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ロスした時間を有効に使えるときもあれば使えないときもある

わたしにはジョシリョクならぬ、ジョシュセキリョクがない。

何のことかと言えば、運転手を支える「助手席力」の話だ。

まぁペーパードライバーなので運転席力もないし、なんなら女子力もコミュ力も体力もないのだが、それは置いておいても、助手席力がない。

その名のとおり、運転手の「助手」を務める力を助手席力という。

人々がそれをどこで学んでいるのか謎だが、高い助手席力を持った人間は、下記のような行動を自然と取れるものだ。

・ナビのルートをチェックし、曲がるタイミングを案内する

・渋滞情報などの看板表示を見落とさずにチェックする

・運転手が疲れているようなら「もう少しで大きいサービスエリアあるよ♡」と教えてあげる

こうした痒いところに手が届くサービスの数々を、楽しい会話と並行しながら提供するわけである。すごすぎる。尊敬する。

わたしはと言えば、下記のとおり。

・ナビのルートとは違うタイミングで「あ、ここ曲がるんじゃない?」と言って、運転手を惑わす

・過ぎ去る看板表示を必ず見逃す

・「あ!見て!」と突然大きな声を出し、進行方向ではない場所を指さす

・疲れた運転手の隣で爆睡する

とまぁ、我ながら痒いところをますます増やすようなサービスだ。故意はないが反省したい。

先日、恋人との旅行でレンタカーを借り、それを返すときにもまたやってしまった。

レンタカー屋に着く直前、近くのガソリンスタンドでレギュラー満タンにし、我々は完全に油断したのだ。あまり深く考えずに、ナビを見ながら「この通りをまっすぐだね」とわたしは言った。

するとなぜか、高速に乗ってしまった。


あと3分で目的地に着くはずだったのに、ナビの到着予定時刻は一気に30分増しである。画面のルートに、水色の線が2本出てくる。つまりは一番近い高速出口をいったん降り、Uターンして再び高速に入って同じ道を戻れという意味だ。

運転席で彼は「くっそー!この30分のロスの間にビール1杯飲めたなー!」と、アル中のような言葉で悔しがる。

一方のわたしは、以前、今回と似たように道を間違えたときのことを思い返していた。

1年ほど前、友達の運転する車で高速の出口を降り損ね、よりにもよってその出口1つの差で渋滞にハマってしまったことがあった。

あのときも、一気に15分ほど到着予定時刻が伸びたのだ。だが、あとから思えば、あれはすごく重要な15分だった。

当時、友達は転職活動をしており、第一志望のゲーム会社の面接が間近に迫っていた。その志望理由について「ゲームが好きだから」というだけでは印象が弱いし、何かないかなと相談された。

渋滞にハマりながら、わたしは考える。そして彼女が高校時代、ゲームのテーマソングをピアノで弾きたいと言って一から練習したり、キャラクターの絵をパソコンで描いたりしていたことを思い出した。

ゲームをきっかけに、彼女はそれ以外のことにも興味を持って積極的に行動し、どんどん自らの世界を広げていたのだ。それを面接で話したらどうか、と車の中で提案した。

後日、無事に第一志望の会社に転職できたという友達から、「あの志望理由がかなり相手に響いた」と連絡があった。高速の降り場を間違えて時間をロスしたけれど、あのときはロスした時間を有効に使うことができたと感じている。

だから今回、恋人と道を間違えたことで増えたプラス30分も、有効に活用できないかと考えた。

しかし残念。今回の30分で得られたことと言えば、たまたま流れてきた「いきものがかり」の曲を聴いて、彼がボーカル吉岡さんの隠れファンだということが発覚しただけである。

(「気まぐれロマンティック」を聴きながら「ここ、ナースになるのかわいいよね」とか「この部分のキャスターも最高」とか脳内でミュージックビデオを完璧に再生するので、内心ちょっと気持ち悪かった。いきものがかりはわたしも好きです)

めちゃくちゃくだらない情報だ。ただ一応、彼に「道を間違えたおかげで、あなたがいきものがかりの隠れファンだって知れた」と言ってみた。「その情報いる?」と言われた。だよね。

まぁ今回は、貴重なドライブを30分延長できたと思おう。レンタカー屋の人には、ご迷惑をおかけしたが。でも道を間違えてなぜか高速に乗っていますと電話したら、大いに笑ってくれたので安心した。

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BEER党のまいこ
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