R‐1決勝を審査員コメントから分析するファイナルステージへの道
芸人に夢がない大会と言われ、大会の大きさを強調してリブランディングの演出が垣間見えたR-1グランプリ。
今回は2023年3月4日に開催された大会を振り返ります。
Yes!アキト
トップバッターは怪奇!YesどんぐりRPGでもおなじみのギャガーYes!アキト
今回の挑戦は10年目となる最終チャンス。
去年の敗者復活の結果から構成を変えてきたと出場前のVTR紹介がありました。
ネタのテーマは「プロポーズ」
至極の面白ギャグを連発するのではなく、ストーリーの中にギャグを組み込むという構成で、審査員受けのよい技量を発揮していました。
客席の笑いどころは、掴みからのギャグ4連発、2連発、3連発、最後に畳かけ3連発という流れでした。
審査員コメント「ギャグにストーリーを乗っけるとコントになる」
陣内と野田クリスタルも誉めていたこの構成。
ギャグにストーリーやパッケージを乗っけるだけでコントに仕上がるという解説をしていました。
ザコシ曰く「コントにはテンションを乗っけていくこと」が加点対象となるということで、ややテンションの高ぶりが足りなかったようでした。
個人的には「グルコサミンが悪い方向に働いている」というギャグが好きだったので、見てほしいです。
寺田寛明
決勝3年目のR-1常連者。フリップからパソコンにスタイル変更は時代の流れかR-1のジンクスのようなものなのか。
ネタは国語辞典レビューサイト
掴み1ネタから、6個のテーマに対してボケとツッコミで多くの笑いどころを作っていました。
少し噛んでいたのが気になりましたが、審査員のバカリズムも「緊張がみえた」とその印象を答えてました。
「知的とトレンドのネタ」
と小藪さんがコメント、陣内は「共感した」と、笑いのパラメータがあるならばバランスの良いネタに思えます。
視聴者としては一つ目の「よみがえる」という言葉に対してのツッコミどころがツボで、一気に心を持っていかれました。
ラパルフェ都留
真骨頂のネタ、ドラゴン桜の巨大阿部寛で勝負をしていたラパルフェ都留さん。
登場で笑いをとっていたのは、誰よりも早い掴みでした。
物語に引き込んでいくような展開でほぼぴったりの3分が長く感じたのが個人的な印象。
審査員のコメントは良い印象
ザコシ「面白かった、子供の発想をコントに仕上げた」
小藪「モノマネのコントの仕上がりが良かった」
と二人の審査はよくみえました。
一方で、野田クリスタルは「デカすぎるというボケが欲しかった」と設定を活かしたボケづくりが必要と、審査員っぽい評価がされていました。
審査員なりのフォローだったのか、コメントに対して点数はこの時点の最下位でした。
サツマカワRPG
表情にこだわったギャグという紹介があったサツマカワさん。
和田アキ子風のギャグから主人公が変わるオムニバススタイルのギャグを披露していました。
こちらもただのギャグの連発なることを防ぐストーリー展開で3分40秒とやや長めのパフォーマンスでした。
個人の感想としては、一人二役でたまに意図がわからないところがあったのだが、ギャグの切り取りかたのセンスが好きでした。なんだかんだ顔芸でした(笑)
静と動を感じるクールなネタ
審査員コメントをまとめるとそのような印象です。
バカリ「ショートネタの連発でも淡々とやることでパッケージになる」
野田「スタイルを変えないことがカッコよかったので加点」
小藪「荒々しく見せといてギャップのあるネタで好きになった」
カベポスター永見
予選を落ち続けてきたという氷見さん。
「世界で一人は言っているかもしれない一言」というネタで
18連の一言を披露しました。
3分ちょうどのネタ展開でした。
つぶやきネタは想像させることが大事
以下、審査員コメントです。
ザコシ「あるあるネタで共感できた」
バカリ「フレーズの破壊力が強弱があって減点になった」
小藪「構成が弱いが想像できるフレーズで面白かった」
一言ネタは全てつよつよワードを集めなければならないことがわかりました。シンプルな構成だけに、相当な笑いのセンスや世界観、ブラッシュアップが必要そうです。演者自身にキャラがないのか、あるのかによっても変わりそうですね。
こたけ正義感
自身のキャラクターを活かした法律フリップ芸。
一つ目の笑いまで30秒と長く、6個の法律に対して小ボケも含むネタ構成でした。ネタ時間は3分8秒と時間はまあまあ守っているというタイムでした。
キャラクターとのギャップで笑いが生まれる
陣内「弁護士なのにツッコミの崩れる感じが良かった、本当のことで面白かった」とコメント。
個人的にも、こたけ正義感の感情が高まってくるのが面白かったとかんじたがザコシさんは「心の叫び感じた、もっと感情が乗っかると高得点」とまだまだヒートアップが足りなかったようです。さすがザコシさん。
ネタ構成としては、前半にボケたネタに対して、後半にそのネタを回収してくるような展開が気になりました。
この展開は、サツマカワ、永見、こたけの3者も似た仕組みが見られたので、お笑いの流行りなのか、伏線を回収したがる風潮なのか、ストーリー性を意識するとこのような作りになるのか、と考えました。
田津原理音
ダークホースと紹介されていた田津原理音。R-1前の知名度はほぼなかったということでしょう。
フリップ芸からの見せ方の変革ということで、一眼カメラを設置してモニターに映すスタイルでネタを披露していました。
ネタのテーマは「バトルカードの開封」
新しいコンセプトということで説明に時間をかけたのか、パッケージと同じカードが出てきて笑いが起こるまで45秒かかっていました。その後、ボケ5連発、8連発と畳みかける展開で会場を沸かせていました。
オリジナルのカードネタで客と共感を生む
初見のカードだったにも関わらず、開封のドキドキと、登場人物のあるあるネタを混ぜ込んだような内容で、見事に共感を生み笑いを取っていました。
「趣味にドンピシャ、伝わるか心配だったが面白かった」と野田さんがコメントしたように緊張感の爆発が大きな笑いにつながったようでした。
バカリ「カードの羅列にならないような構成、ステージよりも映像向きなので減点した」ということで89点と、バカリズムの中では、高くない点数となっていました。
コットンきょん
警察のカツ丼科というネタ。
掴みの笑いから飲酒運転、結婚詐欺、麻薬と3種類のネタ展開をしていました。
人柄のあるあるとトンカツギャグを織り込んだネタ構成。
審査員に設定が受けていた
陣内「設定良かった、キャラクターもよく受けていた」
バカリ「警察コントが多い中でいい架空の設定ができていた、効果的な音楽の使い方」とそれぞれのコメント。
ありがちなテーマの中でも始めてみるネタには、芸人たちが頭を悩ませても出てこない難しさというものを審査員は知っているので、高評価につながっているのかもしれない。
一方でギャグで優勝するのが難しい理由を考えると、
ギャグには世界観や先入観が生まれにくいので、背景を想像しにくく深い笑いにつながらないからなのかもしれません。
今回の決勝出場者は10年近い芸人が多く見られました。しかも決勝経験ないという方々だが、他の賞レースのファイナリストである、という何とも面白い出場者たちでした。コンビやトリオでの漫才やコントではトップクラスの人たちが、あえて一人でコンテストに臨んでいるというお笑いに対する熱い思いが伝わってくるようです。
ファイナルステージの結果はすでに皆さんがご存じの通り、田津原理音さんとなりました。
田津原さんはファイナルのネタでは
決勝で見せたネタと同じパターンの設定でネタを披露しました。
決勝で見たという前フリが利いているので、見やすいネタでした。
大喜利とあるあるを混ぜたような展開で会場を沸かせていました。
出だしと終わりに少し噛んだようなミスがありましたが、そんなことはものともせずに?いや、僅差で優勝となっていました。
対するコットンきょんは
「ビデオ通話で復縁」という設定で演技派の物語で展開していました。
田津原さんと比較して、笑いどころが少なめの、物語に引き込むような作りになっていたと感じます。
結果発表がたまたま田津原、田津原、きょん、きょん、と2連続で票が別れ、陣内の最後の発表で優勝者が決まるという面白い展開となっていました。
最後まで面白かったR-1グランプリ2023でした。
お笑い芸人にはウケの悪いお笑い分析、いかがだったでしょうか。
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