見出し画像

自信がある人の話。

入社して1カ月の私は、前職の経験もあってそれなりに多くの仕事を任されている。
それ以前に、私は周りと比べてどうやら手際がいいらしい。
同期はなぜか定時になってもなかなか帰ることができないようだが、私は定時になれば退社するし、休日の出勤もしない。
「あの、すみません、この件ってどういう手順で処理するかわかりますか?」
同期から質問された。
「これ、調べればわかるよ」
私は同期に教えてあげた。
なぜか同期は不服そうな顔をしていたが、「そうなんですね。ありがとうございます」とお礼を言って去っていった。
その同期は、わざわざ別の部屋の上司のところに行き、さきほどの件について聞いているようだ。
なぜ自分で調べないんだろう。
効率的に仕事をすすめることが一番じゃないか。

「あの資料、どうなってますか?今日が期限なんですけど・・・」
いきなり先輩が身に覚えのないことを言い始めた。

「いや、自分は聞いていないんですが」

「え?」

先輩が目を丸くして驚いている。
この先輩は何を言っているんだ。聞いていないことを今日までにやれというほうがおかしい。
「一週間前に言ったはずなんだけど・・・」
先輩はなぜか戸惑っていて、次に何を話そうかと迷っている様子だ。
「えっと、今日はちょっと厳しいんですけど明日やっときましょうか?」
私の能力なら1日で終わるだろう。頼まれてはいなかったが、上からの評価を高くするためにもこれは引き受けよう。先輩も困っているみたいだし。
なぜか先輩は不服そうな顔をしていたが、「・・・あ、わかりました・・・。じゃあ明日お願いします」と言い、去っていった。
どうやらこの会社には、私とはちがうというか私には理解できない人種が多いようだ。

この会社では、3か月に一度、部長との面談があり、ふだんの仕事の悩みなどを話す機会を設けている。
もともと他人に相談をするような性ではないが、同期や先輩に対して違和感を感じることが多く、意を決して部長に相談してみることにした。
一通り私の話を聞いた部長は、かなり怪訝な顔をしてしばらく黙り込んでしまった。
「部長?」
沈黙に耐えられず呼びかけると、部長は重い口を開いてこう告げた。

「君が自分の中でできると思っていることが、周りからみたときにできているとは限らないよ。話を聞かない、仕事をしない、同期と協力しない、僕から見るとそんな風に見えるよ。そこに気づけていないんじゃないかな?」

やはりこの会社には、私には理解できない人種が多い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?