見出し画像

お気に入りのリュックと、寄り道のフロート

 着るものに迷う時期になってきた。朝も肌寒いこともあるので、白湯で目を覚ます。白湯なんて、去年まで飲んだことすらなかったのに。白湯なくしては、生活できない年頃になってしまった。

 夏が終わるということは、私の大好物のアイスコーヒーが飲めなくなるということ。涼しい秋は大好きだけど、これは寂しい。夏の昼間に飲む苦くてすっきりとしたアイスコーヒーこそ、人生の楽しみ。
 そこで今日は仕事で午後休が取れたので、帰りにアイスコーヒーを飲みに行った。飲めなくなる前に、行っておかないとね。以前仕事帰りに寄った喫茶店がとても素敵な雰囲気で気に入ったので、足を伸ばしてみた。
 お店に入ってメニューを見ると、コーヒーフロートという文字が目に入った。喫茶店のコーヒーフロートって、美味しいですよね。思わず惹かれて注文。とても美味しかった!最近は読書習慣なので、持参した新書を飲みながらコーヒーフロートをぐびぐび。冷たい甘さのバニラアイスを、すっきりとした苦味のコーヒーに沈めて飲むとアフォガードのようになって美味しい。アイスの溶けたコーヒーも、シロップよりまろやかな甘味が感じられて好きなのだ。あっという間に飲み終わってしまった。

 ところで最近、特に狙ってやっているわけではないけれど、「昔のものを慈しむキャンペーン」を密かに実施している。きっかけはやはり、Galileo Galileiの再結成だ。実は私、Galileo Galileiを小学生の頃から大学生までずっと追いかけていた。ラジオや雑誌、ライブハウスやCDなどなど10代の私に多大な影響を与えたバンドで、メジャーデビューやCDの発売、メンバーが増えたり減ったり、しかも解散するまでもしかと見届けたとても思い入れがあるバンドなのだ。夏の終わりぐらいに思い出したように聴き返すようになり、あまりの名曲の多さに驚いてしまった。思わず昔のアルバムを片っ端から聴き返してみると、胸に刺さること刺さること‥でも不思議なことに、昔はやっていた曲を耳にした時の思い出が頭を駆け巡る感覚が全くなくて、むしろ新しい良いバンドを発見したような感覚なのだ。解散してから全く聴かなくなってしまったから、その期間に回想する思い出すら無くなってしまったのかもしれない。本当に不思議で、少女の時代は彼らなしでは生きていけないような生活を送っていたはずだったのに、あの時の自分の心のありようは今ではもう、思い出せないのだ。

 そんなこんなで、エモエモな気持ちを持て余していたら、なんと再結成するというニュースが飛び込んできたので驚いた!!新しい曲も知らない間に出ていたので聴いてみると本当に良くて、特に「色彩」という曲を聴いた時は涙が出てしまった。彼らの音楽は、休日に1人でいる部屋の中に差し込む太陽光みたいだ。胸がほんのりあたたかくなって、少し切ない気持ちになる。夜1人で長風呂をするときや、長く感じられた平日の帰り道に聴くと穏やかな気持ちになれる。もちろん読書も捗る。まさか小学校の頃好きになったバンドに、30代を目前にして救われるとは。人生とは不思議だ。

「好きだった歌が響かなくなったな 誰のせいでもない 僕のせいでもないんだろう」

Galileo Galilei「夏空」

 この曲を初めて聴いた中学生の私は、「Galileoの曲が響かなくなることなんて絶対ないのに!」と思っていたと思う。確かに、ベッドの下に入れられたおもちゃのように忘れていることにも気づかなかくなってしまった時もあった。でもその時も決して響かなくなったんじゃなかった、いつか再会したときのために、寄り道をしていただけなのだ。だからこうしてまた再会したときに、こんなにも響くことができたんだと思う。素晴らしいものはずっと素晴らしい。素晴らしい文化は古典のようにずっと残るし、きっとまた出会える。

 また、私は最近大学生の頃使っていたキャスキッドソンのリュックを背負って外出するようになった。大学生の頃、アルバイトして買ったあのリュックにはゴージャスな花柄がプリントしてあるので、まさか30歳を目前にして使うようになるとは思っていなかったけれど。でもとっても気に入っている。良いものはずっといい。これからたくさん年をとって行くと思うけど、私は自分が気にいったものを贅沢に楽しんでいきたい。「ぽいもの」「はやっているもの」「みんなやっているもの」ではなくて、本質的に好きなものを趣向していきたい。
 Galileoを探してラジオの前に齧り付いていた少女の私はもういないけど、喫茶店でコーヒーフロートを飲みながら聴くGalileoもぜんぜん悪くない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?