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【ショートショート】0.5の共感【デジタルバレンタイン】
0.5の共感
バレンタインの催事場で、一人のアンドロイドが口を開く。
「暇ですね」
隣にいた女は「そうですね」と答えた。続けて、
「世間はみんな、デジタルバレンタインですからね」
と、言った。
「すみません」
「あなたのせいではないですよ」
「いえ、我々がバレンタインを殺したようなものです」
女は何も言えなくなった。隣のアンドロイドは本来のバレンタインを好いているのだろう。そうでなければわざわざこの暇な催事に参加しない。
人の往来がない。目を輝かせる女子高生も、義理チョコを買いに来た女もいない。
女は商品在庫から適当な箱を手に取り、アンドロイドに渡した。
「どうぞ」
アンドロイドは目をピカピカさせた。驚いているという意味だ。
「私からのバレンタインです」
「それは商品在庫ですよ」
「あとで支払う」
アンドロイドはしばし迷って、箱を受け取った。
「ありがとうございます。ホワイトデーにご期待ください」
女は「うん」と言った。人の往来はなかった。
毎週ショートショートnote
お題「デジタルバレンタイン」で「SFチック」なショートショート
文字数410字
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