愿以山河聘26(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】
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第二十六章リンク
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翻訳
夢の話
姫越は振り返った。鳳眼は暗く翳り、危険な色が覗いた。口調は返って水のように穏やかになった:「ああ?お前は私をどうやって殺すつもりだ?」
衛斂は話すのを止め、こんこんと眠った。呼吸がいつまでも続く。
姫越は我慢出来ずに、表情は徐々に氷のように冷たくなり、青年の細い首を絞めつけた。
力はきつくなり、今にも殺しかねない。
彼は悪事を画策する者を身近に置くことはない。既に衛斂が殺意を持って近づいたことは分かったので、いくら興味深い者であろうと、やはり傍に置くことは出来なかった。
眠っている青年の顔はすぐに赤くなり、苦しそうな表情で藻掻きながら言った:「は、放して──」
姫越の眼は一瞬激しく揺らぎ、無意識に手を緩めた。その後、表情は更に水のように沈んだ。
……手を下せなかった。
「姫越!」衛斂は眉を緩め、体を丸めてうわ言を言った。「どうしていつも私を苛めるんですか……夢の中でまで放っておいてくれない。」
姫越は冷たく言った:「お前は私を殺したいんだろう。それなのに何故、私に優しくして欲しいんだ?」
姫越は話し終わった後、馬鹿らしくなった。
……人事不省の酔っ払いにこんなことを言ってどうなる?
青年が彼を殺したいというのを聞いた時、心がぎゅっと引き絞られるような思いがしたことを姫越は認めなかった。
針で刺すような痛み。
何故痛むのだろうか?
とうに知っていたはずだ。子供の頃から成長するまで、彼の傍にいて好意的だった者には全て目的と計算があり、彼の命を狙っていた。
彼に言わせれば、人の心は阿萌のような一匹の犬程にも信じるに足りない。
目的を持って近づく者にはとっくに慣れていた。長い間、無関心に現実を受け入れてきた。表情や声に出すことなく、全ての人を遠ざけることをもう学んでいる。なのに、まだこんな痛みを感じるのは何故だろう?
彼を殺したい人間は多い。衛斂が初めてではないし、最後の一人でも絶対にあり得ない。
しかし、唯一この人には姫越は手を下すことが出来ない。
それは彼に「あなたの何を恐れるのか」と言うことが出来た人。それは彼にふざけて自然で気ままな態度を見せる人。それは彼と七局対局して引き分けることが出来る人。それは混迷する世界の中で雪のように澄み切った人だ。
衛斂は他の人間とは違う。
彼は思ったのだ。衛斂は他の人間とは違う。
青年は氷雪のように清く冷たく透き通り、それでいて強い日差しのように暖かく。常に凍り付いていた姫越の心に一筋のひびを入れた。
今、容易く開くことの無い一筋のひびは、「あなたを殺さないようじゃ、私の名は斂とは言えない。」の一言で再び閉じられてしまった。
―
姫越は低い声で言った:「つまり……お前も彼らと何も変わらない。」
牀榻の上の青年は静かに眠り、姫越の話を聞いていなかった。
姫越はゆっくりと寝台の端に腰を下ろし、衛斂の完璧に美しい顔をそっと撫でた:「衛邦(楚王)はお前に私を殺させようとして、ここへ寄越したのか?」
彼は衛斂が答えることは望んでいなかった。衛斂がもごもごと口を開くとは思わなかった:「あの馬鹿王が……私に指図する資格がありますか?」
姫越は少し驚いて、ほとんど衛斂がもう酔いが冷めたのかと思った。
しかしもう一度見てみると、青年はまだぐっすり眠っており、おそらく彼の問いを夢だと思っているらしかった。
これは質問に答えさせる良い機会だ。
姫越は試しに質問してみた:「お前は自分の父を──馬鹿王と呼んでいるのか?」
「あれを父王と呼べますか?」衛斂はもごもごと小声で話した。「あいつは私にあなたを殺すよう言った……でも断りました。あいつは自分を何様だと思っているんだ?殺せと言えば私が殺すと?私をなんだと思っている。」
姫越:「……」
「それに、私はあなたに何の恨みもないのに、どうして殺さなきゃいけないんだ。」衛斂はつぶやいた。「あなたといれば、美味しいものを食べて贅沢に暮らせる。わざわざ自分から苦しい目に遭いに行くなんて、頭がおかしいだろ……」
姫越の眼は冷えた:「それはどうもありがとうと言うべきか。」
衛斂の心の中では彼はそのような、利、用、価、値 があるらしい。
同時に安心した。
口角が上がるのを抑えられない。とても嬉しい気分になった。
衛斂はそもそも彼を殺そうは思っていなかったのだ。
……ちょっと待て。元々彼を殺そうと思っていなかったのに、今はどうして殺したいと思っているんだ?
姫越はこの質問をし、衛斂の答えをじっと待った。
今回衛斂はずいぶん長く黙っていたので、姫越は彼が眠ってしまったのかと思い始めた。
衛斂は突然ぶつぶつ言った:「姫越、夢の中ではよく喋りますね。外では仕えるのがあんなに難しいのに。」
姫越は引きつった笑みを浮かべた:「お前は私にこんな態度なのに?」
衛斂が夢の中で彼を名前で呼ぶことはもう気にしていなかった。
姫越は衛斂を最大限に寛容に扱っているつもりだ。衛斂以外に誰が彼の前でこのようにやりたい放題をして咎められずに居られるだろう。
勿論、他の者は決して無礼を働いたりはしない。
「なら、私にどう思わせたいんですか!」衛斂はこう言うと眉を顰め、とても怒った様子を見せた。怒りの余り起き上がり、ぼんやりと曇った目を半分開いた。
突然起き上がったので、姫越は驚いてびくっとした。
雪のように白い顔の青年ははっきりとは醒めていなかったが、半分非難し半分不満そうに彼を見た:「分かってないのはどっちですか?」
「あなたは以前は公子だったけど、私だってそうです!」
「どうしていつも私を罰して跪かせるんですか。雪の中で跪かせたり、床の上で跪かせたり、首を絞めたり、毒を飲ませたり。すぐ舌を切らせようとするし。」
青年は小さな声で訴えた:「すごく痛かった。」
彼の美しい瞳は憎々し気に姫越を睨みつけた。酔いが回ってぼんやりとした声は、とてつもなく酷い扱いをされたかのような不満で一杯だった:「殺してやりたいくらい、痛かったんです。」
姫越は睨まれて少し申し訳なくなった。
これらの事を行った時には何も思っていなかったのだが、衛斂の口から一気に並べたてられると、誰が聞いてもおそらく彼を下種野郎だと思うことだろう。
「痛いのはすごく怖い。」衛斂は突然力が抜けたように体を前に倒して、姫越の肩に凭れ掛かった。疲れ切ったように目を閉じ、声は聞こえないほど小さくなった。
「子供の頃……衛焦(衛斂の三番目の兄)と喧嘩したことがあって。あいつは私を母無し子と罵ったから、お前の方が母無し子だと言い返しました。李夫人(衛焦の母)はそれを聞いて、私を雪の中に跪かせました……」彼は囁いた。「一晩中。」
「あなたよりもずっと残酷だった。」
姫越は懐にいる青年を倒れないようにしっかり支えてやりながら、不意に哀れみを感じた。
彼は不遇だったが、衛斂も同じだ。
彼の子供時代は冷宮で貧しい暮らしだったが、母が傍にいて後宮の争いごとからは遠ざけられていた。衛斂は早くに母を亡くし、厳しい宮殿の奥で一人で育った。
彼は衛斂を胸に抱き締めて、小さな声で宥めてやった:「もうお前を罰したりしないから。」
それから少し間を開けて、不満げに言った:「だから王を殺そうなんて考えてはいけない。」
衛斂は彼の胸の中に凭れて、仰ぎ見た。目は雪のように清らかに澄み切っていた:「約束ですよ。」
姫越は目を伏せた:「王に二言はない。」
衛斂はじっと彼を見つめている。
姫越は珍しく少し緊張した。
これは……酔いが冷めたのか?
衛斂は突然力を込めて彼を突き倒し、彼の上に跨った。
乱暴に姫越の体をまさぐる。その目は輝きながらもぼんやりしていた。
姫越の心臓がどきりと高鳴る。
青年の長い髪が落ちかかり、彼の髪と絡まった。
二人の髪が絡まり合うことは、彼らの気持ちが絡み始めることを意味すると言われている。
「どうせこれは夢なんだから……」衛斂は姫越の服を引っ張りながら独り言を言った。「恥をかかされたから、やり返さないと。三回もしなくていいけど、一回はしないと。」
姫越は不意を突かれてなす術なく寝台の上に押し付けられ、頭の中が一瞬真っ白になった。
な、何をやり返す気だ?
姫越には李福全のことを思い出してあげて欲しい……十二年も忠実に仕えてるしあんなに心配してくれているのに……
分からなかった所
谁还不是个宝宝了?:「誰がまだ赤ちゃんではないのか?」これ意味が分かりません。
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