【ショートショート】職人気質【粒状の総料理長】
職人気質
仕上げに粒状の総料理長――ハーブを細かくしたものに塩を混ぜた調味料――をパラパラ。ちょっと振りかけるだけで思った以上に味が決まる。
「どんな料理下手もこれで安心!」
そんなフレーズも手伝ってバカ売れ。良子も購入を決めた。早速自分の料理にパラパラ。初めて作ったシチューを彼氏に食べてもらうつもりである。
しかし。
「こんなの人に出せるか!」
粒状の総料理長は塩とハーブのみでできているわけではない。ナノサイズの微生物たちは良子の作ったシチューをボロカスに否定する。持ち寄った調味料でわずかな味の調整をするのが総料理長の役目と言えど、元の料理がゴミでは直しようがない。
「最終手段だ」
緊張の面持ちで、料理長はそう告げた。
鍋の蓋を開けた良子は悲鳴を上げた。彼氏も目を点にしている。空っぽの鍋の底には、苦しそうな総料理長たちの姿。彼らの腹は、みんな大きく膨らんでいた。とはいえ、良子と彼氏がその姿を見つけることはなかったが。
毎週ショートショートnote
お題「粒状の総料理長」
文字数408字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)