【ショートショート】おあとも経過もよろしいようで【小判食え】
おあとも経過もよろしいようで
活舌の悪い医者がいた。ある日、患者の診療を終えた彼は「小判くれ」と言った。
患者は素直に、医者の目の前で一気に小判を食った。「小判食え」に聞こえたのだ。医者もまさか患者が小判を食うとは思わなかったので、止めそこなってしまったのだ。とはいえ幸い、医者の迅速な処置により大事には至らなかった。
「小判くれといったんだ」
呆れる医者に、患者はゲラゲラ笑った。
「だよな、普通小判なんか食わないもんな! いっぱい食えばいいのかと思って、包みの上の方をまとめて食っちまった」
「まぁそれだけ笑えてるなら、問題ないでしょう」
「それで、俺はこれから何に気を付ければいいですかね」
患者の問いに、医者はうなった。
「まぁ、どっちも原因は同じですからね」
「ええ? そうなんですか? 小判食った腹痛も体の動きが鈍いのも同じってことですか」
「そうですよ」
医者は笑いながら、こう続けた。
「どちらもジュウリョウ(重量/十両)が原因です、ってね」
毎週ショートショートnote
お題「小判食え」
文字数407字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)