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専業主婦10年からの就職活動⑤〜面接後編〜

駅で派遣会社の営業担当者と待ち合わせ、いざ目的の企業へ向かった。

当日のファッションは、ネイビーのジャケット&パンツに顔写りの良いホワイトのブラウス、髪はまとめてスッキリとしたイメージに。とにかく、ブランク10年のオバサン臭をださない事を心がけた。

到着後は、慣れた動作で営業さんが受付をすませる。

暫くすると、今日のターゲットである先方の人事担当者が姿を見せた。

「ごはんですよ」のキャラクターにそっくりの、50代男性である。非常にラフないでたちで、名前は大村さんというらしい。

緊張しつつ、挨拶を済ませる。

「えーっと、じゃあまずは、社内を見てもらおうかな?事務の場所と、作業の部署があるんだけど、まずは事務からね」と言われ、面接の前に社内を見させていただくことになった。

職場に足を踏み入れた第一印象は、「なんだかゴチャゴチャしている」である。

とにかく、物が多いのだ。そして、統一感がない。張り紙やポスターも多く、圧迫感のある灰色空間という印象。

「もし、働いてもらう場合は、この辺りの机になると思うよ」と、6台ほどシマになった机の一つをコンコンと叩いた。そこには、ノート型の若干古そうなパソコンが数台置かれていた。デスク近くには、パーテーションも何もなく、スカスカである。

「僕達の場所は、パソコンも備品も、他の部署で不要になった物を極力リサイクルしているんだ」

なるほど、だから統一感がないのか。福祉の部署だから、予算がないのだろうか、、。

周りでは、ハンディキャップのあるらしき社員の方々が数名歩き回っていた。この方達に混じって仕事をするらしい。

次に、大村さんは逆方向を指差して、

「あっちのパーテーションで区切った内側が、総務や経理ね。ボクはいつもあちら側だけど、ノンタンさんが業務をやるとしたら、こっちだから。そう、この区切ってない側ね」

どうやら、この大村さんは管理部門の人間で、私は管理理部門ではない所で事務をやるらしい。事務なのに管理部門ではないのか、、。福祉の部署だから、営業事務でもなさそうだし、何の事務をするのだろう。

「後で、こっちの部門の方の責任者にも面談に来てもらうよ。彼が、直属の上司ということになるから」

ふうむ。このオジサンなら、なんとなく組みやすそうと思ったが、残念。私の担当は別なのか。

そんな事を思いながら、次は作業の部門に案内される。

ドアを開くと、そこは、これぞ福祉の仕事といった雰囲気の作業場であった。作業着に、ネット帽をかぶった社員達が必死に、箱を折っている。

これまで一般企業でしか働いた事のない私は、若干戸惑った。

大村さんは、それを察したように少し慌てつつ、

「えーと、まぁ、あくまでも事業の一環でこういう業務もやっているんだ。ノンタンさんは、最初は事務で入ってもらうから、あまり関わらないかもね。」と話した。

「最初は、、」というのがなんだか気になったが、とにかく何がなんでも社会復帰をしたかった私は、疑問点はすっ飛ばし、目先の面接に受かる事のみに集中したのである。

さて、面接にもどると、大村さんの隣に突如、「現場の責任者」という方が入ってきた。

「えーっと、この人が現場責任者の、白河さんです」

大村さんが、慌てながら紹介する。

非常に細く、色の白い、そして何となく不気味で冷たい雰囲気の男性である。血圧は間違いなく低そうだ。

白河さんは、さっと私の履歴書を手に取り、つまらなさそうにチラッと見た後、職務経歴書に添付していた、ちょっとした子供関係の行事のパンフレットに目をとめた。(PCのスキルを分かってもらうため、以前作った資料などもつけておいたのである)

そして、「ふーん。こういうの、作る作業が好き?得意なのかなぁ?」と、まるで小さな子供に話しかけるように質問してきたのである。

違和感を感じる私。

なんというか、大人扱いじゃなく、思いっきり子供としてあしらわれてるようだ。なにかがおかしい、、。

間髪入れずに、大村さんが言う、

「えっと、この人は、いつも障害ある社員と接してるので、つい健常者にも境目がなくなっちゃうんだ。それで色々、誤解されるんだけど、気にしないで」

ふーむ。そういう人なのですか、、。

そして、この職場のボスは、この白河さんなのだな。直感的に察した。

「ねぇ、パソコンばかりやられても困るんだけど、その話はしてあるの?」

「も、もちろん話してるよ。事務部門の色んな仕事をしてもらうから、、、」

大村さんが、また慌てながら返答する。

(ここで、しっかりした大手派遣会社なら、ウチのスタッフが引き受ける業務は、コレとコレの事務業務です。追加するなら、時給を上げさせてもらいます。と、交渉&線引きをしていくのだが、今回は派遣会社も微妙なところだったため、時間内ならなんでもやらせる方式だったのである。そして、私も派遣初心者だった為、情けないことに、その闇に気づかなかったのだ)

横にいる派遣会社の営業マンは、

「はい、何でもやらせてください! ね、ノンタンさん!」と、私にハッパをかけてくる。

10年ボケしている私は、ブラック職場で散々苦しんだ過去があるにも関わらず、世の中にはおかしな会社が沢山あることもすっかり忘れ、

「はい!お力になれるよう、頑張ります!」などと答えた。

次回、「派遣の条件と入社編」いきます。









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