何て親切な人だろう。スーツにネクタイ姿の、30歳くらいのインド系の小柄な男性。私は彼に「ありがとうございます!」と言った。でも、そんな言葉ではとても足りないと思った。見つめる私に、彼は笑顔を返してくれた。「いいんだよ、いいんだよ。」と言うかのように。
ここでまた問題が起きた。車掌は私のジャーマンレイルパスをチェックしながら、「どこまで?」と訊いた。「ニュルンベルク。」と答えると、「この電車はニュルンベルクには行かない。」と、冷たく言い放った。バーデンバーデン行きなんだって。ガーン! 何でそんなことになるの? 私は4番ホームでミュンヘン行きを待っていたのに、来なかったじゃない!
とにかく下りなくちゃ。あの親切な紳士にスーツケースを降ろしてもらった。本当に助かりました!!
フランクフルト南駅。6番ホームへ。雨は止んだが寒い。 どうして、調べた列車が来なかったのか? たぶん、ホームが変更になったのだろう。駅でアナウンスがあったはずだが、私には分からなかった。
14:40発のヴュルツブルク行きが、6分遅れて入ってきた。次の乗換駅のアッシャフェンブルクには15:15到着の予定だけど・・・。
9分遅れて到着。高速列車への乗り換えに間に合わない。と諦めていたら、 ICE629号も遅れていた。
15:30、ミュンヘン行き、発車! そして、16:40、ニュルンベルク中央駅に、やっと到着! 今日も予定通りにはいかず、2時間と16分の
ロス。そして、今日もお昼を食べてない。
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駅を出て、確か左の方角だったよねーと歩いて行くと、目立っている「インターシティ・ホテル」の看板。
チェックインを済ませ405号室に入り、身軽になって、さあ、ニュルンベルク観光だーっ!
駅を背にすると、交差点の向こうに城壁が見える。旧市街は城壁に囲まれている。真ん中を流れているペグニッツ川によって、北のゼーバルト地区と、南のロレンツ地区に分かれている。
ニュルンベルクは中世から交易が盛んで、商業都市として栄えていたので、ゴシック建築の立派な建物が多い。
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ニュルンベルク城は「カイザーブルク」の名の通り、神聖ローマ皇帝が滞在するための城で、1050年に、ハインリヒ3世の居城として築かれた。
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ニュルンベルクはドイツ鉄道発祥の地としても有名。1835年12月7日、ニュルンベルクからフュルトへの6キロを時速30キロで走ったそうだ。1897年には世界最初の電気機関車が誕生した。1899年創設の「ドイツ鉄道博物館」はとても人気がある。
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ドイツはクリスマスマーケットが国中にあるけど、ニュルンベルクのは国内最大級を誇っている。ゴシック建築のフラウエン(聖母)教会前の広場は、12月には世界中からやってくる観光客で賑わう。中心となる「クリスマスキント」は金髪の巻き毛に金の王冠、翼のような金の長いケープを纏った少女が演じる。
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広場にあるシェーナー・ブルンネン(美しの泉)も有名で、格子にはめてある「金の指輪」を回すと幸運に恵まれるという言い伝えがある。
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ニュルンベルクには負の歴史がある。商業都市なのでユダヤ人が多く住んでいたが、1298年、1349年、1498年と、3度も虐殺され、追放された。
ナチスドイツのプロパガンダとして使われたこの街は、戦後、連合国がナチスドイツの戦争犯罪を裁いた舞台となった。映画にもなった「ニュルンベルク裁判」だ。
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アルブレヒト・デューラー(1471~1528)が亡くなるまでの20年間を過ごした「デューラーハウス」も有名で、広場には銅像が立っている。
音楽ファンにはパッヘルベル(1653~1706)の誕生の地であり、ワーグナー(1813~1883)の楽劇の舞台としても知られている。
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さらに歩いて行くと、素敵な風景を見つけた。絵になる橋と川。後で知ったのだけど、「フライシュ・ブリュッケ(肉屋の橋)」という名所だった。
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街に灯りが点り、肌寒くなってきた。そろそろホテルに戻らなきゃ。
ミュンヘン空港へ向かう途中の街。何となく訪れた街だけど、ただ歩き回るだけで楽しかった。ニュルンベルクに来てみて良かった。
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20:30ごろ、ヘルガから電話。外国のホテルにいて電話をもらうなんて、初めて。ヘルガの忠告。ミュンヘン空港とシュツットガルトはスリや引ったくり、置き引きが多いそうだ。気を付けよう。それに、列車が遅れたり、プラットホームが急に変わったりするから、くれぐれも早く出発すること。空港には4時間前か、3時間半前には着いておくこと。
「どうぞ、くれぐれも気を付けて、無事に日本へ帰ってね。ああ、それから、今夜はしっかり眠ってね。」 うん、そうするね。ありがとう、ヘルガ! おやすみなさい・・・・・。
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