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【第151回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
Helen (Mrs. Incredible): I think your father is in trouble. 「きっとパパはトラブルに」
Violet: lf you haven’t noticed, Mom, we’re not doing so hot either. 「私たちもかなりまずくない?」
Helen (Mrs. Incredible): I’m going to look for him. < ヴァイオレットに向かって > And that means you’re in charge until I get back, Violet. 「パパを探すわ。戻るまであなたがリーダーよ」
Dash: What?!
Violet: You heard her. 「私がリーダー」
① lf you haven’t noticed, Mom,
「気づいてないかもしれないが」です。類似表現の You may not notice, but … の方がしっくりくるのではないでしょうか。
私も後者ばかり使っていましたが、今回この If you haven’t noticed, に出会って思わずワクワクです。でもやっぱり違いが気になります。
ChatGPT に聞くと
“If you haven’t noticed” assumes the listener should have noticed something and is often sarcastic or confrontational.
“You may not notice” suggests the listener might not realize something and is more neutral or polite.
との答えが返ってきました。
まとめると
If you haven’t noticed は、相手が気づいているべきだという前提で使われており、皮肉や挑発的なニュアンスがある。
一方、You may not notice は、相手が気づいていない可能性を示唆し、より中立的で丁寧な表現。
「何故気づいてないの?」と不満気な言い方が If you haven’t noticed, で、より中性的で丁寧な言い方が You may not notice, but… ですね。
この違い、本当に面白いですね!でも中性的な You may not notice を使っていたのはほとんどのシチュエーションで正解でしたね…
② we’re not doing so hot either.
hot には スラングとしてvery good の意味があり、通常否定文で使われます。
He came home early because he wasn't feeling too hot.
「彼はあまり気分が良くなかったので早く帰宅した」です。
セリフの we’re not doing so hot either. は
「僕たちもあまり調子が良くない」です。hot は「暑い」と「辛い」が一般的ですが、このスラングの hot (= very good ) は面白いですね。
③ You heard her. 「私がリーダー」
直訳は「あなたはお母さん(が言うこと)を聞いたでしょ」です。
もっとわかりやすい英語を付け加えると “[ Mom put me in charge, and ] you heard her [ say it yourself ].” で、「お母さんは私 (Violet) を責任者(リーダー)にしたでしょ。そしてあなた (Dash) はお母さんがそう言うのを自分で聞いたでしょ」です。
自分がリーダーだと思っている Dash に対して、Violet は「お母さんがそう(=私がリーダーだと)言ったでしょ」と言ったのです。
次のようなhear (heard) の使い方もあります。
A: Clean your room. 「部屋を掃除しなさい」
B: What? 「えっ、何?」
A You heard me. 「聞こえたでしょ?」 ( = 言った通りにしなさい )
母のヘレンから何か問題が起きたらパワーを使ってもいいと言われたヴァイオレットは…
Violet: But you said never to use... 「でも…」
Helen (Mrs. Incredible): I know what I said! 「〇〇〇〇!」
I know what I said!
娘のヴァイオレットが言い淀んだ時にヘレンが発した言葉です。
直訳は「私は自分が言ったことが分かっている」です。すなわち、「大丈夫、パワー使ってもいいよ」と念押ししたのが I know what I said. です。
でもこのセリフの日本語字幕が素晴らしかったので取り上げました。平仮名で4文字です。
答えは、
「いいから!」
です。自分の言ったことに対して相手が懐疑的な態度をとった時に「いいから、いいから!」と言いますね。感情がこもった良い日本語だと思いませんか?それが I know what I said. です。
Mirage: And disregarding it is not strength. 「命を奪うことが強さじゃない」
SYNDROME: I called his bluff, sweetheart, that’s all. I knew he wouldn’t have it in him to actually... 「あんなのハッタリさ。奴にそんな度胸はない」
I called his bluff.「あんなのハッタリさ」
ボブが「ミラージュを殺す」とシンドロームを脅した時に、シンドロームが言ったことです。
“殺すなんてハッタリでボブには出来ない” とのシンドロームの考えは正しかったのです。
I called his bluff. はポーカーゲームに由来しています。ポーカーでは、自分の持っているカードが相手よりいいカードであるように装うことが大切で、それを “bluff”( ハッタリ)と呼びます。
call one’s bluff なので、「相手のハッタリを(ハッタリだと)呼ぶ」ーすなわち、「(ハッタリにも負けずに)ハッタリを見抜く」という意味です。
call は「呼ぶ」なので、ポーカーでの call の使い方がを知らなければ意味をとるのは困難になってきます。
やっぱり英語だけでなく、いろんな雑学などを勉強しておくことも英語を理解する上で大切になってくることも多々あります。
VIOLET What do you think is going on here? You think we’re on vacation or something? Mom and Dad’s lives could be in jeopardy. Or worse, their marriage. 「ふざけないで。おふざけじゃないのよ。親の命がかかってるの。しかも離婚の危機」
DASH Their marriage? So, the bad guys are trying to wreck Mom and Dad’s marriage. 「悪い連中がママとパパをわかれさせるの?」
VIOLET Oh, forget it. You’re so immature. 「もういいわ。子供ね」
DASH Okay, I’m gonna go look around. 「じゃあ探検に」
VIOLET Mom said to stay hidden. 「ママに逆らうの?」
① So, the bad guys are trying to wreck Mom and Dad’s marriage.
wreck は名詞で「破損」、動詞では「壊す」という意味なので「悪い奴らがパパとママの結婚を壊そうとしている」となります。
このwreck は“壊してメチャクチャにしてしまう”というニュアンスがあり、destroy よりも強いニュアンスがあります。
The massive storm last night wrecked the entire town. 「昨晩の大きな嵐は町全体をメチャメチャにした」
break の同義語 wreck を覚えておきたいですね。
② Mom said to stay hidden.
say to + 動詞 〜 で「〜するように言う」で、主語(ここでは母親)が言ったのが “Stay hidden.” です。
ですから意味は「ママは隠れているように言った」です。
この表現は“何を”言ったのかに焦点が当たっています。それに対して、tell (人) to 〜「(人)に〜するように言う」は“誰に”言ったのかに焦点が当たっています。
Mom told us to stay hidden. だと「ママは私たちに隠れているように言った」となり、誰でもない“私たち”に焦点が当たっています。
どちらかと言うと、tell … の方がよく目にするのではないでしょうか。でもこの say to + 動詞 〜 も頭に入れておきたいですね。