夏といえば妖怪? 「かいけつゾロリ」の中の妖怪たち ーー新刊『ゾワゾワゾクゾク ようかいまつり』ができました!
かいけつゾロリに登場する妖怪たちをご紹介
7月、今年も夏がやってきました。
夏といえば、夏休み、お祭り、花火、お盆、おばけ、妖怪……。
おばけ、妖怪ですか? という声も聞こえてきそうですが、昔はもっとおばけや妖怪など、目に見えないものを身近に感じられたような気がします。
子どもの頃、夕暮れ時、池のそばを通るときには河童がでるんじゃないかとか、風が強い日に木の上に天狗の影を見た気がしたとか……ずいぶんとおびえていました。
でも、「かいけつゾロリ」シリーズに登場するおばけや妖怪たちは、ちょっと違います。
人に怖がられなくなって困っているおばけ、妖怪たちです。
そんな魅力的なおばけや妖怪たちを、ご紹介させてください。
こわがられなくなった妖怪たち
絵を見ると、怖いおばけや妖怪というよりも、なんだかかわいくて、出会ってみたくなりませんか? こんなおばけや妖怪なら、友達にもなれるかもしれません。
作者の原ゆたか先生が、この妖怪たちについて語られていた言葉があります。
「あまり怖すぎて、トイレに行けなくなるのはいやだけど、怖いもの見たさの好奇心はある、そんな子どもたちに、ちょっとドジで愛らしい妖怪を描いてあげたかった」
でも、本来は妖怪やおばけは怖がられるのが役割。
主人公のかいけつゾロリは、そんなおばけや妖怪たちに【人を怖がらせる自信】をとりもどさせようと奮闘するのです。
「かいけつゾロリ」シリーズの中で、おばけや妖怪は、自分らしく生きようとしているだけで、悪い存在としては描かれていません。
おばけや妖怪の物語は怖いものという概念を、逆から見て描く作者原ゆたか先生の発想の豊かさに驚かされるとともに、異世界のおばけ、妖怪たちに対しても向けられる優しい眼差しに温かい気持ちになります。
いたずらの王者を目指す主人公ゾロリと悪役たち
「かいけつゾロリ」シリーズには、敵役のキャラクターも登場しますが、本当の悪者は出てきません。
主人公のゾロリもいたずらの王者を目指して修行の旅を続けるキツネですが、心根の優しさが顔を出し、弟子のイシシ、ノシシとともに結局は人助けをしてしまうのです。
ノシシ・かいけつゾロリ・イシシ
ゾロリたちの敵キャラクターとして登場する、大どろぼうのグラモや、海賊のタイガー、ケチでインチキな商品ばかり考えるお菓子会社のブルル社長や社員のコブルにも、ちょっとぬけたところがあり、どこか憎めない存在として描かれます。
コブルとブルル社長・グラモ・タイガー
原ゆたか先生は、「悪役にも悪役の人生があるから、ちゃんと生きる道を残してあげたい」「子どもたちには、ハッピーエンドの物語を見せてあげたい」と、いつもおっしゃっています。
そのお言葉のとおり、「かいけつゾロリ」シリーズでは、最後にはゾロリたちもわき役たちも、みんなちょっと幸せな気持ちで、それぞれの世界に戻っていきます。
おばけ、妖怪たちが活躍するお話を、いくつかご紹介します。
シリーズで、最初に妖怪たちが登場するのは、『かいけつゾロリのきょうふのやかた』です。
人前に出て行っても、だれも怖がってくれない……そんな悩みをかかえた妖怪たちに、ゾロリは自分が妖怪に変身して、どうやったら人を怖がらせることができるのか、お手本を示そうとするのですが……。
あらら……がんばりすぎて失敗?
いいえ。妖怪たちは、どうやら少し自信をとりもどしたようで、めでたしめでたし。
また、『かいけつゾロリのおばけ大さくせん』では……
年をとって、人を怖がらせる自信を失ったおばけたちのために、ゾロリはおばけが待つあばら家に、子どもたちを誘い込みます。
おばけたちは、次々に、子どもたちを怖がらせようと試みますが……子どもたちは全然怖がりません。
あらら、また失敗?
でも、失敗ではなかったんですね。子どもたちは、おばけが本当にいるとわかって、最後にはふるえていたようですよ。めでたしめでたし。
そして、『かいけつゾロリきょうふのようかいえんそく』では……
まだ妖怪になりきれない、妖怪の子どもたちが登場します。
ゾロリは、妖怪の子どもたちの遠足の引率をたのまれます。
最初は、どんな妖怪の子どもなのかもわからず、6人の子どもたちを連れて遠足にでかけたのですが、いろいろな問題が起こるたび、だんだんと妖怪の子どもたちの特技が見え隠れ。
お話の最後には、みんな立派な妖怪に成長します。
さて、7月9日刊行の最新刊『かいけつゾロリのゾワゾワゾクゾクようかいまつり』は、どんなお話かというと……
海外の妖怪から日本各地のおばけや妖怪まで、不可思議な存在のキャラクターが、たくさん登場します。
日本には、お盆という行事があるにもかかわらず、最近ハロウィーンが盛大に行われるようになったことで、海外の妖怪ばかりが目立ってしまい、日本古来の妖怪やおばけたちが、肩身をせまくしていることを、妖怪の先生が嘆いていたのです。
ハロウィーンを、みんなが楽しめるお祭りにしたいと、妖怪の先生はゾロリに熱く語ります。
その想いに、つけこもうとする怪しい影の存在に気づいたゾロリは、妖怪の子どもたちと、調査に乗り出します。
怪しい影の正体をあばきながら、ゾロリは妖怪みんなのためのお祭りを作り上げていきます。
ゾロリたちの作り上げた妖怪のためのお祭りは、日本のお盆と海外のハロウィーンをミックスさせたもの!
妖怪ではない生き物も、日本の妖怪も海外の妖怪も、みんななかよくお祭りを楽しむことができます。
もしかしたら、今年の夏は、楽しい妖怪たちに出会えるかもしれません。 そして、ハロウィーンでは、本物の妖怪たちがいっしょに楽しんでいるかもしれません。
子どもの頃に戻った気持ちで、「かいけつゾロリ」シリーズの妖怪たちとの物語を読んでみていただけたら、作者、原ゆたか先生のすべてのキャラクターに対しての愛情を改めて感じていただけると思います。
この新刊発売を記念して、読者の皆様からオリジナルの妖怪イラストを募集させていただく<弐百鬼夜行キャンペーン>も実施しています。
くわしくは、こちらのページをご覧ください。
かいけつゾロリシリーズ
『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』(1987年)から始まる30年以上のロングセラーシリーズで、7月刊の最新刊『かいけつゾロリのゾワゾワゾクゾクようかいまつり』で69巻となる。いたずらの王者を目指すキツネのゾロリと弟子のふたごのイノシシ、イシシとノシシが行く先々で繰り広げる大冒険物語。読み始めたら止まらない事件につぐ事件の物語展開と、文章と絵が一体化した独特の本づくりで、本を読まない子も「ゾロリ」だけは読むといわれ、初めての一人読みにぴったりのシリーズとなっている。現在NHKEテレにてテレビアニメも放送中。
作者 原ゆたか
1953年、熊本県に生まれる。1974年、KFSコンテスト・講談社児童図書部門賞受賞。「かいけつゾロリ」シリーズ(ポプラ社)「プカプカチョコレー島」シリーズ(あかね書房)のほか、原京子氏との共著に「イシシとノシシのスッポコペッポコへんてこ話」シリーズ『サンタクロース一年生』(以上ポプラ社)「にんじゃざむらいガムチョコバナナ」(KADOKAWA)など多数の作品がある。
他にも妖怪たちが登場するお話があります。
紹介しきれなかったシリーズ内のおばけや妖怪が出てくる本はこちらです。
『かいけつゾロリのゆうれいせん』
『かいけつゾロリのきょうふのサッカー』
『かいけつゾロリのきょうふの宝さがし』
『かいけつゾロリちきゅうさいごの日』
『かいけつゾロリのきょうふのカーニバル』
『かいけつゾロリのようかい大リーグ』
『かいけつゾロリのなぞのおたから大さくさん前編』
『かいけつゾロリのなぞのおたから大さくせん後編』
『かいけつゾロリのようかい大うんどうかい』
『かいけつゾロリのかいていたんけん』
『かいけつゾロリのちていたんけん』
『かいけつゾロリロボット大さくさん』
『かいけつゾロリうちゅう大さくせん』
『かいけつゾロリスターたんじょう』
イシシとノシシが、ゾロリと出会う前のお話「イシシとノシシのスッポコペッポコへんてこ話」シリーズにも、おばけのお話があります。
『イシシとノシシのスッポコペッポコへんてこ話 へいきのヘイタ』
この記事でご紹介した本はこちらです。