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『君のクイズ』を読んだら天才の頭の中が解明された

クイズ番組「Q-1グランプリ」決勝。早押し問題。そこで本庄絆が一文字も問題がよまれる前に正解を導きだしたところから物語がはじまる『君のクイズ』という小説が面白かった。

「Q-1グランプリ」とは、いわゆる高校生クイズのような問題のレベルが高すぎて視聴者はどう楽しめばいいのか分からないクイズ大会である。

本庄絆は優勝を決めて「クイズ王」の称号を手に入れる。

対戦相手であり「敗北者」というやられた側の立場として一生の十字架を背負ってしまった主人公・三島玲央。まさにバース、掛布、岡田がやった伝説の阪神3連発のやられた側の槙原と同じ運命をたどることになる。かわいそう。


納得のいかない彼は「なぜ本庄絆は問題が出される前に答えることができたのだろうか?」というクイズを自分に課し、正解を導くため決勝を振り返っていく。


展開が新鮮すぎておもしろすぎる。


普通のあらすじは、人生に色がなく何をやっても冴えねーしパッとしない主人公が、ひょんなことから天真爛漫もしくは破天荒もしくはクレイジーな奴と出会ってクイズに挑戦して才能を開花させるというものだ。


でも、本書はちがう。クイズを通して主人公の成長を追っていくものではなく、クイズプレーヤーの頭の中をめぐっていくということに焦点を当てて物語が進む。


クイズ番組をみていると、なんでそんなことがわかるんだよっていう人間離れした天才が現れることがある。きっと、もって生まれた才能が超越していて一度見たものは一瞬で記憶する能力をもっていてアベンジャーズの一員になれる逸材なんだなっと思っていた。

でも、本書を読んだら超越したクイズプレイヤーを「天才」と呼ぶのは少し違っていた。天才たちは決して天才なのではなく「凡人」の集合体である思った。


クイズは正解がわかったら答えるという単純なものだと思っていたがそうではない。「答えがわかる」ではなく「答えを手繰る」のほうがしっくりくる。記憶の断片をつなぎ合わせて引っ張り出してくる技術が優れているのだ。


この本はクイズプレイヤーが早押しでボタンを押してから正解を答えるまでの頭の中を完全に言語化し、普段は見えない世界へ連れて行ってくれる。


これはただの小説ではない。むしろ物語(フィクション)ではなくリアル(ノンフィクション)であった。


この小説を一言でいうなら「クイズプレイヤーの社会学」といえるだろう。

以上。終わり。


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