山括弧で閉じて
<人生について>
と、真新しいノートの1ページ目に書く。それが私のおまじないだ。
中学生の時に好きだった先生は、学級活動を行う時、黒板の左上に決まって「○○について」と書き出していた。
合唱コンクールについて、夏休みの過ごし方について、学校農園について、そしてテーマが特に無い時は「人生について」という、仰々しくも漠然としたテーマ。
でも先生がテーマのおぼつかない会に対し「人生について」と名付けて、のらりくらりと話を組み立てていくのもまた、人生っぽくて好きだった。
「人生について」だなんて、だいぶアバウトだけれど、計画性の無い話の中に、好奇心が飛び込んで、上手い具合に蛇行しては、発見をしたり、教訓を得たりしていく流れがおもしろかったし、ノせられた。
それは、私がのらりくらりと旅をしたり、それを文章でまとめようとするのにも少し似てるし、影響も受けてる。計画性の無さからの蛇行、そして気付きや発見。
「何を書いてるの?」と周りに聞かれたら「人生について」と答えてしまうのかな。
いやなんなら堂々と「人生について」と答えてしまおうかな。
揺れ迷いながら漠然と生きつつ、ふとしたタイミング、窓を開けてはカーテンがそよぐ様子に世界の美しさを感じ「ああ、人生」と思ってもいいじゃない。
<人生について>
この「人生について」を囲むカッコがカギかっこではなく、山カッコだったのは今でも忘れてない。
というか、友人Kと放課後に教壇飛び乗って「F先生ごっこ」をしていたからしっかりと覚えてる。
(ちなみに友人Kは私以上にF先生に心酔していた)
でもって、20年近くたった今でも
<人生について>
と、ノートの隅へまじないのように書いてしまう私もいる。
先生の飄々かつ、のらりくらりと世を渡る姿にあやかりたくて、振り返るとそこには「人生について」という学びができている……といいな。
最近またすこし思い悩むところがあって「人生について」という文字列にすがってるし、救われたいと思っているけれど、この6文字を山括弧で閉じて。
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