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編集者が応募原稿を読むときに「重視しているところ」と「実は気にしないところ」【ポプラ社小説新人賞への道】


小説家デビューの登竜門「新人賞」。
それぞれの新人賞には傾向がある、ということは前回の記事で触れましたが、賞に応募したら選考を突破していかないといけません。


選考方法は出版社や新人賞によって異なりますが、多くは一次選考・二次選考・最終選考と段階を踏んで選考していきます。

ポプラ社小説新人賞も一次選考・二次選考・三次選考・最終選考という過程があり、一次選考から編集者が全ての原稿に目を通しています。

なんでそんな細かく選考を分けるの? 
まとめれば早いし便利じゃん。

たしかにそうかもしれません。
ただ、選考ごとに読む人を変えて色んな人の眼を通すことで、その原稿の良い所を見逃さないようにしているのです。
ちなみにポプラ社小説新人賞では、二次選考以降は選考ごとに一つの原稿を複数人が読んで審査をしています。

正直に言うと、応募原稿を審査するのはとても楽しく、なかなか大変です。

私たちが一番恐れること。それは輝く才能を見落としてしまうこと
それだけはあってはならないと強く思っているので、書き手が原稿に向き合うのと同様に、読み手である私たちも全力で原稿に向き合っています
そんな熱量のある読み方を短期間にたくさん行い、各作品のレポート(良かった点、悪かった点、改善できる点など)を提出したうえで、選考会を行っているのです。


各選考を通過する原稿の本数は決まっていません。
最終選考には4~5本が残ることが多いですが、それも決まっているわけではありません。
<良い作品はすべて残す>というルールなので、本当は1本でも10本でもいいのですが、選考を重ねるにつれて自然と毎年同じような本数に絞られていく不思議です。

真剣に読んで、ちゃんと選考しているのはわかった。
じゃあ、原稿の何を見ているの? どこを見て審査してるの? 何が大事なの?
そんなことが気になるかもしれません。

・・・それ、実は私も気になります。

もちろん選考にあたってはルールや基準を共有しています
ただ、編集者によって小説の読み方は違いますし、他の人たちは私とまた違う評価軸を持っているかもしれません。
というわけで、みんながどのように応募原稿を読んでいるのか、編集部にアンケートを取ってみました。


毎年すべての原稿に目を通している編集者たちが、原稿のどこを見て、逆に何を見ていないのか――。


(★補足)今回はポプラ社小説新人賞の選考を行っている文芸編集部にアンケートを行いましたが、新人賞によっては編集者以外の人が選考に関わっているケースもありますし、その場合はまた違う評価基準があったりします。
見ているポイントや評価するポイントは新人賞によっても異なると思いますので、あくまでご参考の一つとしてご覧ください。

<応募原稿の「どこ」を見ているか>

※回答してくれた編集者ごとに引用ボックスでまとめています。

単純に面白いか、オリジナリティを持った作品か、といった全体像であったり、作家としての資質・将来性を見るようにしています。
・小説のテーマ性
・その著者ならではのオリジナリティ・視点のユニークさがあるか?(その著者にしか書けない作品か?)
・キャラクターの魅力
・(読者の)共感性があるか
・市場性
文体やキャラクターやストーリー展開など、どこか一つでも、その人なりのオリジナリティが感じられるかどうか。
読んでいる最中に、感情の動く瞬間があるかどうかを見ています。
喜びや感動などプラスの気持ちで心が動かされることはもちろんのこと、プラスではなくても、他者への想像力を掻き立ててくれたり、味わったことがあるけれども名前のついていなかった感情に気づかされたりする作品が好きです。
その中でも、読んだ後、世界がよく見える、希望のある作品だと、多くの人に読んでもらいたい気持ちがわきます。
文章力を一番に見ている気がします。
読みやすさはもちろん、共感性が高い表現だったりリズミカルな文章だったり、その人の持っているものが出ると感じます。
あと、登場人物のキャラクターがしっかりできているか。私は共感できたり好きだと思えたりする部分があると良いなと思います。
読者に対する「目」を持っているかどうか。
「自分」が書きたいものを楽しく書くだけでなく、それが「読者」にとって楽しい作品にしようという意識があるか、という点を見ています。
テーマであったり、設定であったり、キャラクターであったり、そのポイントは様々ですが、「読者を楽しませてやろう」と思えば思うほど、似ている作品に対して違いを作ろうと思ったり、あの本より面白く作ってやろうと悩んだり……と色んなたくらみが生まれ、結果的に作品の「オリジナリティ」につながるのではないかと思います。


うーん、人それぞれだなあ……としみじみ感じますが(笑)
その人にしか書けない「オリジナリティ」を重視しながら読んでいる人が多い印象ですね。

さて、重視するポイントがあれば、あまり気にしない部分もあるはず。
それについてもアンケートをとってみました。

<実は応募原稿であんまり「気にしていない」部分>

文章表現の巧さなどテクニックの部分はそこまで重視しません
多少の誤字脱字はあまり気にしていません。(もちろん無いほうが絶対にいいです!)
原稿自体の完成度は見ていますが、それだけを判断基準にはしていません。改善できそうな粗さだったらあまり気にせず、むしろオリジナリティや熱量を見ています。
文章の上手い下手はそこまで気にしていません。
改稿する中で必ず良くなります。
特に、風景描写や心理描写、会話などは、最初の読者である編集者と話し合ってバランスを調整すると、読みやすくなると思います。


共通して言えることは、実は細かい部分の粗さはマイナス評価にならないということ(もちろん整えて応募したほうが絶対にいいのですが)

小さいミスはあんまり心配しなくて大丈夫のようです。

今回は編集者が見ているポイント・そうでないポイントについてまとめましたが、これにとらわれる必要はありません。
取り組んでいる小説のレベルアップにつながりそうな部分だけ参考にして、あとは忘れてください。
小説に正解はありませんし、どんなに変な小説や今までにない小説だったとしても、その小説が面白ければ、必ず私たちがその輝きを見つけ出します。

ポプラ社小説新人賞に限らず、どの新人賞も万全の態勢でその輝きを掬い上げようとしているはずなので、安心して各新人賞に応募してください。


次回は『応募時に気を付けたほうが良いこと』『本当によくある問い合わせ』などの予定です。

それではまた!

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