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読書記憶2「六花の印」
好きな本こそ紙で残したい。
最近こそ電子で読むことも増えましたが、
紙の本のあの質感、
ページを捲る楽しみ、
はやる気持ちでチラッと後書きを見たり見なかったり、、、
電子には出せない紙ならではの良さはやはり捨てがたいものです。
そして私の中の「紙の本で買う作家」の筆頭といえば、連城三紀彦さんです。
連城三紀彦さんと私
いやもう、連城三紀彦さんは、私が説明するまでもなく、超有名作家さんですよね。
ミステリー好きには言えば分かる「花葬シリーズ」や、渡部篤郎さん主演のドラマ化で有名な「恋文」に代表される恋愛小説、短編から長編まで、亡くなるまでたくさんの話をこの世に残してくださっております。
好きな話をあげればきりがないのですが、私が連城三紀彦さんに出逢ったのは、とあるミステリーアンソロジーに載っていた花葬シリーズの短編「桔梗の宿」だったように思います。
そこから短長問わず読み漁り、「戻り川心中」や「花緋文字」「夕萩心中」を読んだ時のあの興奮ときたら!
本を読みながらあんぐりと口をあけましたよ。
心中も好きですが、不倫や誘拐も好きな私としては(こう書くとかなりヤバイヤツ感が出て面白いですね)連城三紀彦さんはまさに、タイプど真ん中!!!なのです。
いやむしろ、連城三紀彦さんが書く話が面白すぎて誘拐も心中も不倫も好きになったと言っても過言ではないです。
だって、ある日突然旦那の愛人に会わされた(偶然会った、ではなく、会わされた、なとこがまた…)挙句「ご主人をいただきにきました。」とか言われるなんて…どう考えても面白すぎる!(「隠れ菊」)
ああまた話がそれたそれた。
隠れ菊の話が出たので書いておきますけど、非常に元気をもらえる話です。夫の愛人が押しかけて来たのに元気もらえるとは?と思ったらぜひ読んでみてください。
ただ、初!連城三紀彦さんでしたら、本日紹介する「六花の印」がオススメです。
https://www.amazon.co.jp/六花の印-連城三紀彦傑作集1-創元推理文庫-連城-三紀彦/dp/4488498116
「六花の印」あらすじ
全二巻からなる連城三紀彦傑作集の第一巻で、デビューから直木賞受賞「恋文」前後までのより抜きの短編作品が収まっています。
表題作「六花の印」をはじめ、「菊の塵」「桔梗の宿」「桐の柩」「能師の妻」「ベイ・シティに死す」「黒髪」「花虐の賦」「紙の鳥は青ざめて」「紅き唇」「恋文」「裏町」「青葉」「敷居ぎわ」「俺ンちの兎クン」の15の短編と、連城さんによるエッセイが数編入った贅沢すぎる傑作集です。
有名な恋文や表題作はどこかにあらすじがありそうですので、ぜひ調べていただくとして、私は印象的だった「黒髪」を紹介します。
黒髪
舞台は古都京都。
主人公・高沢は15年ぶりに京都のある寺へ繋がる坂を歩いています。
15年前、高沢はその寺で一人の女と別れ、そしてその際に女に15年後にまたここで逢ってくださいと、ある日時を指定され、それが今日この時刻だったのです。
女は高沢の愛人でした。当時、病に臥せる妻を大切にしながらも、仕事の縁で識り合ったその女にも惹かれていた高沢でしたが、やがて妻が死に…
というあらすじなのですが、タイトルにもなっている黒髪の意味するところが、怖いやら切ないやら。
連城三紀彦さんと言えば「大胆な仕掛けと巧みな伏線そして叙情的な筆致」が最大の特徴ですが、まさにそれを楽しめる一編だと思います。
坂を登る高沢と、15年ぶりに逢う元愛人との再会のシーンのなんとも言えない哀愁滲み出るような文章。
このシーンひとつとっても、連城三紀彦さんがどんな作家なのか分かりますし、妻と愛人が仕掛けた女の駆け引きの真相に気付いた時には目をみはりたくなることと思います。
高沢のような男に惹かれる愛人の気持ちも分かるような分かりたくないような。
おわりに
連城三紀彦さんは私にとっては人生を変えてくれた作家さんです。
それまでも本を読む事は好きでしたが、それは他人の作る物語が好きだったのであって、別に映画でもなんでも良かったわけです。
連城さんと出逢ってはじめて文章そのもの、彼の表現が好きだと気付きました。
情景から感情までが去来する、あの読書体験は他では味わえないと思います。ただ、一時期連城三紀彦さんばかり読みすぎて仕事の報告書に支障が出まして、「感情的すぎるわ!くどい!」と怒られていましたが。笑
ほぼほぼ彼の作品は読み尽くしましたが、少しずつ読み返しながら、当時感じた事や再読して感じた事をこうして文字におこしていきたいと思います。
お付き合い頂き、ありがとうございました!