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コンセンサス調査&分析 2021年3月号

Summary
景気循環のコンセンサスは当面現状トレンドを維持すると予想。その間の株価予想は27,000円から30,000円のレンジを形成すると見る。2月号と同様、回復ステージ織り込みすぎと自信過剰相場を根拠に調整を予想するも、過剰流動性相場が継続していることやFEDの前倒し利上げ期待は行き過ぎとのこと考慮し、レンジ形成と予想する。レンジ上限突破には次の景気循環ステージの織り込みが必要とみる。

目次
①3月アンケート結果
②現在の景気循環ステージの考査
③今後のコンセンサスの行方
④株価方向の予想
⑤2月金利上昇のbreakdownとGrowth&Valueの考え方
⑥最後に

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①3月アンケート結果
 今回のアンケートは2月から大きな変化はございません。まず景気循環は2月の予想通り、「回復」の割合が前回の42.3%から5割近くまで上昇し「後退」と「不況」が前回の合わせて39.5%から3割以下に減少という結果となりました。
 次に経済指標ですが、「Interest rate」が前回の40.8%から57.6%と再び大幅に上昇しております。「Money supply」と「Job related numbers」は前回と大きな差はございません。金利上昇への関心が高まっていることから今回レポートでは私なりの解釈を説明できればと思います。後程項目⑤でご紹介いたします。
 アセットクラスアンケート結果はアップサイドで順位は前回と変わらずです。一方でダウンサイドは株が23.3%から19.6%と小幅減少し、債券が13.3%から21.3%と上昇しております。ビットコインとドルはほぼ変わらず。
 3月第1週目までの結果を見ると株、債券が大きく反落一方でビットコインとドルは小幅上昇となりました。ビットコインはショートバイアスがかかっているかのようにダウンサイド人気銘柄ですが、パフォーマンスは今のところ悪くありません。
 今回の結果から導かれる方向感は前回と特に変わった点はございません。ただ、前回よりは回復ステージでの金利の行き過ぎを見計らっている参加者が増えた印象を受けます。

②現在景気循環ステージの考査
 結論から申し上げますと、2月号からのトレンドから大きな変化はございません。米国の「Initial Jobless claims」の減少トレンド、「Building Permits」の増加トレンドは引き続き変わらずとなっております。米国のGDP四半期成長率は2月25日発表基準で4.1%成長と回復が続いておりますが、少しだけ消費の回復が物足りないと感じています。タイミング的にはワクチン普及が進んだ2021年下期以降になるとみております。

③今後コンセンサスの行方
 結論から申し上げますと現状トレンドが続くと考えます。「回復」がさらに上昇(6割以上)、「後退」と「不況」がさらに減少(2割前半)するでしょう。6月くらいまではほぼ変わらずの結果になると考えます。ワクチン普及後の消費の回復やグローバルロジスティクスの回復などを見極めながら「好況」の返答率が上がってくるとみております。

④株価方向の予想
 短期的に調整するとの見方を据え置きます。その後一旦レンジを作ると予想します(27,000~30,000円)。
 2月予想では回復のエビデンスが出てくるにつれて織り込みすぎた分の調整をする(10%程度)と申し上げましたが、結果的に株価は1月末から大きく反発し日経平均は3万円を超えたということで私の予想は外れました。
 しかし、忘れてはいけないファクトとしてここ数カ月継続してセンチメントがブルブルな自信過剰相場が続いているということです。
 下限の27,000円の根拠は前回同様ですが、もし下抜けるようであれば24,000円までを想定しております。しかし、24,000円水準はFEDが前倒しでテーパリングや利上げをするようなことがなければ実現されないと想定しております。上限突破の条件は景気循環サイクルのコンセンサスが「好況」にシフトするタイミングと考えます。なお、長期では買い目線とのことに変更はございません。

⑤2月金利上昇のbreakdownとGrowth&Valueの考え方
 2月は金利上昇がHOT TOPICとなりました。なので少し私なりの解釈をご紹介できればと考えました。breakdownを見る前に結論から申し上げますと、短期的に金利上昇は行き過ぎだとみており(景気回復の織り込みすぎ)、暫くして落ち着く可能性が高いとみております。では下記をご覧ください。
※ここは私の専門分野ではないため、誤りがあるかもしれません。もし認識の違いがございましたらご教示ください。

a. 金利上昇のbreakdown
 米国10年債を基準にお話しいたします。金利は簡単に次の3つのファクターで考えることができると考えます:①タームプレミアム、②期待インフレ率、③期待短期金利。式としては、期待短期金利③+タームプレミアム①+期待インフレ率②=長期金利と認識しています。簡単に解説すると、ベースとして期待政策金利の平均ある③があって、そこにインフレ以外のリスク要因が反映される①とインフレを反映する②が加味される、と私は理解しています。
 まずは①ですが、これが一番大きな金利上昇のドライバーになったと考えます。①はマネタリーポリシーによる需給の歪みや米中貿易摩擦等の景気悪化要因を理由に2019年からマイ転しました。それからコロナ禍で景気循環が不況へ一気に進み、▲1%まで沈みましたが、最悪が過ぎた2020年4Qくらいから反転し始めて回復を織り込んで2月に入ってプラ転しました。これは健全な動きで、金利上昇の順当な理由だとみております。

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 ②も上昇の重要な要因の1つですが、2月で短期的に全て織り込んだとみています。下記のコモディティETF価格推移(Blackrock iShares)をみるとわかる通り、コモディティ価格はコロナ前の水準を全戻ししています。足元の原油価格の急上昇も一つの要因になってそうですが、コモディティ全体では経済活動が普通であったコロナ禍以前水準まで戻ったので、織り込み済みと判断しています(特段コロナ前より経済活動が良くなっている要素はないので、、、)。

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 問題は③です。これが高まったことによって実質金利が上昇したと理解しています。③の上昇が意味することは、簡単に言うとマーケットがFEDの前倒し利上げを予想しているということになります(ちなみに現時点でのfed利上げのconsensusは2023年となっております)。FEDは以前から利上げやテーパリングの条件としてPCE deflater 2%を挙げておりました。足元のコモディティ価格上昇により1月のPPI(yoy)が予想値を大きく上回ったことで、投資家はPCE deflator(もしくはCPI)も予想を大きく上回るのではないかと予想していると推測しています。しかし、米国の物価指数において一番ウェートが高いのは下記の円グラフでわかるのように家賃(4割以上)、交通費(約17%)、食品(約15%)の順となっており、コモディティ価格が上がったからと言ってPCE deflatorやCPIがPPIほど上がる可能性は低いとみています。つまり、FEDがインフレを叩くために前倒しで利上げするほどの物価上昇の可能性はまだ低く、今の短期利上げ期待は行き過ぎたとのことです。

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b. Growth&Valueの考え方
 結論から申し上げますと、本格的なValue相場はまだ先でテーパリングが始まるまではGrowth優位の相場が再来すると予想します。
 1月末から2月までValue株がGrowth株に対し、アウトパフォームしました。下記のツイートのを参考にさせて頂きましましたが、過去10年間の金利上昇とセクター間のパフォーマンス相関を見ると金利が上昇しているうちはValue株がアウトパフォームしやいことがわかります。特に今回はショートカバーたくさんを巻き込んで大幅かつ急に上昇したとみております。

 再びGrowth優位になるとのもうひとつの根拠はFEDのバランスシート拡大の継続です。下記の図通り、足元でもFEDのバランスシートは拡大し続けております。大規模量的緩和が始まった以来、Valueの相対パフォーマンスはずっと悪化してきました。これが終わらない以上はGrowthがいつ息を吹き返してもおかしくありません。過去何回もそのような場面がありました。

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 金利が上がってるうちは確かにValueの相対パフォーマンスが良いのですが、前倒し利上げ期待が剥がれて金利が落ち着いてくると過剰流動性相場だとのことにみなさんまた気づくのではないかと思われます。

⑥最後に
 
2月は非常にボラティリティの高い相場となりました。毎日日替わりで相場がリバーサルするような動きで、多くの投資家にとって非常にやりづらい相場だったのではなかったのかなと考えます。私はこのような相場が一番苦手で、かなり息苦しかったです。しかし、迷ったら森を見る努力をすることで少し冷静な気持ちに戻ることができました(かなり損した後ではございますがw)。みなさんやり方はそれぞれですが、迷ったらみて役に立てるようなレポートを志してこれからも継続していこうと思います。
 また今月もお忙しい所、アンケートにご協力していただき誠にありがとうございました。引き続き皆様にお役に立てるよう、コンセンサスの調査と分析を行っていきたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。

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