「大切な人へ」想いを贈る絵本『なにしてるの?』絵本作家鈴木まもるさんからのメッセージ
「好き」というきもちは「うれしい」から来るーーー
大切な人へ想いを贈る絵本として、たくさんの方に愛されてきた絵本
『あなたがだいすき』『たんじょうび おめでとう』。
その作者、鈴木まもるさんによる新刊『なにしてるの?』では、小さな子が、パン屋さんやベンチで編み物をするおばあちゃん、花に水をやるおじいさんに「なにしてるの?」と聞いて回ります。その答えの先には「うれしい」という誰かを思いやる気持ちがあふれていて、それを見てきたその子もお母さんに「うれしくなること」をするのです。
「うれしくなることをすると、みんながうれしくなる」
優しいイラストと言葉で紡がれた本作は、だれかを想うきもちや、自分はなにが好きで、なんのために存在しているのか、という大切なことに気付かせてくれる作品です。
そんな本作の創作に込めた思いを作者の鈴木まもるさんよりいただきました。
ーー「なにしてるの?」ができるまで。ーー
ある日、遠方に行く仕事で羽田飛行場から飛行機に乗ることになりました。
僻地に住んでいるので、時間に遅れてはまずいので、いつも早めに搭乗口に行くことにしています。
その日も飛行機の見える大きな窓のはじっこで、絵を描いて時間をつぶしていた時です。後ろから「なにしてるの?」と、かわいい声が聞こえました。ふりむくと、小さな子がぼくを見ていました。
「絵を描いているんだよ」と答えると、
「どうして?」と聞かれました。
「絵を描くのが好きだからだよ」
「フーン」
小さな子は、お母さんに呼ばれたのか、スッと人ごみの中に行ってしまいました。
ただそれだけだったのですが、そのことが頭に引っかかり、「なにしてるの?」というフレーズとその子が、その後、ちょくちょく頭に出てきて、膨らんでいきました…。
そして出来上がったのが、この絵本です。
自分は、なんのために、なにをしているのか…
自問しつつ絵本の世界を作っていく過程で、どんな人たちを登場させるか考えていくと、結局、衣食住に関わること、そして自然や物つくり、文化、芸術に関わる生きることの根本のことにつながっていくことなのかと思いました。
まず、好きであること(これは個体差があることです)そして、それを、どう世の中と接点を持たせ、目的化して自分の存在を正当化していくことにつながるのか…
昨今、スマホなどで検索すると、世界の隅々のことがわかる(ような)気がしますが、実は皆身近な自分がわからないから、「いかに生きるのか」というような古い本が売れているのでしょう。「なにしてるの?」という小さな子の問いかけに答え、応えられるよう生きようと思いました。
飛行場で会ったあの子に「あなたのおかげで、こんな絵本できたんだよ…」と渡したいけれど…かなわぬことです。どこかの書店か図書館で手にしてくれることを願っています。
鈴木まもる
●鈴木まもる(すずきまもる)プロフィール● 1952 年、東京都に生まれる。東京藝術大学工芸科中退。 画家・絵本作家・鳥の巣研究家。 1995 年「黒ねこ サンゴロウ 」シリーズ(竹下文子 / 文・偕成社)で赤い鳥さし絵賞を受賞。2006 年 『 ぼくの鳥の巣絵日記 』 (偕成社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。 2015 年 『 ニワシドリのひみつ 』 (岩崎書店)で産経児童出版文化賞 JR 賞を受賞。ほかの作品に『みんなあかちゃんだった』(小峰書店)『ウミガメものがたり』(童心社)『せんろはつづく』(竹下文子/文・金の星社)『てをつなぐ』(金の星社)『あるヘラジカの物語』(星野道夫/原案・あすなろ書房)など手数ある。また全国各地で絵画と鳥の巣の展覧会を開催している。