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愿以山河聘1(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】
前書
普江文学城に掲載されている中華BL小説「愿以山河聘」(作者:浮白曲)の素人翻訳です。無料公開分(1~28章)のみ翻訳します。
公式の日本語翻訳決定等々、何かあれば削除します。
この作品を知らない方、是非三章まで読んでみてください……!二章まではまだ話が始まってもいません。無料部分の話は完全にラブコメです!
(本編では)神仙は出てこないし、転生もしないし、物語に入っちゃったりもしないタイプの中華ファンタジー時代劇です。でもナチュラルに軽功(ぴょーんとすごい長距離を飛んだり)を使ったり内功(筋肉ではないパワー)とかいう概念などは出てきます。魔道祖師で中華BLを知り、こういう長い髪で着物着た人達のBLをもっと読みたいとぼんやり思って探していたら出会いました。
中国語を勉強し始めたばかりで機械翻訳に大いに頼っているため、誤訳が沢山あるかと思います。
調べても意味が分からないままだった箇所は、意味の分からない日本語になっています。
意訳しているところもありますが、加減が分からないのでやり過ぎているかもしれません。
一人称をかなり勝手に訳しています。姫越の一人称は「孤」ですが、余りに馴染みがなかったので「私」にしたり、「奴」や「婢」も「奴婢」にしたり等。無料分には出てきませんが、後に姫越が意図して「我」を使う場面もあったりしたので良くなかったかもと思っています。
ところでこの作品、何かもっと簡単な通称みたいなものはないのでしょうか?初めと終わりの漢字が難しいので「以山河」とか。
あらすじ
ざっくり紹介
ざっくり紹介と出会いの部分あたりだけ纏めました
普江文学城の中華BL「愿以山河聘」にはまっているのですが、検索してもあまり情報が出てこなくて悲しい
— pooh p (@poohp51596544) March 2, 2024
無料範囲だけ翻訳していっていますhttps://t.co/rhvPpRypuj
タイトルは「国を以て君を娶りたい」みたいな意味です#愿以山河聘 #願以山河聘 pic.twitter.com/VDdHVCyqqw
あらすじ
敗戦に伴い人質として敵国である秦国へやって来た楚国の公子衛斂と、暴君として知られる秦国国王姫越のお話です。
敗戦国から来た人質の衛斂は最初は苛められますが、おとなしくやられっぱなしでいる性格ではないので何とか秦王に取り入って生活改善を目論みます。そして、家臣たちからの「早く結婚しろ」攻撃にウンザリしている姫越(二十一歳、童貞)の「お気に入りの側室」のフリをすることで、姫越は結婚について保留することが出来、衛斂は生活が改善されるというWinWinの関係になります。初めは確かにフリだったのですが、やがてお互い惹かれ合っていくことになります。
有料の範囲になりますが、その後シリアス展開もありつつ、舞台は王宮の外へ、更に秦国の外へ広がっていって壮大な結末を迎えます。
衛斂の腹黒さと姫越の純情っぷりが物凄く楽しいです。姫越は登場時は恐怖の大王のようだったのに、出会って三日目にはもう衛斂が素を出して太々しく振舞っても咎めることもしなくなっていたり、思い出したように反撃しようとしては返り討ちに会ったり。かと思えば思いがけず衛斂がぽろっと弱みを曝け出してしまったり。
美貌も頭脳もずば抜けていて何でも出来るくせに不器用な二人がお互いに惹かれ合い、気持ちを認めていく過程が描かれます。
本家リンク
愿以山河聘リンク
第一章リンク
翻訳
人質
秦昶王十二年、冬。
窓の外にははらはらと雪が舞い落ちている。
冷たい空気が立ち込め、宮道の上にいる宮人達は分厚く重い冬服を着て雪を搔いていた。時々手のひらをこすり合わせ、しきりに白い息を吐く。
もうすぐ開きそうな梅の花に霜が降り、枝がわずかに撓み下がっている。
部屋の中も余り暖かいというわけではなかった。炉の炭はとうに燃え尽きていた。寒さは骨身に沁み手足を固く強張らせる。
雪のように白い狐の毛皮を着た青年が窓辺に座っている。手に持っている茶は元は熱かったが窓からの雪風に吹かれて冷たくなってしまった。細く長い手の指は玉のようで、関節がくっきりと際立ち、とても美しい。
長寿が気を使いながら尋ねる:「公子、外は寒いです。窓を閉めさせて頂きましょうか。」
青年はこれを聞いて、顔を向けた。顔立ちは端正で美しく、比べるものがないほどだ。
七国一の美人と称される燕国の重貨公主も彼を見れば恥じ入ってしまうだろう。傾城の美貌もこの男の容姿には及ばない。
衛斂は笑って言った:「窓が開いていれば、私はまだ故国の雪を見ることができる。閉めてしまえばもう見ることができない。」
彼の声は穏やかで玉のように涼やかだ。顔にはまだ笑いの名残りがあった。誰が見ても優雅に雪を鑑賞する紛うことなき貴公子だ。
長寿はこれを聞いて鼻がツンとし、涙がこぼれそうになった。
楚国は雪が多い。公子は故郷を想っているのだ。
秦国の人質として公子は一生を過ごすことになるかもしれない……二度と帰ることはできないかもしれない。
公子は十九歳、残りの歳月を全て異国で費やすことになる。
長寿は目頭の涙を指で拭い、声を詰まらせながら言った:「公子、お体をご自愛ください。風邪でもひかれたら大変です……」
秦の者は公子の為に医者の一人も呼んではくれないだろう。
公子は楚国の王族なのに、このような境遇に落ちてしまった。
ー
現在天下は七分されている。秦、楚、燕、魯、梁、陳、夏の七国でそれぞれに王がいる。
秦昶王姫越は九歳で王位に就き、既に十二年が経過した。勇敢で戦に長けており、また野心家でもある。暴虐と冷酷さで聞こえていた。
在位十二年にして九回の戦争を起こし、無数の都市を併合し、五国を服従させて毎年貢納を課した。
七か国最弱の夏国は危うく滅亡する所だった。
楚国は強国であり、秦と長年戦争を続けている。他の五国は既に降伏し、現在ただ楚国だけが抵抗を続けていた。
残念ながら今回の燕岭の戦いで秦は楚の三重の防衛壁を突破し、楚は大敗を喫した。
存亡の危機に陥った楚国は公子斂を秦国へ人質として送り、またその他にも金銀財宝、織物、馬を捧げて服従を示した。
人質と言っても、実質的には死刑だ。秦と楚は長年にわたり交戦してきたため、双方の恨みは深い。楚国の公子が秦国に入れば、虎の口に羊が入るようなもの。すぐさま引き裂かれ打ちのめされ絞め殺されると考えるのはごく当然のことだ。
彼は楚国の捨て石だった。
衛斂の生母は宮女に過ぎず、彼を産んですぐに亡くなった。彼は公子の地位にありながら、人の情の裏表を十分に経験してきた。自分の運命についても早くからはっきりと理解していた。
楚国の使者が都に入っても秦王の迎えはなく、ただ一言の伝言が残されていた:「公子斂は残り、他の者は帰国せよ。接見する気はない。」
こうして楚国の臣下は去り、衛斂は留め置かれた。
共に残ったのは子供の頃から傍に仕えている長生と長寿のみだった。
衛斂は宿で二日間待ったが、召喚に関する何の知らせも届かなかった。
彼は悠然と花を活け茶を点てて過ごしたが、長生と長寿は落ち着いていられず、長生はこんなことまで言った:「公子、逃げましょう。」
二人の腹心、長寿は機敏で話も面白く、いつもは茶や水を出したり、傍について身の回りの世話をし、衛斂はしょっちゅう彼をからかっている。衛斂は彼に心を許して仲良くしていた。長生は武道に優れ、男らしく寡黙で、衛斂に対しても敬意を持って接し、決して分を超えるような振る舞いをしない。そのために却って安心して本当に大事な事を任せることができるのだった。
この世界でおそらく長生だけが、繊細で弱弱しく見える公子斂が実は彼よりも武芸に長けていることを知っていた。秦国から逃げたいと思うのなら、不可能ではない。
「逃げる?」衛斂は無造作に花の枝を切り落とした。「どこへ逃げられるというんだ?」
「天下は広いのです。永平(滞在している都市の名前。秦国首都)を離れれば、公子はどこへでも自由へ行けるではありませんか?公子の腕でしたら、逃げられないことはないでしょう!」
「天下に王の土地ではない場所はない。」衛斂は美しい形になるよう花枝を切り落とし、満足そうに鋏を下ろした。「たとえ永平から逃げられたとしても、この秦国から逃れることは出来ない。秦国を出ても秦王の命が一声下れば、六国は私を罪人として捕らえようとするだろう。母国も例外ではない。一方はただの楚国の公子、一方は百万の兵を統べる秦王。長生、彼らは誰を討ち、誰を喜ばせるべきか分かっている。」
長生はこれを聞いて、無力感が湧き上がってくるのを感じた:「でも公子……逃げなければ死ぬことになります……秦王からはこの二日間何の音沙汰もありませんが、秦国民の楚国民へ対する怒りを鎮める為にあなたを処刑するよう、明日にでも命が下るかもしれません。」
衛斂は静かに言った:「そうなれば死ぬまでだ。」
長生は唖然とした:「何ですって。」
「凌遅刑だろうと、車裂きだろうと、慈悲深くも秦王が毒酒の杯を下賜されようと、」
衛斂は目を上げ、笑いながら言った。「いずれにせよ、死は死だ。何を恐れる?」
長生は目を伏せた:「公子は明らかに……座して死を待つような方ではありません。」
「長生、」衛斂は微笑んだ。「私は逃げることが出来るさ。だが、私が逃げてしまえば、楚国はどうなる?」
長生は怒って言った:「楚国は既にあなたを見捨てました。何を気かけてやる必要がありますか!」
「実際、私は名残惜しく思ってなどいない。楚国の王宮と秦国どちらも同じ。暖かい情など全くない。」衛斂は軽く首を振る。「楚国は停戦のために私を送り込んだ。もし私が逃げ出せば、秦王は激怒し、再び戦となるだろう。そうなれば楚国の幾千万の兵士と民が死ぬことになる。私ひとりの命を彼らの数千万の命と引き換えに出来るなら、その価値はある。」
長生は言葉を失った。しばらく後、深く跪いて楚国式の礼を送った。
衛斂はくすっと笑いながら言う:「私はまだ死んでいないよ。そんな風に私をあの世へ見送るような真似をする必要はあるか?そこまで悪いことにはならないかもしれない。」
──三日目、秦王の命が下された。処刑ではなかったが、しかし……衛斂を「侍君」として後宮入りさせるとのことだった。
侍君とは何か……?
秦王は二十一歳で、毎年のように行われる出征と領土拡大に忙しく、後宮は形ばかりのものとなっていた。王妃は未だおらず、側室の一人すらいない。
今回初めて後宮に美人が入ることになったが……男性だ。
後宮の身分は「王妃」の下に四人の「妃」と三人の「夫人」の位があり、その下の「姫妾」は数に限りがない。「侍君」とは何か?そのような身分は無く、姫妾と同等だ。
ただの側室。
これは酷い侮辱だった。──楚国の公子であろうと、秦国に来ればただの男妾でありただの玩具に過ぎない。
秦国の大臣は当然そう解釈したので、国王陛下が男性を後宮へ入れることに異論はなかった。むしろ賞賛すらした。死刑は酷刑だが、ひとりの男性を女性のように従わせることは死刑よりも更に酷い苦痛に違いない。
陛下は真に英明なり。
長生と長寿にとっては晴天の霹靂だった。長寿は目を真っ赤にして言った:「公子、あなたをこのように貶めるなど秦王は人としてあり得えません!」
衛斂は言った:「すごく良かったじゃないか?命は助かったんだし。」
長寿は泣き叫んだ:「こんな風に生き続けるなら死んだ方がマシです!」
衛斂:「そう言うな。私はまだ生きていたい。」
そうして衛斂は後宮に入った。
宮中の者は皆、陛下が侍君という位に封じたのは恩寵ではなく侮辱の為だと承知しており、衛斂に対しては当然良い顔をしなかった。半月経っても秦王のお召がなかったので、皆は衛斂の地位が低いことを確信した。
身の回りの世話をする宮人は与えられなかったので、衛斂と長生長寿の三人は気ままに過ごしていた。食事は粗末でかろうじて腐ってはいない程度だったが、我慢して飲み込んだ。ただ、冬をやり過ごすのは厳しかった。
冬の寒さが佳境に入ったが、衛斂の宮には女官に割り当てられるほどの炭も貰えず、分厚い布団もなく、ただ薄い布団が一枚あるだけだった。衛斂が武道で鍛えられていない普通の男であったなら、この厳冬を乗り越えることは出来なかっただろう。
長寿は内務府に掛け合ってみたが、嘲笑され追い出されるだけだった。
ただ日々を送るのさえ非常に難しかった。
「公子、お茶が冷めました。取り替えましょう。」
長寿はまだ十八歳だが、よく気がつく。青竹閣に送られてくる茶は下等で不味いので、飲むためではなく手を温めるために使っていた。
衛斂はふと彼を見て目を止めた:「手をどうした?」
長寿は慌てて袖の中へ手を引っ込めたが、衛斂は腕を掴んだ。
指が腫れあがり霜焼けになっていた。
衛斂と長生は武功のおかげで寒さに強いが、長寿はそうではない。
長寿は慌てて言った:「公子、大したことはありませんから……」
「まだ少し軟膏がある。」衛斂は目を伏せた。「寝台の三番目の引き出しにある。とりあえずそれを使いなさい。」
長寿は首を振った:「いけません、公子。あの軟膏はご自分で使う為に取っておいてください。太医院は私たちを助けてはくれません。軟膏は大切に使う必要がありますので、私などに使うことはできません。」
「黙りなさい、命令だ。」衛斂は異議を許さなかった。「早く行きなさい。」
長寿は口をつぐんで、泣きたいのか泣きたくないのか分からない様子で一礼すると軟膏を取りに行った。
衛斂は冷めきった茶を見つめ、しばらく呆然とした。
そして、立ち上がると窓を閉めた。
室内はわずかに暖かくなった。
長生は戻ってきて窓が閉まっているのを見て、強く感じ入った。
公子は彼が寒くないようにと配慮してくれたのだ。
窓を閉めたからといって室内が大して暖かくなるわけでもなく、依然として骨に沁みるほどの寒さだ。
しかし長寿は心のどこかが暖かくなったのを感じた。
―
夕飯はいつもの通り三人一緒に食べる。
異国で困難な立場にあることから、衛斂は主従の区別をあまり分けず、二人を同じ食卓に招いて食事をしていた。長生と長寿は初めのうちは堅苦しく畏まっていたが、時が経つうちに徐々に慣れてきていた。
このような状況なので、食事を誰かが運んでくれることもなく自分達で受け取りに行く必要があった。いつも受け取るのは饅頭が少しと冷めた麺だったが、衛斂はまったく苦にせず受け入れていた。
今日は長寿は目を真っ赤にして帰ってきた。
「どうしてまた泣いているんだ?」
長生は眉をひそめた。
「御膳房の者達がまた苛めたのか?」
「来るのが遅すぎたと言って、これしかくれなかった……でも一番早く行ったのに!」
長寿はやり切れないといった様子だった。
「こんなもの公子に差し上げられない!」
長生が蓋を開けてみると腐った匂いが鼻を突き、すぐに蓋を戻した。
秦人は公子をますます迫害するようになり、嫌がらせは食事にまで及んできた。
「言語道断だ!」
長生は歯噛みした。
「私が行って奴らを探して──」
「誰を探しに行くんだ?」
衛斂は部屋から出て、二人の従者が扉の傍に立っているのを見た。
長生と長寿は固まった。
衛斂は食事の入った箱を見た。開けてみると残飯が目に入り悪臭が鼻を突いた。
表情を変えることなく蓋を戻すと、やや冷ややかに言った:「これは食べられない。」
長寿は泣きたかったが涙は出なかった:「公子、彼らがこのようなことを続けるなら、私達は食事も出来なくなってしまいます。」
衛斂は静かにため息をついた:「私に好意を持っていないとはいえ、ここまで見下げられるとは。」
「私は大人しくし過ぎた。入宮から半月、まだ秦王がどのような方なのか分からない。このままではいけない。」
衛斂は低く呟き、突然言った。
「長寿、お前は私の見目が良いと言ったな、秦王に気に入られる可能性は高いと思うか?」
長寿:「……」
長寿は泣き叫んだ:「公子、秦王に身を任せるだなんてそんなこといけません!」
長生も耐えがたいという様子を見せた。
人は殺されることはあっても辱められることはあってはならない。公子は王族の血筋なのに、どうしてそんなことが出来ようか……
「私は不当な扱いは受けない。」衛斂はゆっくりと振り返った。「人は皆良い人生を送りたいと思っているし、私もそうだ。」
「さっさと死ぬか、まともに生きるかだ。このような惨めな扱いを受ける気はない。」
分からなかった所
食盒:食事を入れて持ち運びする箱というのは分かりますが、いい日本語が分かりません。岡持だとラーメン屋の出前みたいなので、他の言葉はないかなと思ったのですが。何となく誤魔化しました。