茅野太郎と占いの学校2
比流古島(ひるこじま)
地図にない消された孤島。
なのだが……
東京都と同じ面積で、地方都市以上に栄えている。
全国チェーンの飲食店やカフェが軒を連ね、個人経営の店も2000を超える。
各国の要人や、財界の人間、官僚や外交官も足を運ぶ。
この島に住む人間は全員国家資格を持った占い師か、もしくは占学の人間だけである。
金曜日の夕飯時。チュッパチャップスを口にくわえ、作務衣のポケットに手を突っ込んで厚底靴の踵を鳴らしながらフラフラと歩く少年が1人いた。
「占学の、茅野太郎か?」
茅野太郎と呼ばれた少年はチュッパチャップスの棒をくわえたまま、呼ばれた方向に振り向いた。
「そうだけど?」
そこにいたのは、いかにもその道のいかつい見た目と顔の丸坊主の男。
「いやぁ〜ん❤︎太郎ちゃん❤︎ 本物はやっぱりきゃわゆい〜ッ」
オネエである。
「は?」
「そのつれない反応もたまらないわぁ〜❤︎た・べ・ちゃ・い・た・い❤︎」
「急いでいるので。すみません」
茅野太郎、わずか10歳の最年少で占学の主席で入学し、現在、15歳になり、占学をあと一年で卒業する若きエースである。
ちなみに、ゲイとオネエとトランスジェンダーによくモテる。
太郎は背負っているショルダーバッグの他に、ベルトに装着しているカラビナ付きのエナメル革でできたシザーケースに、そっと手を添えた。
このシザーケースは見た目が悪いが大きめで、使い勝手がいい。占いの7つ道具が入っている。これがあればどこでも占える。
いつも肌身離さず持ち歩いていた。
「乾……」