【ショートショート】リスク【お返し断捨離】
リスク
ホワイトデーのお返しは断捨離だという。そう聞いた女は男をはたこうとした。男は「わー」と情けない悲鳴を上げて、慌てた様子で弁解を始めた。
「今の流行りなんだよ。ものをあげるばっかりじゃ相手を疲弊させる。だから断捨離をお返しするんだ」
男は女の手に小さな黒い箱を置いた。贈り物にしてはあまりにも無機質なデザインだ。
「これを開けると、君にとって最もいらないものが吸い込まれて消えるんだ。捨てるのが大変なゴミでもあっという間に吸い込んじゃう」
「つまりゴミを捨てるための時間や労力を消費せずに済むってことね」
「そういうこと」
納得した様子の女が箱を開く。男はうんちくをつづけた。
「その箱も役目を果たすと消えるようになっているんだ。断捨離というとゴミ袋を準備したりなんだりで結構忙しぃぃぃ……」
くるくると渦巻きを描いた男の体が、箱の中に吸い込まれていく。女はそれを黙って見ていた。どこか冷静に「なるほど」と思う余裕さえあった。
毎週ショートショートnote
お題「お返し断捨離」
文字数408字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)