テレワーク時代に最重要のコミュニケーション能力とは
多くの企業の方から、テレワークにおけるコミュニケーション不足を補う能力とは何かという質問を受けます。そこで、今回は「テレワーク時代に最重要のコミュニケーション能力とは」と題して、その答えとなる考え方を紹介したいと思います。
本題に入る前に、まずは私が考えるテレワーク時代のコミュニケーション能力を発揮する為の大前提となる考え方を紹介します。それは、テレワーク環境下でのコミュニケーションは「ローコンテクスト前提で行うべき」というものです。
日本人は生まれながらにハイコンテクスト
「ローコンテクスト」とは低文脈を表し、「ハイコンテクスト」とは高文脈を意味します。この2つの言葉は、もともと文化人類学者のエドワード・T・ホールが提唱した概念で、 世界中の言語コミュニケーションをハイコンテクストとローコンテクストの2つに分類したものです。
ハイコンテクストとは、一言で言えば「察するコミュニケーション」です。あえて 言葉にせずとも言外の考えを理解してくれるというコミュニケーションスタイルで す。実は世界で最も代表的なハイコンテクスト言語として、日本語が挙げられています。KY = 空気が読めないといった言葉があるのも、そもそも「空気は読むもの」という前提認識があるからです。私たち日本人は、ハイコンテクストなコミュニケーションが当たり前になっているのです。
一方ローコンテクストとは、一言でいえば「説明しあうコミュニケーション」です。 しっかり言葉にしなければ相手に伝わらず、言語化された内容のみが相手に伝わるというものです。その最たる例としてドイツ語が挙げられており、英語などもローコンテクストな言語の1つとされます。Wikipediaに掲載されている比較表が非常にわかりやすいので以下にご紹介します。
▼高文脈文化と低文脈文化の比較の例 (「高・低文脈化」Wikipediaより)
テレワークでは、ハイコンテクストが機能しづらい
私たち日本人は生まれながらにハイコンテクストなコミュニケーションをとってきた訳ですが、テレワークではこの姿勢を変える必要があります。物理的に同じ職場に集まっていれば、お互いの雰囲気も何となくわかり、あえて言葉にせずとも様子を察することができます。こういった環境なら、これまで通りハイコンテクストなコミュニケーションが通用したでしょう。
ところがテレワークでは、働く場所が異なり、各々の状況も全くわかりません。言 葉にせずに様子を察して欲しいと言われても不可能です。ハイコンテクスト前提でテレワークを行っていると、以下のような課題に直面してしまいます。
●誰が何をやっているかわからない
●上司・同僚がいま何を考えているのかわからない
●連絡したけど、伝わっているのかどうかわからない
●不満・不安を持っているのか持っていないのかわからない
●言いたいことがあっても伝えづらい
近年、さまざまな場面でテレワークによるコミュニケーションの難しさが取り上げ られていますが、私はその根底にあるのは「ハイコンテクストからローコンテクストへ の切り替え」が難しいからだと考えています。
そして同時にハイコンテクストからローコンテクストへの切り替えができれば、テレワークによるコミュニケーションが必ず上手く行く様になると考えています。つまり別の角度から言うと、テレワーク時代に最も必要なコミュニケーション能力とは、ローコンテクストなコミュニケーションができる能力と定義できると考えているのです。
ローコンテクスト前提のコミュニケーション能力を身につけるには、「発信」と「反応」から
テレワークでは、これまで私たち日本人が苦手としてきた「あえて言葉にする」「しっかり伝える」というコミュニケーションスタイルが必要です。
それでは、このようなローコンテクストなコミュニケーションスタイルには、「向き、不向き」があるのでしょうか。ハイコンテクストが得意な人は、テレワークに適したローコンテクストコミュニケーションに自分を変えるのは難しいのでしょうか。私はそんな事は無いと思います。日本人であっても習熟すれば英語やドイツ語など他国の言語を流暢に扱うことができるように、ローコンテクストなコミュニケーション能力を「スキル・テクニック」として身につける事ができると考えています。
もちろん、それにはこれまでのコミュニケーションスタイルを変える必要があるため、最初から上手くできる人ばかりでは無いと思います。しかし、テレワークが当たり前になり、 さらにグローバル化が進み、職場がますます多様化する中、ローコンテクストなコミュニケーションスキルは、英語やプログラミングと同様、いやそれ以上に重要です。 ぜひ私のブログでお伝えする数々の取り組みをチームとして導入しつつ、個人としてもローコンテクストなコミュニケーション能力を高める事を心がけて頂きたいと思います。
それではここで、ローコンテクストなコミュニケーションを実現する上で、押さえるべき最も重要なポイントを紹介したいと思います。それは「発信」と「反応」です。
これまでの日本のビジネスシーンでは、わざわざは発信しなくても誰かが察してくれるという考え方がある程度通用しました。しかし、テレワークではこの考え方は通用しません。そこでまずは、「発信しなければ伝わらなくて当たり前」という考え方に変え、伝えたいことがあれば自然と自身で『発信』するというスタイルを身に着けましょう。
また、発信に対してしっかり反応しないと、伝わっていること・理解していること・ または反対意見があることなどが何も伝わりません。「既読スルー」のような状態があると、ローコンテクストなコミュニケーションは成立しません。そこで、必ず届いた発信に対して『反応』する事を必ず行う様にしましょう。
この『発信』と『反応』の 2 つを強く意識するだけで、ローコンテクストなコミュニケーション能力は格段に向上します。そしてそれはすなわち、テレワーク時代に最重要のコミュニケーション能力が向上するという事に直結していくのです。
ぜひテレワーク環境下でのコミュニケーション能力を向上させる為に、『発信』と『反応』を意識して、ローコンテキストのコミュニケーションを心がけて実践して行きましょう!
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