見出し画像

人生2度目の透明観覧車に乗ったら声が枯れた

遊園地の絶叫マシンが大の苦手だ。
あの胃の浮く感じが我慢ならない。

そう聞くと、絶叫好きの人はたいてい「あの浮く感じがいいんじゃん!」と言うのだが、それってあなたの感想ですよね?

とまぁ、過去散々、無理やり乗せられて死ぬ思いをした恨みがあるので、そりゃわたしの中のひろゆき氏も出てくるわけである。

言っておくと、ディズニーランドのスプラッシュマウンテンはギリセーフだが、シーのタワーオブテラーは完全にアウトだ。

しかしそんな人間でも、かつて富士急ハイランドに行ったことがある。小学生の頃、よせばいいのに家族旅行で行ったのだ。

見るも恐ろしい数々のマシンに、絶叫大好き組(母、兄、姉)が乗っている間、死んでも絶叫乗りたくない組の父とわたしは、とにかく手持ち無沙汰だった。

あまりに暇すぎて、自転車で空中散歩をする感じの、ほのぼの系アトラクションに2回乗った記憶がある。

もちろん、所要時間50分という巨大なお化け屋敷に行くわけもなく、行き場をなくしたわたしたちは、最終的に観覧車に吸い込まれた。

その観覧車では、たまたま並んでいた順番で、わりと珍しい透明のハート型をしたゴンドラが回ってきた。

カップル専用ではないかと恥ずかしく思いながら、親子二人でそれに乗った。降りる際に下で待っていた兄に目ざとく見つかり、「カップルかよ!」と冷やかされたことを覚えている。

あれからウン十年。わたしは先日、淡路島を恋人と旅行した際に、久しぶりに観覧車に乗った。今回もまた、吸い込まれたのだ。

きっかけは、新神戸でレンタカーを借り、ハイテンションで明石海峡大橋を渡った直後、道に「ハイウェイオアシス」の看板を見つけたことだった。

「オアシス?何それ楽しそう!!」

橋を渡ったテンションそのままに、名前だけに惹かれてハイウェイオアシスに向かうことにする。

着いてみると、その道の駅のような施設にはわりと大きい観覧車があった。テンションがまだ下がらない我々は、そのまま観覧車に吸い込まれた。

すると回ってきたのが、8機に1機しかないという透明のゴンドラ。

前回、富士急で乗ったときにも透明(おまけにハート型)で、今回も透明。生まれてこのかた気付いていなかったが、透明のゴンドラを引き当てる才能があるようだ。誰か使いどころを教えてほしい。

ゴンドラに乗り込み、瀬戸内海と明石海峡大橋を一望する絶景を楽しむ。しかし高いところまで来ると、わたしは気付いてしまった。

あれ、ちょっと待って。
めっちゃ怖くないか???


外には美しい景色が広がっている。だが乗っているゴンドラが透明なせいで、はるか真下のコンクリートが丸見えなのだ。

前回乗ったときには平気だった気がするのに、あまりにも長年、地を這うような生活をしてきたせいだろうか。慣れない高所に恐怖し、体が硬直する。

撮影はもちろん彼。
わたしはそれどころじゃなかった。

わたしの様子に気付いた彼は、「大丈夫?」と優しく声をかけるでもなく、むしろ急に立ち上がるなどしてゴンドラをちょっと揺らし始めた(良い子は絶対に真似しないでください)。好きな子をいじめる小学生かよと思う30代である。

わたしはゴンドラが少しでも揺れるだけで「うわあああぁぁ!」と叫び狂う。しまいには、手に汗を握りすぎて、持っていたスマホをツルッと床に落としてしまった。

人間とは面白い生き物だ。そのときのわたしは、床が透明なあまり、そのままスマホがはるか遠くの地面に落ちていくものだと一瞬、錯覚した。

「ぎゃあああああ!!」


スマホを落としただけなのに(どこかで聞いたフレーズだ)、この世のものとは思えない声で叫ぶわたし。これにはさすがの彼も「うるさっ(笑)」とちょっと引いて、揺らすのをやめてくれた。

ようやく観覧車から降りられたときには、まるでジェットコースターを乗り切ったあとのように精も根も尽き果ててヘトヘトだった。普通のゴンドラならまだしも、透明のゴンドラはいかん。今後あれは、わたしにとって絶叫系に分類される乗り物である。

悲しいことに、透明のゴンドラを引き当てる才能に恵まれてしまったわたしは、もう観覧車に乗るのはやめようと内心で誓ったのだった。

いいなと思ったら応援しよう!

BEER党のまいこ
ベトナム語の勉強資金、もしくは至高のビールに出会う旅に、有効活用させていただきます。