![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/159246366/rectangle_large_type_2_f33b5055587b79c530ba69b8fb963cf0.jpeg?width=1200)
製薬会社マーケティング2 - タスク編
こんにちは、ぽんのすけです。
本日は「製薬会社マーケティング」の第2弾です。
第一弾以前から質問箱で具体的なタスク別の依頼をいただいておりました。
前回同様、やや抽象的なまとめとなっておりますが、私の大事にしている考えや、Tipsをまとめてみました。(How to のような仕様にはなっておりません)
自己紹介
まず、改めて自己紹介をいたします。
私は「ぽんのすけ」という名前でTwitterを活用しており、製薬会社のマーケティングに従事しています。
日々仕事やキャリアのこと、そして自分の生活に関する投稿をしています。
私はMR(医薬情報担当者)として入社した当初、プライマリーケア領域の最前線に立っていました。その中で、シェア・オブ・ボイス(SOV)やコール数の競争といった、営業の厳しい現場を経験してきました。
その後、大都市への転勤を機に、大学病院での仕事に従事しました。大学病院は研究や教育の機関でもあり、ここでの経験を通じて、単なる営業活動だけでなく、視野が大きく広がったと感じています。
また、1つの施設だけでなく、関連病院を含めた複数の施設や担当者との連携を取ることが求められました。これにより、チームを率いる経験を積み、自分のリーダーシップ能力を高めることができたと考えています。
当時(今もかもしれないですが)国内MBAを取得する動きが非常に流行していました。多くの人がMBAを目指す中で、私はその価値について半信半疑でした。しかし、「一概に否定するのは良くない」という考えから、実際に自分で試して効果を確認することにしました。
最初はその価値に懐疑的でしたが、実際に学びを進める中で「通って良かった」と強く感じています。MBAでは、自分の知らなかった学問や、多様な業界で活躍する仲間との出会いがあり、それが今でも大切な財産です。
さらに、タイムマネジメントの重要性を痛感しました。MBAは非常に忙しく、宿題も多いため、限られた時間を効率よく使う術を身につける有意義な時間となりました。
MBA修了後、私はマーケティング部に異動し、実務的なマーケティングを上司から学びました。この経験は、私のキャリアにおいて大きな礎となっています。今日お話しする内容も、その学びをもとに構築されたものです。
また、私にとって英語力は大きな武器となりました。マーケティングスキルと英語力の組み合わせは、他市場でのライバルとの差別化に大いに貢献しています。
マーケティングの原則
本題に入る前に、「マーケティングとは何か」という本質について、私の考えをお伝えします。一言で言うと、マーケティングとは顧客の行動変容を起こすことだと定義しています。
マーケティングには、市場分析やターゲティング、フレームワークの活用など、さまざまな要素があります。しかし、最終的な目標は顧客の行動が変わることにあります。顧客の行動が変わらなければ社会も変化せず、マーケティングの本質的な役割は果たせません。そのため、私たちが目指すべき姿は、顧客の行動変容を促進することにあると強く信じています。
では、顧客の行動を変えるために、どのような原則を押さえるべきでしょうか。これは私自身が大切にしている「マーケティングのルール」に基づいています。この外してはいけない原則について、皆さんと一緒に確認していきたいと思います。
大原則①
マーケティングにおいて、私が最も大切にしている信念は、「答えは必ず現場にある」ということです。
製薬会社の一部のマーケターは、パソコンの前で数字を分析し、課題を特定しようとします。しかし、私はそのような方法には否定的です。最も信頼できる情報は、現場から得られると考えているからです。
具体的には、以下のような現場の人々からの情報が鍵となります:
医師の見解や臨床現場でのフィードバック
患者さんの声や治療体験
MR(医薬情報担当者)からの報告や現場での感触
このような情報は、数字だけでは見えない、現実に即した課題の本質を教えてくれます。
答えが現場にあるとするなら、私たちは現場から情報を自ら取りに行く行動が欠かせません。現場から得た情報をもとに仮説を立て、その仮説を数字で検証するというプロセスが重要です。
ここで忘れてはならないのは、数字から課題を探すのではないということです。課題の本質は現場で見つけた仮説にあり、数字はその仮説を検証するための手段にすぎません。この「現場→仮説→検証」という順序を守ることが、効果的なマーケティング活動の要だと考えています。
大原則②
マーケティング戦略のもう一つの重要な原則は、選択と集中です。戦略とは「戦い方を省略すること」であり、課題を可能な限りシンプルに、根本的な部分まで特定することが求められます。そして、特定した一点に最大限のリソースを投入することが、最も効果的な戦略だと信じています。
アクションを選ぶ際に大切なのは、「一つ実行することを決めたら、一つやらないことを決める」ということです。積み上げ式に無限にアクションを増やすのではなく、不要なものを排除し、限られたリソースを集中させることが重要です。
この二つの大原則、すなわち「答えは現場にある」「選択と集中を徹底する」という考え方を実践することで、マーケティング活動の精度と効果が格段に向上するはずです。
第1弾のセミナーでは、これらの原則の背景となる考え方をより詳細に説明しましたが、本日はその応用や具体的な実践例を中心にお話ししていきたいと思います。
第一弾の振り返り
第1弾では、Patientジャーニーに基づいて、実際のメッセージをどのように作成するかについて説明しました。
Patientジャーニーの理解
製品(プロダクト)ベースではなく、患者の視点で考えることが重要。
患者さんが体験するペインポイント(困難や課題)を明確にし、そのプロセス全体を可視化する。
行動変容につながるポイントを見つける
行動変容が起こるポイント(切り替えの瞬間)を見つける。
そのポイントには、医師や患者が薬剤を選択するタイミングも含まれます。
競合との差別化
競合品と比較して、患者や医師の行動変容のポイントにどのようにリーチできるのかを分析。
リーケージポイント(患者の心を動かす接点)を探し、そこにリーチする差別化戦略を構築。
プロモーションメッセージの作成
差別化戦略に基づいて、具体的なプロモーションメッセージを策定。
患者の行動変容を促進する形で、製品や治療法の価値を伝えるメッセージに落とし込む。
仮設定:咳が止まらない30代男性のペイシェントジャーニー
今回は、仮のケースとして「咳が止まらない30代男性」を想定し、このケースをもとにマーケティング戦略を考えてみます。
(私が現在咳が止まらないので、そうしてみました(笑))
ペイシェントジャーニーのフェーズ
初期フェーズ:最初は「風邪だろう」と軽く考えていたが、咳がなかなか治らず、不安が募る。
不安のフェーズ:他の感染症かもしれないと疑うが、仕事と家庭が忙しく、病院に行く時間がない。
切実な思い:何とか自分で治そうと努力するが、仕事や生活に支障が出ており、一刻も早く咳を止めたい。
この患者さんの根本的な願いは、「早く症状を改善し、通常の生活と仕事に戻りたい」というものです。
行動変容を促すためのアプローチ
サクセスファクター(成功要因)の特定
患者の行動変容を促すために、以下の3つの要素が重要です:
咳の原因特定のサポート
患者は不安であり、それを和らげるため、咳の原因を自分で理解・確認したい。
忙しい患者向けの対応策の提示
忙しい患者のために、簡単な対処法(例:LINEでの相談、オンライン診療など)を告知し、受診のハードルが欲しい。
早く効果を実感できる治療の提供
受診後、患者は「最も早く効く治療」を期待している。その期待に応えるための薬剤の提供
差別化戦略の構築
患者が望むのは、即効性のある治療です。これは、「早く仕事や普段の生活に戻りたい」という思いから来ています。このような患者のニーズに応えるため、次の差別化戦略を構築します。
即効性をキーワードにした差別化
競合製品との違いを「即効性」という要素に絞り込みます。
調査によって、この「即効性」が最も差別化に効果的な要素であることが確認されたと仮定します。
メッセージの展開
調査の結果をもとに、即効性を強調したメッセージを中心にマーケティング活動を展開します。
MR向け資材とスライド
MRが医師に即効性を伝えるための効果的なスライドや資料を準備。
プロモーション活動
セミナーやイベントで、即効性が患者に与えるメリットを伝える。
差別化されたメッセージの発信
他剤との違いを明確にし、患者が求める迅速な効果を訴求するメッセージを強化する。
組織での活動展開
このような戦略を持つ組織が、次に行うべき活動は以下の通りです:
マーケティングチームとMRの連携強化
現場からのフィードバックを基に、さらに戦略の精度を上げる。
顧客ニーズに合わせた活動のカスタマイズ
忙しい患者のライフスタイルに合わせ、柔軟なプロモーション方法を採用する。
効果測定と戦略の見直し
即効性をテーマにした戦略が、実際に顧客行動に変化をもたらしているかを継続的に測定し、必要に応じて修正する。
本日の本題に使用する仮設定として上記の内容を使ってみたいと思います。
3つの活動領域(タスク群)
質問いただいた内容を整理すると、私たちの活動は次の3つの大きな領域に分けられると考えています:
KOL(Key Opinion Leader)のマネジメントや講演会、顧客対応
会社内トレーニング、資材作成、営業部門へのサポート
KPI設定やPDCAを活用した内部業務の運用
今回は、一貫した戦略に基づいて、これら3つの領域でどのように活動を展開すべきかについて私の考えをお話しします。
原則の確認:戦略に一貫性を持たせることの重要性
全ての資材、講演会、KPIなど、あらゆる業務は、あらかじめ策定された戦略に基づいて実行することが大原則です。戦略から逸脱した行動や施策は絶対に避ける必要があります。この基本戦略に常に準じることが、業務の一貫性を確保し、目標達成に直結します。
原則の確認:全員で戦略を共有することの重要性
特に大企業では、多くの社内ステークホルダーが関与するため、関わる全ての人が同じレベルで戦略を理解していることが理想です。各部門からの提案や意見も出てくるでしょうが、それらが戦略に沿ったものであるかどうかを常に確認する必要があります。
意思決定のポイント:
新しい施策や提案が戦略に沿っているかどうかを常に点検する。
必要に応じて、「これは必要か?」と自問し、やらないことを決めることも重要です。
すべての部門での活動が、同じ目標に向かっているかを見失わないようにする。
原則の確認:選択と集中に直結する意思決定
この考え方は、先ほどお話しした「選択と集中」の原則に直結します。
やることを決めると同時に、やらないことを決めることが重要です。
戦略にそぐわない施策を排除し、限られたリソースを集中させることで、最大限の効果が期待できます。
1. KOL(Key Opinion Leader)のマネジメントや講演会、顧客対応
演者の選定:どのような要素を重視すべきか
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?