【ショートショート】第二の月餅生【イケメン月餅】
第二の月餅生
月餅工場でふたつの不良品月餅が話をしていた。片方は焦げ、もう片方は月餅に刻まれた男性の表情が凜々しすぎたのが理由だった。
「これからどうなるのかな」
イケメン月餅が焦げ月餅に話しかける。焦げ月餅は「捨てられるんだよ」と吐き捨てた。
「じゃあしばらくは皆と一緒に過ごせるんだね」
イケメン月餅、性格もイケメン。そして徒に希望を与えるほどバカでもない。彼のほどよい卑屈さは瞬く間に品質不良月餅たちに居心地の良さを与えた。
「どうせ捨てられるならみんな一緒の場所に行きたいな」
工場の人たちの手の中で、皆そう思った。
彼らは「こわれ月餅」という袋の中につめられて、格安価格で売られていく。欠けたとか絵がズレたとか見た目に問題があるだけなら、お徳用パックとして普通に売り出される。
「俺はホントに味に支障はないんかね」
「香ばしくて美味しいかもよ」
「だといいけど」
この後、イケメン月餅がイケメンだとSNSで大バズりをするのは、また別のお話……。
毎週ショートショートnote
裏お題「イケメン月餅」
文字数409字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)