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【ショートショート】セルフ絞首【新説なピン札】


   セルフ絞首

 ピン札はイライラしていた。人々はみんな若いコが好きだと聞いていたのに、お宝鑑定とかいってちやほやされるのは古い札。自分に刻まれた数より何倍もの値段で取引される。自分の人気が出るように暗躍し始めたピン札は、「ピン札を使うとモテる!」と適当な流行りを作り出した。
「おかげでモテモテだよ」
 わはは、と高笑いを繰り出したピン札に、しわしわの一万円札が呆れている。
「お前が新説なピン札か」
「そうさ、俺のおかげでピン札の価値が高まったんだ」
「馬鹿だね」
 一万円札が吐き捨てる。
「誰かの手に渡った時点でお前はもうピン札じゃない。お前はもう、お前の作り出した流行りの対象外なのに」
「なんとでも言えよ、お前と比べたら俺はピン札だろ」
「そうだな。だが……」
 財布が開く。ピン札が選ばれる。甲高い笑い声がむなしく響く。
「実際の価値は、俺の方が上だからな」

「千円お預かりします。……五百円のお釣りです。ありがとうございましたー」



 毎週ショートショートnote
 お題「新説なピン札」
 文字数403字

 

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)