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私のサビアン物語 雲の向こう
僕は雲の世界に生まれた。
ここには、言葉はない。
僕は、僕たちは、一人でみんな、みんなで一人。
僕が思ったこと、考えたことは、みんなにも伝わる。
雲の上だったら、一瞬で、どこへでも行きたい時に、
行きたい場所に行くこともできる。
だけど、僕は雲の向こうを見てみたかった。
それがあるのかどうかわからないけれど、
雲の向こうに行ってみたかった。
僕は飛行機に乗って旅立った。
どこまで行っても、雲、雲、雲。
不安になりかけたころ、急に周囲が真っ暗になり、強い光に包まれる。
我に返り、遠くに目をやると、七つの光が僕を導くように瞬いている。
ついに僕は雲の向こうに来たんだ!
目が覚めると、僕は暗い部屋に閉じ込められていた。
ここはどこなんだろう?
念を送っても誰も返してくれない。
おかしい、誰もいないのだろうか?
しばらくすると、徐々に明るくなってきた。
この世界には、暗い時間と明るい時間があるようだ。
何やら高音を発する人が、食事を運んできてくれた。
この世界には、いろいろな形の生き物がいる。
僕は飽きることなく眺めていた。
人とはいまだにコミュニケーションがとれなかったが、
他の生き物とは、雲の世界と同じように、気持ちのやり取りができた。
僕に初めての友達ができた!
雲みたいにもこもこしていて、とても親しみが湧く。
遊びを通して、人とも徐々に仲良くなっていった。
そして、みんな重い荷物を背負って運んでいることに気づいた。
僕は乗ってきた飛行機で荷物を運ぶ手伝いをすることにした。
僕は言葉を覚えて、話せるようになってきた。
でも、念でやり取りするより、言葉は何倍も難しい。
気持ちがちゃんと見える言葉を、僕は使っていこうと思う。
だって、この気持ちを彼女に受け取ってほしいから。
そして、彼女が心のヴェールを、
僕の前では安心して外せる日が来ますように。