【ショートショート】異物混入【モカ入り卒業式】
異物混入
「おとうさん」
「おかあさん」
「ぼくたちー」
「わたしたちはー」
「立派なエスプレッソになってー」
感動的な卒業式だ。クラスに一人だけのカフェモカはつくづくそう思う。この後は注文が入り次第みんな旅立っていく。
「3年2組の絆として、みんな少しだけ牛乳を入れたんだよ」
「ちょっとだからまだまだエスプレッソなの」
クラスメイトはそう言った。実際、中身はほとんど透明で牛乳が入っているようには見えない。カフェモカでもあるエスプレッソは、カフェモカに笑顔を見せた。カフェモカは泣いた。
「泣かないでよ、私まで泣きそうになる!」
わいわい盛り上がっていると、早速注文が入った。友人のエスプレッソが旅立っていく。
ああやってみんな立派な飲み物として、エスプレッソの役割を果たしていくんだ……。
店の向こうが賑やかだ。素敵な世界が自分たちを待っている。……と思った矢先、何かがあったらしい。切羽詰まった声がする。
「主人は牛乳アレルギーで……」
毎週ショートショートnote
お題「モカ入り卒業式」
文字数410字
ひとこと:そろそろタイトルダブりそうで怖い
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)