タイトルとあらすじで判断せずに見てほしいイカゲームの話
前よりは韓国ドラマを見る様になったとはいえ、よっぽど興味がないとなかなか手を出せずにいる私ですが…Netflixオリジナルドラマの「イカゲーム」を見まして衝撃を受けました。めちゃめちゃ面白いやん!予告で「カイジ…?」とか「ハンガーゲーム…?」とか言ってごめん。ぱっと見は似ているけど、中身は全然違いました。韓国映像作品、パラサイトあたりから凄いですね。
そんで、イカゲームとは
タイトルにあるイカゲーム、韓国で子供たちに遊ばれていた遊びだそうです。冒頭に子供たちが遊んでいる姿が描かれますが、ラストシーンにもバッチリ効いてくるという象徴的なゲーム。どっかの記事で見ましたが、子供たちの遊びとしてはかなり過激な部類に入るものなんだそうです。それを最後のゲーム、そしてタイトルに持ってくるというのも粋な演出だなあと思ったり。邦題も英題も、原題である오징어 게임を直訳しているので「イカゲーム」というちょっとまぬけなタイトルにそそられなかった部分もあるのですが、タイトルで判断してごめんなさいという気持ち。もう平謝りです。
韓国作品お得意のエグめの見せ方
「韓国ノワール」というジャンルがある様に、こういう作品になると残虐描写が強烈にうまい(なんだったらやりすぎ)な韓国の映像作品。直接的な表現はもちろん、想像して精神的にクるものも多くて時々目を背けてしまったり…今回も結構激しめでした。第1ゲームのだるまさんがころんだでは、状況を理解できずに逃げまどう人たちがバンバン撃たれる描写が精神的にも物理的にも結構痛くて驚き。割と容赦ないスタイルでの「脱落」が一歩間違えると処刑スタイルの様に見えて、結構残酷だなあ…と引いてしまった部分もあったけど(特に第2ゲームの型抜きの時とか)まあ、全体の世界観とストーリーを考えるとまあ納得といえば納得かな。4話冒頭のフラッシュ演出は、日本ではかなり敏感になる描写でしたが…演出としては素晴らしかったと思います。あのあたりから狂気が分かりやすく見えてきた気がします。
キャストがみんな良い
頼りなくてお人好しすぎるギフン役のイ・ジョンジェ、秀才が故の狡猾さがあるサンウ役のパク・ヘス、影がある雰囲気のセビョク役のチョン・ホヨン、それ以外にもたくさんのキャストがいますがみんな最高に良かった!みんな等しく好きだったので、第6話のビー玉遊びでは戦慄しました…そしてこういうドラマで泣かされるとは思わなかったです。なんだかんだ言って、サンウの言う通りチーム戦になって生き残れるんだと思っていたから、アリやおじいさん、ジヨンが脱落するとは思いませんでした…ギフンが震えながらおじいさんを騙して勝とうとするところも、やっぱり彼は仲間思いの優しい人で、自分の命がかかっていてもおじいさんを騙す事に後ろめたさがある描写が…決着が着く直前の「カンブだから」とビー玉をくれるおじいさんには泣かされました…(最終話を見てからだとこのシーンは見え方がかなり変わってくるけど)逆にこのビー玉遊びで一線を越えてしまったのがサンウでしたね…自分が勝つ為に、アリを裏切るに至るまでのサンウの感情の起伏や、あの一瞬でそこまで計算してたという末恐ろしさ、またアリがひたすら良い人で気弱な雰囲気があるから、余計に絶望的なシーンでした。セビョクとジヨンのペアも泣けました…
それまで感情を表に出さなかったセビョクが、ジヨンによって大きく気持ちを爆発させるシーンはこっちも泣いてしまった。生きていく理由がないからってセビョクに勝利を譲るなんて…だからこそ、セビョクに手をかけたサンウが憎い…!ここまで書いて気付いたけど、私、ビー玉遊びのところでだいぶ泣いているし相当好きみたいです。笑
もう1つ印象的だったシーンは、ミニョがドクスを道連れにする5番目の「飛び石ゲーム」のパート。ドクスは卑怯で嫌なヤツでしたが、演じていたホ・ソンテがすごすぎて、登場しているところは割と追いかけてしまうキャラクターでした。弱くてビビりで虚栄心から周りに当たり散らしているだけの小さい男なのですが、その微妙な表情の変化や目や口の動きが見事だった…すごすぎる。ミニョに道連れにされそうになって怯えるところは真骨頂でしたねえ。ちゃんと「ドクスが怯えて」いて素晴らしかった。ミニョはコミックリリーフの様なポジションだったので、ここで突然ガラリと表情が変わって怖かった〜…自分を「詐欺師」というくらいだから、自分が誰かに騙される事は命を捨てる事よりも耐えられない事だったのかな。飛び石ゲームで2人が脱落したのは結果的にギフン達を助けたけど、ミニョは全くそんな事考えていない気がする。「今ならドクスを道連れにできる!」としか思ってなさそう。その飛び抜け方も素晴らしい。
セットと世界観
さすが、お金かかってる〜!いいね〜!となったのは、世界観を作り上げる為のセット。第1ゲームのだるまさんがころんだに登場するヨンヒ人形はかなり象徴的で「イカゲーム」なのにこっちの方がイメージあるかも…というくらいメインビジュアルにも使われてる。
(これは夢に出るやつ)
待機部屋からゲーム部屋に移動する時の階段も、妙に明るくてポップな作りになっていて、ペンローズの階段みたいな作りも相まって不気味な雰囲気が漂うという不思議な現象に。
全体的にキューブリックの雰囲気があるディストピア感で、ゾクゾクしてとても良かった。キューブリックっぽさってみんな真似したいけど失敗しちゃう事が多いイメージですが、イカゲームは「ぽさ」もありつつ、ちゃんとオリジナリティがあるし、絶妙なバランスでとっても良い!
日本の「カイジ」「ライアーゲーム」やアメリカの「ハンガーゲーム」など共通点や似ている部分がない訳ではないけど、このイカゲームが1つ飛び抜けてここまで評価されたのは、その完成度と真似事にとどまらず作品としてちゃんと昇華させた事が大きい様な気がします。デスゲームを楽しむ残虐性だけを観客に伝える様なエンタメ作品の要素よりも、キャラクターや人を掘り下げた部分が大きくて、だからこそ涙するシーンがあったり、文化が違う世界中の人たちが視聴したんじゃないかなあと思ったり。
メイキングを見ていると、ちゃんと高さを作ったセットで本当に脱落者を落としていたりして、リアリティ…という感じ。Netflix作品がそうなのか、韓国がそうなのか、はたまたイカゲームがそうだったのか、お金のかけ方が半端ないですね。でもここまでやってくれたら没入感もあるし、やっぱり集中して見れるので嬉しい。
韓国の文化を知らないとピンと来ないこと
大筋には影響ないし、知らなくたってちゃんとストーリーは理解できるんだけど、やっぱり分かっていたらもっと感じ方が違ったかもなあと思った事がいくつか。セビョクの朝鮮語訛り(弟と喋るシーンだけ北の訛りがあるそうです)とか、サンウがアリに「ヒョンって呼んでいい」っていう事の重みとか、ギフンとサンウがただの幼馴染ではなく、ギフンの方が年上である事とか、そもそも超競争社会である韓国で落ちぶれてしまった人々がどんな気持ちでいて、そこから這い上がるのがどれほどハードな事なのか、やっぱりちゃんと想像はできないしどこか他人事なんだけど、それでも感じるものはあるし全く共感しない訳ではない。文化を知らなくても全体像はつかめる、というのは外国人にとっては嬉しいポイントですね。
こんな曲まであって笑ってしまいました。(劇中かかってなかったよね?)
いやあ、社会現象だなあ。
韓国ドラマあるある「4話くらいからが面白い」現象もなく、1話目からかっ飛ばしてくれるし、9話とコンパクトなので一気に見れます。1話あたりが短いのも見やすいポイントかも!
全エピソード見終わった後のキャストのインタビュー(仲良さそうでほっこり)も含めて、楽しめた作品でした!