編集者が考える「原稿のレベルを上げるためにできること」【ポプラ社小説新人賞への道】
こんにちは。
「ポプラ社小説新人賞への道」もいよいよ終盤。
今回は、知りたい人が一番多いであろうポイント……
「どうやったら原稿の質があげられるか」についてです。
小説を書きあげたけど、そこからどうしたらいいのか分からない。
どうやったら「うまい小説」「面白い小説」にレベルアップするのか。
というか、小説ってどうやったら良くなるの?
そんな悩みを抱えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
小説に正解はありません。
なので、「こうすれば絶対に良くなります!」という答えは、ある意味でありません。
しかし、個人の努力の範囲で、確実に小説をブラッシュアップしていける術はあります。
わたしたち編集者は、いろんな著者の原稿づくりをサポートし、一番近い場所からその過程をみてきました。
優れた書き手がどうやって小説に向き合っているか。様々な事例を思い浮かべつつ、その経験をもとに「編集者が考える原稿のレベルを上げる方法」についてまとめてみようと思います。
というわけで、また編集部にアンケートを取ってみました。
いろんな編集者の意見をみんなで見ていきましょう。
それではスタート!
※編集者の回答ごとに引用BOXでまとめています。
しっかり推敲すること
書き上げた後、必ず推敲すること。
・推敲時に、映像が浮かぶかを確認する。
(描写は足りているか? 登場人物をきちんと思い描くことはできるか? セリフが誰のものか分かるか?)
・主要人物の設定を(全て書かなかったとしても)細部まで決めておく。
(キャラクターシートの作成なども有力/人物像にブレはないか?)
月並みですが推敲を重ねること?
手癖で同じ表現や単語を使いがちだったりします。読み直して変えることで、文章に広がりがでるかもしれません。
やはり、たくさん寄せられたのは「推敲を重ねること」です。
「なんだ、あたりまえじゃん」と思うかもしれません。
でも、本当にその「推敲」は足りていますか?
数行前と同じ表現を使っていませんか?
キャラクターのセリフが説明的になっていませんか?
序盤と終盤でキャラクターがブレていませんか?
などなど。
完成してからブラッシュアップする作業が一番大切なので、時間をかけてじっくり推敲作業をしていきましょう。
ちなみに、文章の精度を上げる方法として、こんな回答も寄せられました。
原稿の推敲と合わせて試してみてはいかがでしょうか。
ある作家さんが、「原稿を音読すると、テンポが悪い部分や冗長な部分があぶりだされる」と言っていて、なるほど、と思いました。私も原稿を頂いた時に、よく音読してます。
プロットを詰めること
完成した後の推敲も大事ですが、執筆を始める前に「プロット」の推敲も足りていますか?
起承転結をしっかり組み立てること。
映画をたくさん見て参考にすると良いです。だいたい2時間で起承転結がしっかり収まっています。要所要所のシーンを切り取って繋いでいるので、場面づくりの参考にもなるかと。
物語を作るうえで、構造を固めることはとても大事です。
そのためには「プロット」をしっかり組むことが重要です。
人によってはプロットを立てないで書ける方もいらっしゃいますが、基本的にはプロットを詰めてから執筆することを強くおすすめします。
プロットは作品の土台みたいなものです。見切り発車はダメ、絶対。
逆にプロットをしっかり組んでいれば、途中で詰まったり、最初から書き直したりすることも少なくなります。
最終的に作業のロスをなくすためにも、「プロットの推敲をすること」はとても大事です。
調べたことを創作に落とし込むこと
取り上げる題材について、想像だけで書くのではなく、参考になる資料にあたったり、取材をしたりして書くことで、物語に説得力がでることも多いです。
自分の得意分野を活かす。
料理が得意だったり歴史に詳しかったり、自分の得意な部分が活かせると個性が出て強みになる気がします。すでに持っている専門的な知識でなくても、好きなことを調べても良いと思います。
応募原稿を読んでいると、ご自身の体験やエピソードを元に書かれた作品が多く見受けられます。
それ自体はとてもいいことですが、デビューした後は二作目・三作目が待ち受けています。
自分の体験しか書けないとネタが枯渇してしまい、よく聞く「二作目の壁」にぶち当たってしまいます。
それを打破するためにも、色んなことを調べて創作に盛り込んでいけると、作品のバリエーションを広げることができます。
端的に言うと、手数が増えます。
調べた小ネタがキャラクターの個性を出すことに繋がったりしますし、調べたことから新しいネタが生まれることもあります。
ちょっと調べてみたら、書こうとしていたことと違った!なんてこともあります。
また、調べたことを創作に落とし込んである原稿は、細部のリアリティが全然違っていて作品に奥行きがあります。
読むとすぐに分かるのです。ほんとです。
調べるのは大変だし、めんどくさいことです。
作業のコスパを考えて敬遠してしまうかもしれませんが、その労力をいとわないことが、作品の質の高さに繋がるかもしれません。
たくさんの「物語」に触れること
絶対にそうなるとはもちろん言えませんが(笑)、なるべくたくさんの物語に触れることは、その近道ではないかと思います。とくに時代を超えて読み継がれているような名作には、それだけの理由があります。そうした作品を読むことは必ず創作にとってプラスになると思います。
どんな読者に届けたいかを具体的にイメージしながら書けると、より良いと思います。
「『〇〇〇』が好きな人なら、楽しんでもらえると思う」
「△△という作家の作品が好きな人に読んでもらいたい」という風に具体的な小説や作家名などが浮かんでいると、その作品や作家に比べて、自分の作品はどの点がよく書けているか、どの点が苦手なのかを、客観的に比較できてブラッシュアップしやすいと思います。「その作家や作品に寄せたり、真似をしたりする」ということではありません。
あくまでも、自分の作品の持ち味を冷静に分析するための手段です。
「この作品は自分にしか書けない!」と独りよがりに思い込むのではなく、
他の作品と比較して冷静に自分の作品を分析することが、改稿作業に役立つと思います。
冷静に分析するためには、多くの作品を読むことが必須です。
いろんな作品に触れる中で、自分の作品と似ていると感じる作品も出てくると思います。
実際に選考している時に、「この作品は〇〇に似ているな」と思うことも、よくあります。
必ずしも似ているから落とすわけではありません。
似ていても、違っている部分や魅力的な部分があれば、その人の個性に繋がるはずです。
「小説を書く」ためにとても大事なこと――それは「小説を読むこと」です。
このシーンを描くのにどういう切り口があるか。この気持ちを表現するのにどんな言葉があるのか。もっといい書き方はないか。
それらを考え、判断するためには、小説に対する「目」が必要です。
「目」を養うためには、いろんな小説を読むことが一番です。
この世にはたくさんの素晴らしい作品が存在します。
たくさんの小説を読んで、インプットして、感動して。
それらの作品に負けない作品をぜひ書き上げて欲しいと願っています。
※
今回は以上です。
小説の書き方や創作のアプローチは無限大です。
人それぞれの正解があって、今日語ったことも、正解の中の一つでしかないと思います。
いろんな模索をしながら、みなさんそれぞれの小説を見つけ出してください。
それではまた!
(ひととおり語ってしまったので、次はなにを話せばいいのか途方にくれつつ…次はあるのか?)
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