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耳をすませばの聖地巡礼にはお気を付けください

「誕生日おめでとう!滑り込みセーフ!」

おととい、日付が変わる直前に、高校の友達のR子から久しぶりにこのようなLINEが届いた。

思わず首をかしげた。というのも、わたしの誕生日は6月5日である。滑り込みセーフではなく、フライングでアウトだ。

だがしかし、6月5日はガッツ石松さんの誕生日でもある。OK牧場の精神(?)からすれば、4日くらいのズレなど小さな誤差だろう。

「ありがとう!誕生日は週末だけど、一番乗りで祝ってくれてうれしい!」
と、気持ち良く返信する。

するとR子から、「ごめん、LINEに出てきた『誕生日が近い』を『誕生日が今日』と見まちがえた…」と返信がきた。

しかも、「まいこの誕生日が6月5日って知ってたのに、『あ、今日ってもう5日かぁ』と思ってしまった…」とのこと。

ああ、そうだった。
R子はわたしと肩を並べるレベルの、おっちょこちょいだ。

わたしの脳裏に、高校時代のある日の思い出が浮かんでくる。

* * *

今から10年以上前のとある日、わたしとR子は、「ジブリ映画の中で何が一番好きか」という話をしていた。

すると、お互いに「耳をすませば」が不動のNo.1であることが発覚した。大いに盛り上がり、今度「耳すま」(女子高生はすぐ略すのだ)の舞台となった場所に、聖地巡礼しに行くことになった。

休日、桜ヶ丘駅に降り立った、わたしとR子。

わぁ、ここに月島雫と天沢聖司がいたのかぁ〜(いない)と思うと、テンションが上がる。階段を見つければ、雫になり切って駆け降りる遊びにも興じる。

しかし、しばらく歩いていて、何かがおかしいと感じ始めた。ネットで軽く調べたところ、映画に出てきた坂道や神社が近くにあるはずなのだが、散策しても見当たらない。

もっと駅から遠いのだろうか。仕方なく、ネットで「耳をすませば 舞台」と検索して正確な住所を調べる。だが自分たちがいる場所の近くには、該当の聖地が何もない。

そこで我々はようやく気が付いた。

我々のいる「桜ヶ丘駅」と、耳すまの聖地である「聖蹟桜ヶ丘駅」は、全く違う駅だと。


なぜだろう。最初は我々も、「聖蹟桜ヶ丘駅」を目指していたはずだった。しかしどこで勘違いしたのか、気付いたときには「桜ヶ丘駅」にたどり着いていた。致命的すぎるミスである。

ただ、「諦めるのはまだ早い…」とR子が言った。同じ「桜ヶ丘」という地名が入っているのだし、2つの駅はすぐ近所かもしれない、と。

調べてみると、桜ヶ丘は神奈川県で、聖蹟桜ヶ丘は東京都だった。悲しいかな、だいぶ遠い。東京住みの我々なのに、わざわざ家から遠いほうに来てしまったことが余計に悔しい。

残酷な事実にショックを受け、聖蹟桜ヶ丘に移動する気力も失せたわたしたちは、仕方なく、近くのラーメン屋に入った。神奈川県には、ラーメンがおいしいイメージがあるからだ(安直)。

ラーメンをすすりながら、始まった残念会。

今日の自分たちの行動を振り返りながら、ものすごく恥ずかしくなってくる。駅のまわりで「あれも耳すまっぽいね!」「あ、あれも!」と、ひとしきりはしゃいだのだが、それはすべてまやかしだったのだ。先入観とは恐ろしい。

後日、わたしたちは反省を胸にそれぞれ耳すまをもう一度見返してから、聖蹟桜ヶ丘で聖地巡礼のリベンジを果たしたのだった。

* * *

R子からの早とちりのお祝い連絡で、そんな懐かしき失敗談を思い出した。

ところで「耳をすませば」は、今年10月に実写映画化されるらしい。

そのとき、もしも再び耳すまブームが巻き起こり、「聖地巡礼しよう!」と思い立つ人々が増えれば、我々のような被害者がまた出てしまうかもしれない。

被害者の会の代表として、この場を借り、耳すまファンに注意喚起したい。

聖蹟桜ヶ丘と桜ヶ丘は、全然違う駅です。
くれぐれもお気を付けて。

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