永遠の文化祭バンドBase Ball Bearと私

2021年11月11日木曜日、研究室から定時ダッシュを決めた私は久しぶりの中央線に乗って中野サンプラザに向かっていた。

ワイヤレスイヤホンからは先日発売されたBase Ball Bearのメジャー9枚目のアルバム「DIARY KEY」が流れる。そう、この日はBase Ball Bear、通称ベボベの新譜を引っさげたツアー「DIARY KEY」の初日公演の日であり、同時にベボベの結成20周年の当日なのであった。

コロナ禍に入り有観客のライブに行くのを極端に恐れていた私は、対策が十分にとられていることをわかっていながらもなかなかライブに足を運ぶことができなかった。しかし今回このライブが開催されることを知った時、どうしても行きたいという気持ちが勝り、気付けばチケットを購入していた。実に1年10カ月ぶりの生のライブであり、生のベボベを観るのは2019年12月30日のCOUNTDOWN JAPAN以来だ。

中野サンプラザは誰もが知るような有名な会場だが私は行ったことがなかったし、そもそも中野という街にも行ったことがなかった。電車内で駅からのアクセスを調べつつ初めての会場に緊張感を覚えるという久々の感情を抱いていた。

会場前の広場に着くと、既に入場待機列ができていた。どうやらグッズの事前販売の時間には間に合わなかったらしい。ラボのコアタイムなんぞ気にせずとっとと抜け出して来たらよかったと少し後悔する。18時ごろ、入場列が動き出したのでひっそりと最後尾に並び始める。チケットはe plusの電子チケット。紙で残らないというのは少し寂しい気もするけれど転売対策にはやはり最適だし何より忘れる心配がないのが良い。中に入りチケットを自分でもぎって入場をすます。左手に物販があったのでとりあえず並ぶも、この時点でTシャツ2種は売り切れていた。ツアーの日程と会場が書かれているTシャツはなんだかんだ思い出になるのでぜひ買いたかったのだが完全に出遅れたので仕方がない。後日通販があることを祈ろう。ベボベの名物グッズともいえる歌詞タオルと、ついでに缶バッジも購入し、ファンクラブ会員特典のツアーカードもゲットした。

トイレで過去グッズのTシャツに着替え、いざホールに入る。席は1階9列目下手側、なかなか、いや、かなり良い席だ。そして予想外に客席は1席空けになっていた。最近のライブはかなり規制が緩和されてきていると聞いていたのでてっきりびっしり埋めるのかと思っていた。客席も広くかなり安心して快適に観られそうだ。そういえばホールでベボベを観るのは初めてだ。買ったばかりのタオルを開封したりパッチンバンドを腕に巻き付けたりしながら開演の19時を待つ。

開演、客席みんなが自然と立ち上がり、SEに体を揺らす。この時点でやはり席が良すぎることを再確認する。席を間引いているということもあり視界がとんでもなく広く、かなり近い位置でステージ全体を確認できる。約2年我慢した甲斐があった。メンバーが入場し、大きな拍手が起こる。この時点で声を出せないことの辛さを感じる。メンバーの名前を叫びたい欲を抑えつつ、一層拍手を強く送る。

堀之内さんのカウントから入った1曲目は、新譜の表題である「DIARY KEY」だ。ベースとドラムだけで構成されるソリッドなイントロが響く。ああ、ドラムの音ってこんなに会場に響くし、ベースの音はこんなに腹に響くんだ、そういえばライブってこんな感じだったなぁ、と久しぶりの爆音に少し涙が出そうになる。6月に配信シングルとしてリリースされた「プールサイダー」はかなり自分に重なる部分がある詞が染みる。「Just have fun!」というシンプルなフレーズがこんなにグッとくるのはやはりこの時代に伴う小出祐介氏の心境の変化に共感する部分が多いからだろう。「動くベロ」はギターのカッティングと秀逸な言葉遊びから成る面白い1曲。そしてギターソロが抜群にかっこよかった。やはり小出さんギターめっちゃ上手い、私にとってのギターヒーローといっても過言ではないなと感じた。今回のアルバムはギターソロが良い曲が多く、原始主義の私としてはとても嬉しい。そしてメジャーデビューミニアルバムの表題である「GIRL FRIEND」、アルバム収録曲で久々の関根史織ボーカル曲である「A HAPPY NEW YEAR」、2ndアルバムリード曲の「17才」と続く。勝手にこの部分は「高校生の青春ブロック」と解釈した。「ポラリス」「LOVE MATHMATICS」「悪い夏」「_touch」と新旧の曲を織り交ぜた、演奏力の高さと3ピースならではのグルーヴ感が伝わる曲が続く。「新呼吸」はちょうど10年前のアルバムの曲だが奇しくも20年目の現代の価値観、そして今回のアルバムの世界観にも非常にマッチしていた。「生活PRISM」ではゲストでvalkneeさんが登場し見事なラップの掛け合いが披露された。「新呼吸」と「生活PRISM」は特に伝えたいメッセージがリンクしているように感じた。ラスサビの「いつだってドアは半開きで」は特にグッときた。弾き語りから始まる「ドラマチック」も3人体制になって盤石の1曲となっており、会場のボルテージが最高潮に。「海へ」「ドライブ」の2曲でアルバムと同じ締めで本編が終了した。

アンコールでは20年前の文化祭ライブの1曲目で披露したというスーパーカーの「My Way」、堀之内さんのシャウトから始まるインディーズ時代の名曲「夕方ジェネレーション」、最後は「祭りのあと」で締めくくられた。

アルバム「DIARY KEY」は明確なコンセプトアルバムであるとしながらも、そのコンセプトについては敢えて歌っていない、逆にそれ以外を全て歌うことでそのコンセプトが浮かび上がるという不思議な仕掛けをしたアルバムということもあり、今回のライブのセットリストもそれに沿ったもので、さらに結成20周年ということで昔の曲も織り込まれた大満足のライブだった。アルバムのコンセプトについてだが、明確な正解が示されていないためあくまで私自身の、現在のところでの考えではあるが「先が見えない不安感とそれにより生じる死への恐怖感、そしてそれに対峙しながら生きていくこと」なのではないか。特にこの曲のこの部分の詞がこうだからこう考えた、というようなものはないのだがアルバムを聞くとこのようなものが感じられた。

約2年ぶりに生でライブを観た私はまるで初めてライブを観たかのような感じがしていた。特に2015年、今から6年前、地元長野県の小さなライブハウスで初めてベボベを観た日のことを痛烈に思い出していた。耳がおかしくなるくらいの全身に感じる爆音、真っすぐ伝わるメッセージ、それを共有する会場の一体感、、、東京のホールと地方のライブハウス、当時と全く異なる状況ではあったが同じ初期衝動のようなものを感じた。兄の影響でベボベを聞き始めた中学時代から、ずっと私にとっての青春であり続けるベボベ。これからも変わらずにずっと青春を鳴らし続けてくれるのだろう。

帰りに最寄り駅のラーメン屋によったら有線で「DIARY KEY」が流れていた。改めてBase Ball Bear結成20周年おめでとうございました。

P.S. アルバム内でいちばん好きな「Henshin」は聞くことができなかったのでいつかライブで演ってくれることに期待です。




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