ep21.金魚のフン
ヴァージン教は他のスピリチュアル詐欺に比べれば息が長く、勢力も広かった。テレビに取り上げられたのがその理由で、教祖やNO2が取り上げられた最初の媒体は、全て麻奈の古巣のテレビ局だった。全て麻奈が斡旋した。スピリチュアル詐欺があれほど広がったのは、麻奈の責任だと言っても過言ではない。
自分のお友達を取り上げてもらうように画策し、詐欺グループに稼がせて恩を売る。出版社にも顔がきくから書籍化も取り持つ。麻奈がヴァージン教の広告塔と呼ばれる所以だ。
麻奈はヴァージン教が詐欺グループだと知った後も彼らの活動をサポートし、詐欺に加担し続けた。自分が良ければ全て良しとばかりに、罪悪感は微塵もなかったろう。今、彼女が自ら詐欺をしたとして、何を驚くことがあろうか。
小雪がハレブロで稼いだのもそうで、キャラクターとして弱ければ自分がハレブロで押し上げればいい。麻奈は自身の知名度とコネを使い、無名の人間を金の卵にするノウハウを持っていた。
マコトのときは積み上げたノウハウを流用しただけで、しかも今度は自分が共に行動して夫婦で共演までするのだ。麻奈にしてみれば失敗のしようのない、簡単なお仕事のはずだった。
しかし、数年前とは状況は変わっていた。すでに第一線を退いた元局アナのアラフォーで、夫婦揃って特筆すべき点はなし。話題性により有名な番組を一巡こそできたが、二の矢がない。麻奈だけはその後もちょこちょこ単発の仕事はあったが、夫にタレントとしての仕事なんてあるはずがない。
マコトの気持ちはどうだったか。麻奈のバーターとは言え有名な番組に出演し、有名人と肩を並べてブログでも稼げるようになった。これが本当の俺だとばかりに有頂天だったろう。身の程を知らないアンポンタンに、調子に乗るなと言うのは無理がある。
一文無しから高収入に。無名から有名に。無職の詐欺師が有名人を妻に持つタレントに。徐々に成り上がったわけじゃなく、急激に環境が変化した。勘違いしても無理はない。
優しい夫がモラハラ夫に豹変するきっかけは、たいてい出世などで夫に自信がついたときだ。金やら地位やら暴力やらで弱い自分を覆い隠す。無能な上司がしばしばハラスメントで問題になるのにも通ずるメカニズム。
夫のDVはたいてい妻に向く。しかし麻奈とマコトの場合は、普通の「稼ぐ夫&専業主婦」とは違う。パワーバランスは麻奈が遥かに上だ。
ちなみに、モラハラするような人は外面が良いから騙される人も多いけど、「謝れない」という特徴だけは最初から最後まで一貫している。こういう人種が他人に対してだけ執拗に謝罪を要求するのは、謝罪というものが自分にとってそれほど屈辱的でハードルが高いこということに他ならない。
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