見出し画像

【第153回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。

Bob (Mr. Incredible): I should’ve told you I was fired, I admit it. But I didn’t want you to worry. 「君が心配するから内緒にしてた」
Helen (Mrs. Incredible): You didn’t want me to worry? And now we’re running for our lives through some godforsaken jungle! 「心配ですって?私にジャングルを走らせて」
Bob (Mr. Incredible): You keep trying to pick a fight, but I’m still just happy you’re alive. 「とりあえず無事でよかった」

「Mr.インクレディブル」

① we’re running for our lives through some godforsaken jungle!
字幕には一部分しか訳されていませんが、「私たちは人里離れたジャングルの中を命からがら走っている!」という意味です。

ポイントは、run for… の for です。for ... は“…に向かって”という方向性を指しており、“目的地点の達成までは触れていない”のが大切な点です。

それに対して、to… は“目的地への到達”を前提としています。

(1) She ran to the station. 「彼女は駅まで走って行った」
(2) She ran for the station. 「彼女は駅の方へ走って行った」

(1)は駅への到着を前提にしており、それが to のイメージです。それに対して、(2)はあくまで駅の方へ向かっただけで、到着の有無には触れていません。これが for のイメージです。

セリフの run for our lives の直訳は「私たちの命に向かって走る」ですが、そこから「命が助かるために走る」と取れます。もっと自然な日本語で言うと「命懸けで走る」や「命からがら走る」ですね。

“命が助かるために走る”というのは、まだ助かるかどうかヘレンが言った時点では分かりません。ですから命が助かると言う目的の達成までは触れていないのです。故に run for … と for が使われていると解釈できます。

次のようなrun torun for の使い方もあります。
(1) He ran to the President.
(2) He ran for President.

(1)は「彼は大統領のところに走って行った」
(2)は「彼は大統領に立候補した

と、to と for で全く意味が異なります。

(1)は the がついてるので“大統領本人”ですが、(2)は the がないので“大統領としての役職”を表し、不可算名詞になっています。

また(1)は「大統領本人のところまで(=目的地まで)走って行った」ですが、(2)は「大統領という役職に向けて走った」= 「大統領選に立候補した」となり、大統領になれるかどうかは未定です。あくまで“立候補”どまりなのです。

もっと言えば、(1)の ran to … は大統領がいる場所一択を表しているのに対して、(2)の ran for … は大統領になれる、なれないの二択を表しているということです。

to と for ; もっともっと深掘りしていきたくなる深くて面白い前置詞です。

② You keep trying to pick a fight, …
これは字幕にはありません。pick a fight で「喧嘩を(自分から)しかける」という意味があります。

pick には「念入りに選ぶ」という意味があり、そこには“自らが意図的に”行動を起こすというニュアンスが含まれています。

ですから pick a fight で「意図的に喧嘩をする」というネガティブな意味になるのです。「 喧嘩をふっかける」や「いちゃもんをつける」がピッタリの訳ではないでしょうか。

それに対して 類義語の fight はニュートラルな語で、意図的かどうかは関係なく使われます。

pick a fightネガティブに使われるのに対して fight は I’ll fight for freedom. 「自由のために戦うぞ!」というようにポジティブな意味でも使えます。



SYNDROME: Huh? Huh!? Oh, come on! You gotta admit, this is cool! Just like a movie! The robot will emerge dramatically, do some damage. Throngs of screaming people! And just when all hope is lost, Syndrome will save the day! I’ll be a bigger hero than you ever were! 「どうだ、最高のアイデアだろ。映画みたいにロボットが登場する。町は破壊され、群衆は逃げる。そして絶体絶命の時にシンドロームが人々を救う!お前より偉大なヒーローだ」

「Mr.インクレディブル」

Throngs of screaming people!
「叫び声を上げる大勢の人々!」が日本語訳です。ポイントは throngs of … です。throng は「群集」で、そこから throngs of … で「多数の…」という意味になります。

この語句を取り上げたのは a lot of … や many … の同義語として覚えておくことができるからです。ただ、throngs of… のニュアンスを ChatGPT で調べると、

throngs of : Descriptive and dramatic, often referring to tightly packed groups of people or animals, focusing on movement or chaos.

ChatGPT

とありました。

「人々や動物たちが密集していて、動きや混乱が強調されている描写的でドラマチックな」というニュアンスがあるようです。

ニュートラルな a lot of や many と比べると throngs of にはいろんなニュアンスが含まれていて面白いですね。

ちなみに ChatGPT で throngs of people と throngs of animals の表す画像を作成してもらいました。

throngs of people (上)と throngs of animals (下)

ChatGPTによる画像生成
ChatGPTによる画像生成


確かに動きがありドラマチックですね。“多くの”、“大勢の” は a lot of… と many だけでなく、場合によってはこの throngs of … も使っていきたいですね。

② Syndrome will save the day!
「シンドロームが窮地を救う」と言う意味です。save the day は直訳は「その日を救う」とスケールが大きいですが、“劇的な窮地を救う”場合に用いるのがピッタリです。

Superman saved the day! 「スーパーマンが窮地を救ってくれた」

そんなに大きな窮地でなければ You saved the situation. で十分です。

以前バスを降りようとした時、一万円札しか財布にないことに気づき、降りる二つ目前の停留所でそのことを運転手に伝えました。「それは困りますね〜」と運転手に言われたとき、前の方に座っていた年配の方が「これっ」と言って小銭を差し出してくれたのです。

私は申し訳なさの余り、「いえ、そんな…」と断ったのですが、その年配の方は「いいから、いいから」と私の手に小銭をギュッと置きました。私は「どうやって返したらいいですか?」と尋ねたのですが、「大丈夫、大丈夫」と言われたのです。

降りる間際に再度お礼を言ってバスを降りたのですが、この絶対絶命の窮地(大袈裟!?)を救ってくれたこの年配の方が、まさしく She saved the day! です。(それからはバスに乗る前には必ず小銭が財布にあるかどうかを確認するようにしています…)

いいなと思ったら応援しよう!