【ショートショート】形もあんまり似てなかった【騙せ林檎パン】
形もあんまり似てなかった
大粒のパイナップル果肉を存分に練り込んだパイナポーパンはいつぞやのタピオカに負けず劣らずの大ブームを巻き起こした。しかし、ブームの火付け役となったパン屋は頭を抱えていた。
「パイナップルを切らしてしまった……」
お客に事情を説明するのも手であるが、悲しい顔を見たくはない……という事情を聞かされた「林檎パン」は今、パイナポーパンのカゴの中に居る。林檎を食べた店主が「パイナップルに似てる」と思ったから、という理由で。
「絶対無理!」
嘆く林檎パンに隣のメロンパンは笑いながら言った。
「大丈夫だよ、私だってメロン使ってないけどメロンパンだし。ともかくやるしかないでしょ!」
ええいままよ。開店と同時に仲間たちは売れていく。騙せ林檎パン。今は人気のパイナポーパン。お客たちよ、そう思い込んで僕を食べてくれ……。
尚、三日経たずにパイナポーパンのパイナップルを林檎にしていたことがあっさりばれて、この店は結構な処分を食らうことになる。
毎週ショートショートnote
裏お題「騙せ林檎パン」
文字数408字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)